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ビブリア古書堂の事件手帖 レビューコンテスト

たくさんのレビューの中から三上 延さんに選んでいただきました。レビューはネタバレを含むものもありますので、ご注意下さい。

レビューの選考を終えて

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズについて、これだけ多くの方から応募をいただけるとは思っていませんでした。作者にとってはどれも嬉しい内容で、審査するのは非常に難しいことでした。個人的な印象でいくつか選ばせていただきましたが、レビューとしての優劣を判断したものではないことをお断りしておきます。応募いただき、誠にありがとうございました。 三上 延

ビブリア古書堂の事件手帖1〜栞子さんと奇妙な客人たち〜[大賞]

ネタバレのレビュー

hichakkoさんのレビュー

鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」。
祖母が遺した「漱石全集」の価値を確かめるため、大輔はその店に訪れる。しかし店主は入院しており、なぜか大輔は病院まで本を持って行くことに。そうして出会ったのは、古本屋のイメージからは想像できないほど美しく綺麗な女性――栞子だった。
しかも栞子は、「漱石全集」に秘められた大輔の祖母の秘密を解き明かし始め……。

話題になるだけあって、大変面白かったです。
古本屋を舞台にしているので、本好きには古書のウンチクはとても興味深いし、起こる事件も確かに古書が関係してはいるんだけど、ちゃんと人間が主軸になっているので、ミステリーとしても面白いです。

特に第二話の「落ち葉拾ひ~」の話がお気に入り。
ほんとに事件が起こった時は何でそうなったのか全然分からなくって、でも謎が明かされたら「なるほどなるほど」と思わせるものだったのと、最後に加害者と被害者が仲良くなったのがすごく読後感が良くてスッキリでした。
個人的に女子高生とおじさんという年の差シュチュエーションも好き(笑)

あと大輔が好きだ!(笑)
淡々と語っているようで、たまにボロっと本音がこぼれ落ちるのが良かったす。根が真面目で誠実なのが分かる語りなんですが、それが時々崩れる瞬間が面白いというか(笑) あとツッコミも的確だし。

大輔と栞子さんの恋愛模様も今後気になる感じです。
なんかもう1巻ですでに好き合ってる気はするけれども(笑)
二人とも奥手そうだからなぁ…。

ビブリア古書堂の事件手帖1〜栞子さんと奇妙な客人たち〜[入賞]

kansasさんのレビュー

「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな内気な女性、しかし、古書の知識は並大低ではない。そんな彼女と1人の本が読めない男の物語。

主人公はビブリア古書堂店主・篠川栞子。彼女は極度の人見知りな美しい女性、しかし、こと本に限るととても生き生きと話し出す変わり者。そして、本に関する知識は凄まじい。一方、もう1人の主人公は五浦大輔。昔は本が大好きだったが、あることがきっかけか分からないが、本が読めなくなった就職活動中の男。この本(古書)に関して全く正反対の主人公2人が古書から生まれる謎に挑む。

古書が毎回ビブリア古書堂に謎を呼び込みます。しかし、この小説における謎は推理小説でいう謎では無いと思います。謎というよりは、古書が持つ所有者の過去や背景にまつわる物語という感じで、その物語に主人公2人(特に栞子)が関わっていきます。

また、何より栞子さんが最高に可愛いという点も魅力ですね。主人公が魅力的という点はやっぱり小説には必要ですし。さらに栞子さんの本への異常な愛着が五浦との溝を生む展開もあり、この展開が本が好きと言う点を決して彼女の美徳にしていない所も良いと思います(「たかが本で」と五浦が発言する場面がありますが、この発言には私としてもそこまでするのかという思いを抱かせました)。

話は戻りますが、この小説の魅力は謎解きには無いと思います。謎解きでは無く古書にまつわる過去を遡るという視点で見ること、それも実在する本だからこそより現実的な視点で見れる(私の場合は「晩年」というより太宰治)、でこの本を楽しめると思います。つまりは謎解きを求めるなら、本格小説を読むべきです。

