6月15日 原発のことをまったく始めから無視してしまうなんていうことは、防災の原則から著しく逸脱してしまっている/ラジオフォーラム「小出裕章ジャーナル」文字起こし

小出裕章ジャーナル

2013年6月15日に放送された「ラジオフォーラム第23回」番組での「小出裕章ジャーナル」の内容を文字起こし致しました。

【主なお話】
「地震による原発損壊の危険性について。多くの原発が断層の上に建てられている理由、そして地震の前に、巨大かつ複雑な配管設備の固まりである原発がいかに脆いものなのか。」

【パーソナリティー】
石井彰(放送作家)

【ゲスト】
渡辺実(防災・危機管理ジャーナリスト)

【電話出演】
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)

▼ラジオフォーラム
http://www.rafjp.org

▼文字起こしは以下。

◆石井
小出さ〜ん、今日もよろしくお願いしま〜す。

◆小出
こちらこそよろしくお願いします。

◆石井
あの、今日のゲストは、防災危機管理ジャーナリストの渡辺実さんです。

◆小出
はい、だそうですね。

◆石井
よろしくお願いします〜。

◆小出
よろしくお願いします。

◆渡辺
よろしくお願いします。

◆石井
あの、今日は地震をテーマにですね、あのお送りしてるんですけれども、地震によって原発に多大な影響、損害が与えられるっていうことはまあ今回の福島の原発を見ても私たちは十分理解している筈なんですが、活断層の上に原発がいくつもありますよね。

◆小出
え〜、はい、そうですね。

◆石井
どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか。

◆小出
え〜と、日本中活断層が無いところは無いし、元々活断層を避けて原発を建てるということが不可能だからです。

◆石井
活断層を避けて、原発を建てることは不可能。

◆小出
はい。

◆石井
活断層の研究が進んでいなかった、あるいは活断層を無視して原発を建てた。

◆小出
え〜、元々活断層の研究が無い昔から、日本で原子力発電所を建て始めた、1966年には東海1号炉というのを造ってしまいましたし、浜岡だって70年代の始めにはもうあの動き出しているわけで、その頃はまだまだ活断層というものに関しての研究がほとんど無い状態で日本の原子力発電所が出来てきたのです。

◆石井
はぁ〜〜、なるほど。
それからあのもう一つね、小出さん、福島第一原子力発電所の事故について、え〜、東京電力側はあれは津波であると、大きな被害は津波によって起きているんだと、主張をされています。

◆小出
はい。

◆石井
え〜、小出さんはそうではありませんよね。

◆小出
え〜と、津波というものが、え〜、大きな要因になったということ自身は疑いのないことですけれども、津波のほかにも地震そのものによって原子力発電所の構造物が破壊された可能性が強いと私は思っています。

◆石井
あの〜、その場合に特に問題なのは、原子力発電所はまあ、つまり何重もの安全装置があると言われてきましたけれども、地震によって、大きな地震によって地層そのものがずれると、あの、僕も柏崎の原子力発電所のかなり中まで入ったことがあるんですが、山のようなパイプが張り巡らされていて。

◆小出
そうです。

◆石井
これは絶対外れますよね。

◆小出
はい、え〜っとこれまではですね、え〜、地震が起きたときに、建家がどのように震動して、その中にある配管などがどのように震動して壊れるのか壊れないのかという、それだけを審査してきたのですが、例えばその活断層が原子炉建屋の直下にあって、そこで縦にずれてしまう、あるいは横でもいいですけれどもずれてしまうということになると、震動ではなくて、建家自身が変形してしまうわけですね。
そうなったときに、まあ原子力発電所というのは配管のオバケのような機械なのですけれども、配管はたぶんもう持たないと考えるのが当たり前だろうと思います。
え〜、これまではそのようなことを無視してきてしまったということなのです。

