『花のズボラ飯』の女主人公のファンになる男たち

女性漫画雑誌『Eleganceイブ』で連載されている『花のズボラ飯』をご存じだろうか(文末に試し読み2本分あり)。

同誌は、大人の女性を対象とした老舗の女性漫画雑誌である。ところが、男性に人気の連載もある。単身赴任の夫を持つ主婦・駒沢花が主人公の『ズボラ飯』である。

『Eleganceイブ』で連載されている『花のズボラ飯』(原作・久住昌之、漫画・水沢悦子、秋田書店)。1~3巻が発行中。

同作品は、数年前に連載が初めて単行本化され、実写ドラマ化もされた(倉科カナ主演)。そして、昨年末、3年8ヶ月ぶりに待望の第3巻が発売され、またしても大ヒット。「おかげさまで累計70万部以上になっています」(同誌編集長・石井健太朗氏)。興味深いのは、読者の5割近くが男性ということ。なぜ、女性向け作品がウケているのか。

原作は、あの『孤独のグルメ』の久住昌之氏である(作画は漫画家・水沢悦子氏)。

主人公の花は、30歳。部屋で、服は脱ぎっぱなしだわ、雜誌が散らかってるわ、ソファで昼寝するわ、Tシャツに下着だけの姿で部屋をウロウロするわ……。食べた後の食器の洗い物は、明日にしちゃえ! と、ズボラな日常が描かれている。

あまり褒められた生活ぶりではない。でも、取り柄はある。30歳の主婦といっても、まるで中学生のような童顔の花なのだ。体形も、ややぽっちゃり。加えて、食べることが大好きで、残りものや冷蔵庫の中にあるもので、ささっと料理を作るのが得意。そこが最大の長所だ。

『孤独のグルメ』の中年主人公・井之頭五郎は仕事先でふらりと入った店でのひとり飯を「実況中継」したが、花は、もっぱら自宅での女ひとり飯を、自分で作って、食べる。

料理は、めんつゆやお茶漬けのもと、インスタント麺など、どの家にもある市販品を使った文字通り「ズボラ飯」。といっても、そこには様々な工夫やアイデアが盛り込まれており、いわゆる「手抜き料理」とは一線を画すのだ。

例えば、「シャケトー」として数々のメディアで紹介され、有名になったメニューは、自宅に残っていた鮭フレークにマヨネーズを加えて練ったものをパンに塗って、オーブントースターで焼く。これを、花がおいしそうにパクパク食べる。読んでいるだけでお腹が空いてくる。

ほかにも……。
・コンビニおにぎりにわさびをのせて、お茶をかけるだけのお茶漬け
・丼にご飯を盛って、ぐちゃぐちゃに崩した豆腐を乗せ、その上にめんたいこ、刻みねぎとバターをひとかけ乗せてレンジでチン

と、いたって庶民的だが、思わず「いいね」と言いたくなるメニューが次から次へと登場する。