ひとつひとつの古書によって呼び起こされる物語は誰もが経験したことがあることだったり、人間味を感じさせるものだったり、本が好きということの深さと怖さを感じさせるものだったり、と色々でした。

私としては、想像以上に面白かったですね。実際登場した本を読みたいくらいです。しかし、「晩年」はハードルが高そうだw

ビブリア古書堂の事件手帖1〜栞子さんと奇妙な客人たち〜[入賞]

daidai634さんのレビュー

三上さんはホラーテイストのライトノベル作家さんらしいですが、これはまったく趣が異なる。

古書や古書の所有者、関係者にまつわる謎を解く短編ミステリ。
探偵役はビブリア古書堂の店長の栞子。美人だが極度の人見知り。
かなりの本好き&博識で、本の話の時だけは人見知りも影を潜める。
助手役がこの物語の語り手でもある五浦大輔。
とあるきっかけにより好きなのに本が読めなくなった変わり者。

まずは一言。この物語、好きだなー!

ささいで見逃しがちな情報から推理を立てていき真相を導き出す栞子はホントにすごいのだが、スポットが当てられているのは真相解明だけでもない。古書についての雑学だけでもない。
え、ほかになにがあるの?と思われた方はぜひぜひ読んでみて。
ラノベっぽい表紙に負けずに手に取ってみてください。

最後に。
「古書には(内容の方だけでなく)本そのものにも物語がある」
という栞子の考え方も好きです。
自分はあまり古本屋では買わないし、買った本を売りもしないけど。

続編が10/25に発売予定とのことなので、必ず買うよ(^^)

ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜[大賞]

moon-uさんのレビュー

行ったことはないけれど、きっと素敵な町であろうと思われる鎌倉が舞台。

古本屋さんで女の人が店主っていうのは少ないような気がするなぁ、きっと。

2冊目も面白くて、たまらずニヤける「本の蘊蓄」
どれも、面白かった。

店主の母の話は、
これから、展開がありそうな気がするな。
なんとなくあっさりと書かれているけれど、
多分、きっと、
そんなあっさりとしたもんじゃないだろうと思うのだ。
子どもをおいて出ていくなんて
たった1冊の本を置いただけで、出ていくなんて
それにどんな思いがこめられようとも、
そんな、あっさりしたものじゃないはず、と思いたい。
期待を裏切らない面白さ。

ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜[入賞]

goldenmoonさんのレビュー

1に続き2も終了。
1に比べ、格段に面白くなった。
一つ一つのミステリの質も上がり、栞子と大輔(2を読み終わるとこっちもこう呼んでしまう・・)の関係も濃くなっていく。また、扱う本に関する情報も2の方が充実していて、1で少し物足りなく感じた部分が解消されていたことがすごく楽しめた。
司馬遼太郎にそんな過去があったとは。。
「他人の秘事を、なぜあれほどの執拗さであばきたてねばならないのか、その情熱の根源がわからない」
それを言っちゃおしまいだ(笑)

また「くらくら日記」や「UTOPIA」「名言随筆サラリーマン」の内容が、実際のストーリーと上手く絡み合っていく様子がとても心地よい。
とにかく面白かった。
今月発売される3に期待大!!

ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜[入賞]

MADさんのレビュー

面白い!電車で読んでたのだが、久しぶりに「先が気になって仕方がなく、駅で降りてそのままベンチで読み切る」なんてことをした。

優しく、暖かく、繊細に紡がれた話。

「愛おしい」という言葉がぴったりな佳作である。

それにしても。

看板くるくる回してる栞子さん俺も見てえー!!

ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜[大賞]

マリモさんのレビュー

安定の面白さだ!
今回は、柱となる話が3本だけなのだけど、どれも「読んでみたい!!」と思えるような本ばかりでした。
主人公はいつもの大輔くんだけど、栞子さんのインパクトがいつも以上に強かったように思う。本に関わることになると、栞子さんは時に残酷な名探偵にもなる。

「たんぽぽ娘」
この本はとっても気になった。
『おとといは兎を見たわ。きのうは鹿、今日はあなた』
新しい登場人物、ヒトリ書房のおじいさんは一癖もふた癖もありそうな人物。
これからも絡んできそうだな。

「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」
両親、特に母親との確執を抱えたしのぶさんに、昔読んだ絵本探しを依頼される。
意外な事実に私もびっくり!えー、もとはタヌキみたいだったんだ(笑)
素直になれない母と娘の葛藤。話の本筋の方にはじーんとしました。

「春と修羅」
宮澤賢治は小学校の教科書には必ず名前があるような作家(詩人)さんなのに、生前に出せた本が「春と修羅」,「注文の多い料理店」だけだなんてね。
それも自費出版に近い形で、ほとんど売れずに一部は自分で引き受け、その本に自分で推敲を重ねた…。
とても興味をひかれる話だった。
栞子さんは容赦なかったけど、私は亡くなったおじいさんもひどいなという気持ちになった。

古今東西、隠れた名作も、作品や作家の知られざる逸話も、本当にたくさんあるんだな。
絶版になっても改訂されても、古書は思い出や秘密を閉じ込めて人から人へと渡り続ける。古書がつなぐ人の絆。

ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜[入賞]

ネタバレのレビュー

akinarimiyakeさんのレビュー

ビブリア古書堂の事件簿も気が付けば3作目ですね。

栞子さんのお母さんの話が中心に進みます。
相変わらずミステリーとしての派手さはないですが、栞子さんの推理の視点は面白いなと思いました。五浦さんと前作では少し進展があっただけに今回も気になりましたがあまり進展のなく、どこまで今の関係を引っ張るのかも気になるところです。

宮沢賢治の「春と修羅」の「金を持っている人は金があてにならない」「あてにするものはみなあてにならない」と言う詩が妙に頷けました。
たまには純文学に触れてみたいなと思わずにはいられません。

作品の中で一番好きなのは「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」のお話が心温まりました。たまには実家に帰ろうかなと

4作目も購入するんだろうなと

ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さんと二つの顔〜[大賞]

ネタバレのレビュー

kansasさんのレビュー

「ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔」
珍しい古書に関係する特別な相談。謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その古い家には驚くべきものが待っていた。

ビブリアシリーズ第4弾。ビブリア古書堂に持ち込まれた相談は「推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクションを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしい」というもの。これには、栞子並びに私も喜んで引き受けるでしょう。

私にとって江戸川乱歩は、とても思い入れの深い人物です。小学校の図書館で繰り返し読んだ物語は、幻想的であり、冒険心を擽るものであり、恐ろしくもありで、小説の面白さは、乱歩によって教えられたようなものです。そんな江戸川乱歩が主役である本作を「楽しめないはずが無い」と同時に「面白くないと困る」という思っていました。つまりは、高いハードルを第4弾に押し付けていた訳ですw

そんな私の勝手なハードルは、簡単に越えてしまった模様です。そう、面白かったのです。いや、良かったと言うべきですね。個人的に、ビブリアシリーズの中で一番良かったです。その要因は、2つあります。ひとつは「謎」、もうひとつは「心」です。

古書から栞子さんが解く「謎」の難しさや意外性は、全3作の方が上かも知れません。少なくとも、私はそう感じました。しかし、謎が展開していく過程は、本作が一番良かったと思います。江戸川乱歩の個性が存分に組み込まれた謎は魅力的で、それによって展開する過程は、物語の見事な締め(依頼人の人生に繋がる流れ)に繋がり、それはとても心地良いです。本作は、まさに江戸川乱歩作品の見立てのようw