◆石井
あの今日、実は前半でですね、南海トラフ地震についてですね、渡辺さんと話を聞いてきたんですけれども、南海トラフ地震の被害想定の区域の中に浜岡と伊方原発がありますよね。

◆小出
はい、そうです。

◆石井
この伊方原発もかなり危険ですか。

◆小出
はい、え〜と伊方原発というのはですね、行って見ていただければお分かりいただけると思うのですが、愛媛県の佐多岬というかなりまあ急峻な岬があるのですが、その急峻な岬の崖っぷちに建っているのですね。
で〜、伊方原発の海側はかなり深い海がストッと落ちていまして、そこに溝のような地層が存在しているということが分かっていて、そこが中央構造線という日本最大の活断層だという風に考えられています。
え〜、ですから南海トラフももちろん重要ですけれども、日本最大の活断層のまさにその横にあるというそういう発電所ですので、昔から私たちは心配してきています。

◆石井
渡辺さんからも…。

◆渡辺
はい。
今日の番組の前半で、南海トラフの例の政府の被害想定のお話をしました。

◆小出
はい、ありがとうございます。

◆渡辺
政府は、これは最悪のシナリオで、32万人死者、220兆、これが最大の最悪の被害だ、しかし、原発の被害が入ってないんだよってお話をしました。
担当者とこの議論を、担当者というのは被害想定をした政府の担当者とこの議論をすると、まだ、福島の被害のメカニズム、どうしてこんな大きな被害が出たのかということが分からないから、被害想定の前提としては入れられない、従って、被害想定が出せないという回答なんですね。

◆小出
そうですか、はい。

◆渡辺
これはとても大きな大事な問題で、にも関わらず、最悪最大という言葉を政府が使って、またマスコミがその数字に飛びついて、もうそれですら完全に、例えば地方自治体をなんかを歩くと、あるいは僕の事務所に相談に来る自治体なんかの職員の方は、もうこんな大きな被害では何にも対策も出来ない、お手上げだということを多くの方がおっしゃるんですね。
しかし、僕はいつも言うんですが、実はそれは最悪ではないよ、ここにプラス原発震災、原発災害というものが加わるんだよっていうことをお話をしてるんですが、なぜ今、例えば途中段階でもその要素を外してしまうと国民の目からもそれが外れてしまうんですよね。
だから、正確な数字ではないけれども、暫定的だという条件付きで、原発被害をこの被害想定の中に入れることは先生は不可能だと思っていらっしゃいますか。

◆小出
もちろん不可能ではありませんけれども、今現在進行中の福島原発の事故で、いったいいくらの被害が出るかということすらまったく分からないままなんですね。
たぶん私は福島の事故を本当にその日本の法令に則って補償する、賠償するというようなことをすれば、何百兆円あったって足りないと思っていますけれども、その推計自身が未だに出来ていない、という段階なわけですから、仮に南海トラフ地震が起きたときに、どれくらいの被害が出るのかということを推計するということは、もうほとんど不可能ではないかと思います。
防災というのは元々最悪の事態、最悪の事態というものを想定しながらいかなければいけない筈で、原発のことをまったく始めから無視してしまうなんていうことは、防災の原則から著しく逸脱してしまっていると思いますし、220兆円だったでしょうか、なんかはじき出した数字もですね、要するに最大でもなければ最悪でもない、ということをまず始めに言っておかなければいけないことだと思います。

◆渡辺
次の南海トラフ、これ確実に来ますから、そこではもう議論にならないような状況を今政府は作り出しているようにしか僕には思えないんですが。

◆小出
はい、私もまったく同感です。

◆石井
とりあえず、日本にはたくさん断層があると、で、断層の上に原発があるんだと、当時は断層の研究というのがほとんど進んでなくて、進んでないうちにどんどんどんどん原発造っちゃえと、いう形で造られてきたと、いうお話があったという理解でよろしいですね。

◆小出
結構です。

◆石井
はい、以上、小出裕章ジャーナルでした。

▼音声

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