物価目標2%達成までの道遠い、必要なら躊躇なく調整=日銀総裁

物価目標2%達成までの道遠い、必要なら躊躇なく調整=日銀総裁
11月22日、日銀の黒田東彦総裁は、今後見通しに変化が生じて2%達成に必要なら、ちゅうちょなく調整を行うとの方針を示した。写真は9月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 22日 ロイター] -日銀の黒田東彦総裁は22日の衆議院財務金融委員会で、2%の物価安定目標達成への道はまだ遠いと指摘、現時点で追加的政策をとる考えはないが、今後見通しに変化が生じて2%達成に必要なら、ちゅうちょなく調整を行うとの方針を示した。
また、物価の先行き見通しを考えるにあたっては、国内総生産(GDP)だけでなく様々な情報を活用し適時適切に判断していくと述べた。
<上下双方向に潜在リスク>
黒田総裁は現時点の経済状況に関して「実質金利が低下する下で民間需要が刺激され、生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムが働き、経済は緩やかに回復している」と指摘。物価もエネルギーだけでなく、景気回復の下で上昇品目の広がりを伴いながらプラス幅を拡大するなど、「量的・質的緩和を導入した際に考えていた日本経済の経路をたどっている」と明言した。その上で「内需が堅調ななか、外需も緩やかに増加し、2015年度までに物価目標の2%を達成する可能性が高い」と指摘した。
一方、2%の物価安定目標までにはまだ道は遠いとし、「上下双方向のリスクが潜在的にあり得る。特に海外経済は現時点で今後緩やか回復するとみているが、状況を十分注視していきたい」と述べた。
さらに、金融政策について「現時点で追加的な政策をとることは考えていない」としながらも、「今後何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じて、2%の物価安定目標を実現するために必要であれば、ちゅうちょすることなく調整を行っていく方針だ」と語った。
物価上昇については「一本調子ではなく、振れを伴いながら上昇する」との見通しを示し、期待物価上昇率について「全体として徐々に高まっているが、2%に達しているわけではない」と述べた。
<現在の円安はバブル的でない>
黒田総裁は現在の株式・資産市場について「バブルは生じていない」と指摘。為替市場での円安についても「リーマン・ショック以後の異常な円高が修正されており、バブル的な円安ではない」との認識を示した。輸出数量が伸びてないとの指摘には「勢いが欠けるのは事実だ」とした。
長期金利については異次元緩和導入後の5月ごろに「不確実性が高まる局面が見られたのは確か」としつつ、「買い入れが進むことで金利低下圧力の高まりが見られ、最近では0.6%程度で安定的に推移している」とした。今後も「弾力的なオペ(公開市場操作)運営などで、できるだけ長期金利の上昇を抑制したい」と述べた。
<出口戦略、最適な方策とる>
出口戦略については時期尚早としながらも、「経済・物価情勢や市場の状況を踏まえ、最適な方策をとる」と明言。具体的な手法に関しては、一般論として、国債償還(による残高減少)、資金吸収オペ、付利の引き上げなどがある」と列挙した。
日銀が出口戦略で巨額損失を計上する、との日本経済研究センターによる試算については「出口の収益への影響は、手段や金利水準によっても違う」と答えた。
前原誠司(民主)、武正公一(民主)、小池政就(みんな)、坂元大輔(維新)、三木圭恵(維新)、中山展宏(自民)、岡本三成(公明)の各委員への答弁。

竹本能文、石田仁志 編集:山川薫

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