シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

6才のボクが、大人になるまで。

2015-01-26 | シネマ ら行

ゴールデングローブ賞ドラマ部門の作品賞を受賞したからでしょうか、劇場がいっぱいでした。実はワタクシもその一人。気になっていた作品ではあったもののゴールデングローブ賞を取らなかったらレンタルで見ていたと思います。

リチャードリンクレイター監督が「ビフォア~」シリーズ3本を1本で撮ったような作品です。邦題はまさにそのまんまで6才の男の子メイソンエラーコルトレーンが18才になるまでの12年間を追っています。と言ってもドキュメンタリー作品ではなくドラマになっています。実際に当時6才だった少年と母親オリヴィア役のパトリシアアークエット、父親メイソンシニア役のイーサンホーク、姉サマンサ役のローレライリンクレイイター(監督の娘さん)他も12年間同じキャストで撮り続けたという実験的作品とも言えるでしょう。

とにかく、こんな作品を作ってみようと考えたリンクレイター監督がすごいと思うし、出資した人も参加した役者たちもすごいと思う。そして、6才というとっても未知数な少年を選ぶ時点でものすごい賭けだっただろうなぁ、と。エラーコルトレーン君は6才の時点で演技が上手だったけど、もし、成長していくにつれ超演技が下手な子に育ってしまっていたら最悪だったし、誰もよく途中で投げ出さずにこの企画を続けられたもんだなぁと感心する。

ドラマになっているとはいえ、物語自体は本当にメイソン君の周りで起こることを描いているだけで、特に大きな事件が起こるとか面白い展開があるとかではない。ただもちろん、一人の少年にとって、引っ越しや1年半ほど不在だった父親との再会や母親の再婚や再婚相手の暴力やそこからの逃亡などは非常に大きな「事件」と呼べる出来事なのかもしれない。

12年の間に成長したのはメイソン君だけではない。お母さんは大学に入り卒業し心理学の先生になった。その間に再婚離婚を2回した。頭の良いお母さんだけど、男を見る目はなかったらしい。でも、このお母さんのエライところは男に執着せずダメな男とはきちんと別れてきたところだ。そういうところは自分がきちんと自立していることと、子どもたちのことを優先で考えているからだろうと思う。12年経って可愛らしかったパトリシアアークエットにも貫録が出てきた(笑)

ちょっとチンピラ風でいい加減な印象だったお父さんも再婚して子供ができスポーツカーからミニバンに乗り換えて典型的な郊外のお父さんといった雰囲気になった。お父さんは子どもたちにも運動を手伝わせるくらいオバマを熱烈に支持していたけど再婚相手の家はどう見ても共和党支持者って感じだったけどね。このお父さんの変遷を人は成長と呼ぶのかもしれないけど、ワタクシはちょっと寂しい気がしたな。

お姉ちゃんも小さい頃は弟とケンカばかりしていたけど、一足先に家から独立して大学生となり立派に成長した。

メイソン君、というかエラーコルトレーン君は見た目が文化系という雰囲気で3人目のお父さんにカメラを買ってもらいそれに没頭しカメラマンになることを目指すようになったけど、これはエラーくんの成長に合わせて脚本が書かれていったのかな。そうじゃないと、彼の雰囲気でアメフトのキャプテンとかいう設定だったらちょっとおかしいもんね。

12年間を描いているんだけど、これはいついつ、メイソン〇〇才のとき。とかいう説明が一切なくて、時折会話にいくつになった?とかは出てくるけど、ふと新しい朝が来てメイソン君が映ると髪型が変わっていて、あ、また一年経ったんだなと分かるようになっているというのもさりげなくて良かった。あとは時の流れを示すための「ハリーポッター」が効果的に使われていた。6才のとき「秘密の部屋」をお母さんに読んでもらっていたけど、数年後「謎のプリンス」の発売日に並びに行っていたり。音楽の流行もうまく使われていました。

最後に大学生になって家を出ていくメイソンにお母さんが感傷的になって愚痴るシーンがあるんだけど、ずっとメイソン君の成長を一緒に見つめてきたような気持ちになってしまっている観客にはあのお母さんの愚痴がよく分かる。とても良いシーンだった。

ワタクシとしてはもう少しお姉ちゃんとの関係にも切り込んで欲しかったなぁという気がしました。対お母さん、対お父さんというのはよく描かれていたけど、対お姉ちゃんというシーンが少なかった気がします。兄弟って子供の時から同じ境遇を共にしてきたいわば同志のようなものですよね。その2人が成長してどんな関係になっていくのかっていう部分をもっと見たかったです。

本当になんてことない日常が描かれた作品なので、退屈だと感じる方もいるかもしれません。この日常の切り取り方がリンクレイター監督らしいなぁと感じる作品でした。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