「心」はずばり「子供心」。本作に登場する鹿山明氏は、子供心を持ち続けた人物で、少年のような発想で、怪人のように仕掛けた姿には好感を抱かずにはいられませんでした。彼に触発されたのか、少年探偵団シリーズを読んだとき味わったあの感動が蘇ってきて、また、読みたくなりました。そして何より「子供心って大切だな」と思いました。これだけじんとくるのは、ビブリアシリーズでは初めてです。

また、この2つ以外に触れねばならないのは、登場人物の相関図の変化です。そう、あの子とあの人とあいつ。

これは、読んで頂くのが一番ですが、ちょこっとだけ触れるならば、「本とは魔物みたいなものなのか」と「いつでもそれが側にあるわけではない。だからこそ動いた気持ちは分かるぞ」ですね。正直言うと、後者は意外でした。まだ変化無いだろうと思っていたのでw

無性に、江戸川乱歩作品を読みたくなる。今回ばかりは、栞子さんは私にとって脇役だw

あ、これは言っておかねば。なんか急に出てきて栞子さんにちょっかいを出す男。あの描写では、とてもぎりぎり2枚目には思えないw

ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さんと二つの顔〜[入賞]

asitabanotempraさんのレビュー

ビブリア古書堂シリーズの4作目

今回はいつにもまして、謎解きの盛り上がりや緊迫感があり、ストーリーの先へ先へとページをめくりながら読んでいきました。

今回はシリーズ初の1冊を通して1つの謎を解いています。ビブリア古書堂の旧客の江戸川乱歩フリークからの依頼に取り組んでいきます。
本書で取り上げられるのは、章題にある『孤島の鬼』『少年探偵団』『押絵と旅する男』、他にも『二銭銅貨』や『D坂の殺人事件』などが取り上げられます。また、日本推理小説の草分けとしての江戸川乱歩の他に怪奇小説作家としての江戸川乱歩などのエピソードも盛り込まれており、日本ミステリの黎明の様子や昭和の子どもたちを惹きつけた少年探偵団や怪人20面相の魅力がたっぷり紹介されています。江戸川乱歩の不思議な世界と一緒に謎が展開されることによって、解決に迫ることに対するドキドキ感がいつにも増して高まってくるように感じられます。

副題「栞子さんと二つの顔」の通り、4巻では人間の二面性に関することが重要なポイントになっています。特に今まで登場してきた様々な人達の今まで描かれなかった側面を色々と見ることができます。栞子さんの妹の文香や志田さん、ヒトリ書房の井上さんといった人物のこれまで明らかになっていなかった過去や人間性を垣間見ることができます。これまで固まっていたそれぞれの登場人物の立ち位置から少し異なる面が描かれることでビブリア古書堂の世界は私の中でとても深いものになったように思います。

さらに本作では今まで謎のベールに包まれていた栞子さんのお母さん、智恵子さんが登場します。これまで母親に対する憎しみを事あるごとにあらわにしていた栞子さんですが、実際に母親と出会い古本に関する尊敬すべき知識と能力を目の当たりにしたことで、古本の師になりうる自らの好奇心を刺激してくれる存在という認識をもち、これまでのエピソード通り超人的な洞察力を持ちどこか底知れぬ部分がある彼女は、どうやら今後栞子さんをめぐって大輔さんと対決していくことになりそうな予感です。4巻最後で物語が大きく動きましたので、次巻はどのように始まるのかものすごく楽しみに待っています。

ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さんと二つの顔〜[入賞]

kwosaさんのレビュー

探偵小説が好きだ。でも猟奇的なものは苦手だ。
だけど横溝正史は好きだ。なのに江戸川乱歩は苦手だ。

いや、苦手というのも少し違う。
おもわず目を覆いたくなるような描写があるにもかかわらず、覆った指の隙間から、そおっと覗き見てしまうような抗い難い魅力。

横溝正史は好きだと言えるのに、江戸川乱歩が好きというのは何となく憚られる背徳感。
自分の中の微妙な線引き。

将来なりたい職業は探偵だった。
それが無理ならスパイか泥棒だった。
幼い頃の話だ。全く子供である。
将来の夢は『仮面ライダー』もしくは『プリキュア』
それと同じだ。

