シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

アメリカンドリーマー~理想の代償

2016-05-25 | シネマ あ行

1981年のニューヨーク。石油業界で勢力を伸ばそうとするアベルオスカーアイザックとアナジェシカチャスティンの夫婦。事業に必要な広大な土地を購入し、さぁこれからという時に何者かに輸送トラックを襲われ石油を略奪されるという事件が頻発し始める。同じころローレンス検事デヴィッドオイェロウォから不正の嫌疑をかけられ取り調べを受け始める。

アベルに災難が同時に降りかかるのだが、彼は何事も冷静に平和的に解決しようと努める。彼の信念として自分たちが銃で襲われても運転手に銃は持たせないし、自宅の周辺を銃を持った何者かがうろついていても自宅には銃は置かない。検事の嫌疑もきちんと説明すれば晴れるものと考えている。

アベルはハリウッド映画の主人公には珍しく本当に非暴力を貫こうとしている人だった。だだ経営者として成功を手にしたいだけで無用な争いはしたくないと考えている。ワタクシはアベルの気質は素晴らしいと思いました。ただじゃあ、実際問題どうするの?ってことになるといつ銃で襲われるかも分からないで仕事をしている運転手たちにとってはたまらないってことになる。アベルは問題解決のためにライバル会社の経営者を集めて「汚いことはするな」と宣言するが、そんな言葉だけで聞いてくれるような甘い連中ではなかった。

会計のほうも清廉潔白にやってるのかと思いきや奥さんが裏でこそこそしていたみたいだしなぁ。奥さんはやはりギャングの娘だけあって、そういう裏の事情に通じていそうでした。そのお金で結局助けられることになったっていうのはアベルが徐々にずぶずぶと汚い世界に入っていってしまうことを象徴していたのかな。ローレンス検事も最後には経済界で力もこれから持っていきそうなアベルにすり寄ってきていたしな。

従業員エリスガベルが銃で自殺したシーンでは、遺体を目の前にして冷静にその銃弾で穴が開いてしまったオイルタンクにハンカチを詰めていたアベルが、実は腹の底では冷血なところがあるということを表していた。同じ従業員が襲われてケガをしたときには手厚く面倒みていたのにね。

オスカーアイザックが地味ながらもなかなかに渋い良い演技をしていました。ほんっとーに地味ですけどね。そしてジェシカチャスティンもいつもながら良かったです。ギャングの娘でお金持ちで気の強い奥さん。(車で轢いてしまった鹿を殺すのを躊躇している夫の後ろから平気な顔してバーンて撃っちゃうような人)でも彼女なりに夫を立てようとしている側面も見られました。始めはちょっと雰囲気が違うなぁ、ミスキャスト?と思ったのですが、見ているうちにどんどんハマってきて彼女の実力を見せられた感じでした。

オスカーアイザックの演技が地味と書きましたが、それはこの作品全体が地味なためです。こんなにエンターテイメント性がないのに、スターと呼ばれる人たちが出演してきちんとした作品になってしまうハリウッドでやはりすごいなぁと思います。もちろんメインストリームにはブロックバスターものばかりでイヤになるという意見もあるとは思うのですが。



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