ミステリマニアの方々のように、ドイルと乱歩の洗礼を受けた子供ではなかったが、学習雑誌に載っている推理クイズが大好きで、ダイイングメッセージや消える凶器にわくわくしていた。
チェックの鳥打ち帽をかぶりパイプをくわえ、大きな虫眼鏡を片目にぎゅっと押し付け足跡をたどるイラストが、僕の探偵のイメージだった。
浮気調査のために旦那のパンツにスポイトで試薬を垂らすのが仕事だとわかっていたら憧れたりはしなかっただろう。

『ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さんと二つの顔〜』

今回、目次のタイトルになっている本はすべて江戸川乱歩。

『孤島の鬼』
『少年探偵団』
『押絵と旅する男』

新刊なので内容に関しては詳しく触れないが、多面性を持つ乱歩の作風の如く、稚気に富んだわくわくするような感覚とぞっとするような手触り、そしてあっと驚く展開が味わえるだろう。

まさに新章開幕といった感じである。

毎回思うことだが、取り扱われる古書のテーマがうまく物語にフィードバックされている。
普通に読んでも面白いが、今回は比較的入手しやすい本ばかりなので予習をしておくともっと楽しめるだろう。
さらっと流してしまいそうなメタファーにも気づいてほくそ笑むかも知れない。

震災の影響が色濃く反映されているのが印象的だった。
物語の中の時間も確実に進んでいる。そして人も成長している。

「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」

もう4巻を読んでしまった。5巻が待ち遠しい。
なんて物語に耽溺している僕だけが、学習雑誌のあの頃から成長が止まっている。

ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜[大賞]

moon-uさんのレビュー

文句なしだ、面白い。
どの巻も面白くて、どの話も面白い。
たまりません。

そう見える人がそういう人かどうかはわからない
人の見えている部分なんて
その人のほんの一部分なんだ、ということが
今更ながら、見えてくる。

ドロドロとサラサラと、蠢く内面に
決して投影されない外見。
そいういうものがあることも
今更ながら気付くのだ。

原色もパステルも、黒にさえ混ざらない
自分がそこにある。

それは誰とも同じでない。
たとえ親子でも。文句なしだ、面白い。
どの巻も面白くて、どの話も面白い。
たまりません。

そう見える人がそういう人かどうかはわからない
人の見えている部分なんて
その人のほんの一部分なんだ、ということが
今更ながら、見えてくる。

ドロドロとサラサラと、蠢く内面に
決して投影されない外見。
そいういうものがあることも
今更ながら気付くのだ。

原色もパステルも、黒にさえ混ざらない
自分がそこにある。

それは誰とも同じでない。
たとえ親子でも。

ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜[入賞]

greenflashさんのレビュー

私にとって、この作品はいったい何なのだろう。

シリーズ4作目からかなり時間が経過して、久しぶりに大輔や栞子に会ったはずなのに、彼らの古書店も住む街の空気も知り合いたちも、全てが自分の内側に確かな記憶…いや、経験としてこびりついていたかのように、扉を開いたとたん、胸の奥からざっと流れ出て、次の一瞬には、私はその中に立っている。まるで最初から、北鎌倉に生まれ育ったかのような穏やかで満ち足りた心持ちに微笑みながら。

ミステリーとしてのこの作品の素晴らしさは、栞子さんが謎を解くのに用いた情報のすべてが、ちゃんと私たち読者にも等質等価等量で提供されてゆくところではないか。つまり、私たちにも栞子さんと同じく、謎を解くチャンスが与えられている。

作中人物と傍観者という立ち位置の違いではなく、栞子さんは栞子さんだけの明晰な頭脳と記憶力、愛する本の膨大な知識…本をこよなく愛し、すべてを体の中に取り込んでしまいたいという貪欲さで、謎を解いてゆく。ミステリーとして、これほど公平なものはない。同時に、栞子さんへの崇敬は日増しに高まっていく。

折り返し点を過ぎ終焉に向かっているこの物語はもはや私の一部だし、読み始めたとたん、私がこの物語の一部になる。

私には特別な本。私が現実には生きてはいない多重世界を見ているような感覚。手放せないシリーズである。

栞子の母・智恵子が滝野リョウに譲った、「黒いハンカチ」を読もうと思う。栞子さんも好きな本だから。

いろいろなことが再び動き始めた5作目。栞子さん、気をつけて。

ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜[入賞]

柚子さんのレビュー

ブラックジャックの話が一番好きです。作品の背景や未収録作品の話など、手塚治虫の漫画家人生の一部が垣間見れて、私も栞子さんの話に引き込まれてしまいました。
『植物人間』の結末がすごく気になります。
栞子さんの名言「作り話だからこそ、託せる思いもあるんです。もしこの世界にあるものが現実だけだったら、物語というものが存在しなかったら、わたしたちの人生はあまりにも貧しすぎる……現実を実り多いものにするために、わたしたちは物語を読むんです。」
物語を読むすべての人の胸の内を代弁した、私の大好きな言葉です。

クライマックスが近づいてるこの物語。
栞子さんの決断にはおおっとなりました。
ラストの意味深な終わり方は、もうひと波乱の予感です。

ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~[大賞]

vbbbさんのレビュー

僕は栞子さんが大好きだ。このビブリアではそんな栞子さんの陰と陽の部分が明らかになる。
あと、個人的に大輔ともっといちゃいちゃして欲しかった。
それと、僕は太宰が大嫌いだ。あのネチネチとしていてまどろっこしい文は好きになれない。が、この本はそんな僕にさえも興味を持たせてしまった。ビブリアの良さはこういうとこにあると思う。
そしてこの副題の『巡るさだめ』について。これを見たときに「いつもより重い内容なのかなぁ」と思った。言ってしまえばヘヴィーだ。様々な人々の過去が明らかになる、そしてそれが少し見苦しい時もある。だが予想もしなかった伏線が回収されていく様は本当に鮮やかで美しい。
一巻を読み返そうと思った。
この副題通り大輔と栞子さんは一冊の古書を『巡って』鎌倉のあちらこちらを『巡り』ます。でもこの『巡る』は時間的な意味が大きいと思う。
簡単に言えば“篠川栞子は自分の血に逆らえず同じ過ちを繰り返してしまうのか?、また時は巡ってしまうのか?”ということだ。そうこの『巡る』はまだ終わっていないのだ!次のビブリアではここに重点が置かれる気がする。
最後に、この本は間違えなく人生を変える一冊だ。俺はこの本を読んでからは、古本屋になるのが夢だ。本当に感謝している。だからこそ俺が言いたいのは、こんなレヴューを読んでる暇があったら、鶏の雛でも売って本を読んで欲しいってことだけだ

ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~[入賞]

ネタバレのレビュー

xwjyy406さんのレビュー

本巻は全編太宰治ということで、ファンとして発売前から楽しみにしていた。『走れメロス』の元ネタなど、実際に自分の知らない新たな知識を得られたが、それ以上に本巻では、大輔の成長ぶりに驚かされた。

前巻で付き合うことが決定した後、本巻での恋模様が気になっていたのだが、ある事件によってデートは無く、正直最初は拍子抜けしてしまった。そして、大輔の煩わしい気持ちが痛いほど良く分かった。

だからこそ、大輔が田中敏雄に放った一言にはとてつもないインパクトがあった。いつも二人だけで仕事する中、デートに誘うのに半年以上かかり、周りからもやきもきされてきた過去を振り返ると、大躍進の出来事である。

あとがきによると、次巻か次々巻で完結であるという。次巻発売まで約1年かかるとしても、まだ心の準備が出来ていない。三上先生お願いします。古書のさらなる知識は勿論、二人の恋模様ももっと見守りたいので、ビブリアは7巻ではなく、8巻をもって完結ということに!

ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~[入賞]

ネタバレのレビュー

しろさんのレビュー

シリーズ最新作を発刊日に購入し読了、古本しかも文庫専門の自分がいかにこのシリーズを心待ちにしているか、おわかりいただけるだろう。

前作ラズトで栞子と大輔の恋愛もやっと成就♪と思いきや、不穏を感じさせる人物の再登場が予測されており、ハラハラ感はいつも以上であった。

そして第1作に戻っての太宰治、4作の乱歩と同じまるごと一冊太宰治なのである!太宰治については大輔並の知識しかなかった自分が大いに興味を持たせてくれたところはいつもながらの「ビブリアの魔力」である、そして古書についての真実をベースに敷きつつも、様々な角度からの洞察、味付け、等々三上氏のリーダビリティは最早冴えるところか、円熟の境地へとたどり着いてのでは?個人的にはそう思えた。

「意外な犯人」という点でも今までにない展開であり、タイトルに暗喩される「さだめ」が今までとは違った形で見えてくる「次への伏線」も巧妙にして読者を挽きつける。

あとがきではこのシリーズもあと1~2冊で終わるようである、うん!それくらいがちょうどよいだろう、人気シリーズの引き際、完結も大事なのだ。

おめでとうございます!

大賞に選ばれた方には、ブクログの登録メールアドレス宛にご連絡させていただきます。

著者・三上 延への質問箱

ブクログのみなさんからいただいた質問を著者・三上 延さんにお答えいただきました。質問を投稿してくださったみなさん、ありがとうございました!
※応募多数につき、お答えする質問を抽選で選定させていただいております。ご了承ください。

ビブリア古書堂シリーズについての質問

  • ビブリアの物語全体の構想は、いつごろ(何巻を手がけていらっしゃるころに)出来上がったのでしょうか? あるいは、三上さんの中では、まだ結末は確定していないのでしょうか?

    jtharaさん(男性 / 44歳)からの質問

    2巻を執筆する前にシリーズものとしての骨子を決めました。後は書きながら少しずつ軌道修正していっています。結末はだいたい決まっていますが、そこに行くまでに何が起こるのかはまだはっきりしていません。複数の案から最もよいものを選ぼうとしている段階です。

  • 「ビブリア」は予備の原稿だと聞きました。本命の原稿はどのようなストーリーなのでしょうか?

    book-meganeさん(女性 / 16歳)からの質問

    ビブリアの初期アイディアを編集さんに見せた時の話でしょうか。『ビブリア古書堂の事件手帖(以下、ビブリア)』の他にも別の企画案を渡していて、僕としてはそちらの方が本命だと思っていたということで、『ビブリア』以外に本命の原稿が存在しているわけではありません。ちなみにそちらは現代を舞台にしたファンタジーめいた長編になる予定でした。今、振り返ってみると大して面白くないので、たぶん書かないと思います。

  • 古書店で題材にされている古書はすでに読んだことのある本から選んでいるのですか。それとも創作のために読まれているのですか?またその選ぶ基準は?

    flugelsさん(男性 / 41歳)からの質問

    題材にしている作品は基本的に既読のものです。選ぶ時の第一の基準は「その本を読んでいなくても楽しめる」、第二の基準が「既に読んでいる人も楽しめる」です。マニアの栞子となにも知らない大輔が、二人とも身を乗り出すような古書を選んでいるつもりです。

  • 名作を栞子さんに評論(好み含めて)させていますが、三上先生の評価100%でしょうか?

    kitanotitioyaさん(男性 / 52歳)からの質問

    一応は僕の評価に沿っていますが、小説として不要なことは省いています。個々の作品に僕が下している評価はもう少し複雑です。だいたい80%ぐらいでしょうか。

  • はじめまして! 私も栞子さんみたいに本の知識を話してみたいたいです 何か話せたらかっこいい知識があったら教えてください。

    fumikamiyazakiさん(女性 / 20歳)からの質問

    はじめまして。残念ながらほとんどの場合、本の知識はあまりかっこよくありません。興味がない人にとってはどうでもいい情報だからです。かっこよく見えるには「えっ、そうだったんですか」と合いの手を入れてくれる、大輔みたいな聞き手が不可欠です。
    例えば四巻で取り上げた江戸川乱歩たちの合作小説『空中紳士』(博文館)には初版本が見つかっておらず、何らかの事情で版元が初版を刷っていないという噂があります。個人的にはとても面白い謎ですが、こういったことに興味のない人に話しても「へー……」で終わります。その場にいる人たちの目が泳ぎまくるしらじらしいあの雰囲気、何度味わっても嫌なものです。くれぐれもお気を付け下さい。

  • 栞子さんは本を書かないんですか? 栞子さんの書いた本を読みたい! 作者さんのではなく栞子さんの書いたのを読みたい……(笑)

    ryuichi1さん(男性 / 21歳)からの質問

    たぶん長い文章は書かない、というより書けないと思います。事件について書き残しているのが栞子ではなく大輔なのも、そのへんの事情が絡んでいます。ちなみに『ビブリア』の中では大輔と栞子の設定はだいたい対になっていて、一方ができることはもう一方ができません。補完しあう関係になっています。

作家志望の方からの質問

  • 本を書いているとき登場人物に対して感情が湧きませんか?僕は今本を書いているけど主役が変です。「なんでこんな人にしちゃったんだろう」と思います。それは悪いことですか?

    goodluck88さん(男性 / 17歳)からの質問

    悪いことではありません。自分の書いた登場人物に何らかの感情が湧くのは当たり前でしょう。「変」であることも個性になりえます。ただ、書き手にとって「変」でしかないとしたら、その登場人物は読み手にとっても「変」でしかない可能性が高いです。特にエンターテインメントの主人公であるなら、読み手にとって感情移入できるかどうかが重要だと思います。

  • 私は将来作家になりたいと思っています。 そこで三上さんが執筆する上で特に気を付けていることは何でしょうか? また、執筆が行き詰ってしまった場合にはその局面をどう切り抜けていますか?

    matukaze4645さん(男性 / 18歳)からの質問

    顔を知らない他人を楽しませる、ということを常に念頭に置いています。自分自身や知り合いを楽しませることはさほど難しくありません。その人たちが何を面白がるかは見当がつくからです。でも、顔すら知らない誰かを楽しませようとすると、小説に求められるものはとても高度になります。プロの作家である限り、それは必ず乗り越えなければいけないハードルです。
    行き詰まった時はホワイトボードに問題点を全部書き出して、それらをできる限り同時に解決する手段を探ります。魔法のように鮮やかなアイディア発想術があるわけではなく、昼も夜も泥臭く考え続けて、思いついたことを片っ端から検証していくだけです。よく家族には「今回はダメかもしれない」と弱音を吐いています。でも、努力の方向性さえ間違えなければ、なんらかの打開策は見つかることが多いです。

ビブリア古書堂の事件手帖 シリーズの作品紹介

古い本には、人の秘密が詰まっています。
累計600万部突破のベストセラー!!

 鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない、若くきれいな女性だ。だが、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。
 しかし、古書の知識は並大抵ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも。彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。

待望の最新刊が12月25日発売決定!

ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜

三上 延 / 2014年12月25日発売 / 本体570円+税 / 株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス

 太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。それは因縁深い、またもや太宰治の稀覯本にまつわるものだった。
 50年前の祖父たちと現在、まるで再現されるかのような奇妙な巡り合わせに、薄気味悪さを感じる二人。それは偶然か必然か? 深い謎の先にある真実とは?

ビブリア古書堂の事件手帖 最新刊のサイン本をプレゼント

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