形を変えても記憶と魂を残すのが重要--擬人化プロジェクト「セガ・ハード・ガールズ」

 ご当地の萌えキャラやゲームのヒットタイトルの影響からか、さまざまな擬人化コンテンツが生まれている昨今。ゲームメーカーのセガは、かつて同社がリリースしてきた家庭用ゲーム機を美少女化するプロジェクト「セガ・ハード・ガールズ」を展開している。

 デザインはイラストレーターのKEI氏が担当。ドリームキャストやセガサターンといった広く知られるハードから、SG-1000やSG-1000IIといった初期のゲームハード、さらにはメガドライブ内蔵パソコンのテラドライブ、ドリームキャストのメモリーカードであるビジュアルメモリ、はては家庭用ピッチングマシンのロボピッチャといった玩具まで美少女に擬人化している。

 彼女たちは、基本プレイ無料として配信していたPS Vita用ソフト「サムライ&ドラゴンズ」(サムドラ)(※現在はサービスを終了)のキャラクターとして、2013年から登場。これにあわせてプロジェクトも開始し、小説や漫画、他のゲームのゲストキャラ、ラジオ番組などを展開している。

  • 擬人化したドリームキャスト(アニメ版)

 2014年4月には早々とアニメ化を発表し、10月からは「His☆Coool! セハガール」として放送を開始。キャラクターや表情の動きにMMD(MikuMikuDance)を活用した15分アニメで、ドリームキャスト、セガサターン、メガドライブの3人が大鳥居にある「セハガガ学園」を舞台に、センター先生からのお題に挑戦する内容となっていた。セガの新旧名作タイトルがお題となっており、そのゲームのグラフィックやBGMなどのデータもそのまま使われるなど、ある意味で“本物のパロディ”となっていた。

 どういう経緯で擬人化展開を始めたのか、その成り立ちやアニメ、そして今後について、セガネットワークス アート&デザイン部 部長/シニアデザイナーの福原智学氏と、セガ キャラクター・プロデュース部 メディアビジネスチーム チームマネージャー/チーフプロデューサーの中山雅弘氏に聞いた。

 福原氏はかつてAM2研やCS1研に在籍し、デザイナーとして「バーチャストライカー」や「龍が如く」シリーズなどを担当。サムドラではアートディレクターを務め、セガ・ハード・ガールズを生み出す段階で携わった。現在も監修という形で関わっている。中山氏は「サクラ大戦」や「シャイニング」シリーズのアニメなど、セガタイトルをゲーム以外のメディアへ展開するプロデューサーを担当。ことサクラ大戦においては、かつて池袋GiGOに開設していた専門ショップ「太正浪漫堂」の初代店主を務めて以来、現在においても開催されている歌謡ショウのプロデューサーを担当するなど長く関わり続けている人物。最近ではその経験をいかし、オンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2」を舞台化した仕掛け人でもある。セガ・ハード・ガールズについてはアニメ化も含めたコンテンツ展開をプロデュースしている。

  • ビジュアルメモリ(声:上坂すみれ)

  • SC-1000(声:芹澤優)

  • SC-1000II(声:大空直美)

難産だったテラドライブに、女性人気が高いマスターシステム--キャラクター誕生秘話

 そもそものきっかけは、サムドラ開発チームがゲーム中に登場するカードのネタとして制作されたところにある。それ以前からもセガタイトルとのコラボは実施していたものの、もう少しセガ推しとなるものとしてチーム内から提案があった。ただ、福原氏は当初難色を示していたと振り返る。「その当時からあった擬人化ブームに対して、安易に乗っていいものかと。コラボとしてはかわいい女の子が登場したこともあったのですが、あくまで作品にひも付いたもの。僕自身が萌え系コンテンツにあまり触れたことがなく、また作中の雰囲気も考えて、最初はあまり乗り気ではありませんでした。ただ実際にはじめてみるとキャラ設定などを考えるのが楽しくなってきましたね」(福原氏)。

 これとは別に、中山氏の部署でもゲームタイトルに依存しないキャラクター展開が命題としてあり、擬人化コンテンツの検討が進められていたという。そんな折りに、サムドラ開発チームから擬人化についてイラスト制作の段階まで進んでいるという連絡を受け、それに協力する形でプロジェクト化することになった。

 セガマニアという福原氏がセガにまつわるところを盛り込み、萌え系に詳しいプランナーが補強する形で設定付けが進められた。デザインがKEI氏になったのは、かわいらしすぎないこととユーザーに受け入れられるイラストが描けること。また音楽ゲーム「初音ミク -Project DIVA -」を展開していることから、セガファンとの親和性が高いと判断し打診したという。

  • SC-3000(声:相沢舞)

  • スーパー32X(声:鹿野優以)

  • ジェネシス(声:田野アサミ)

  • セガ・マークIII(声:田中真奈美)

  • ゲームギア(声:田中美海)

 キャラ設定については「プランナーからは、売り物にするにはわかりやすい分類が必要ですと主張がありました。ただ僕としては記号としてではなくキャラクターとしての背景が見える感じだといいと思いました。なので、彼の意見を取り入れ分かりやすい立ち位置を決めつつ、そこからゲームハードに基づいた設定を加えて作り上げました。今振り返ると、少しいびつな設定もありますが、それがゆえに愛着を持っていい方向に転がってくれれば」(福原氏)。「擬人化は萌え要素のテンプレをはめていくのが大事である一方、それだけでは薄っぺらくなります。人としての要素を盛り込めるかも勝負どころ。サムドラのゲームとしての設定と、プロジェクト展開する上での設定も付け加えていたので、後々アニメ化などの展開がしやすくなりました」(中山氏)という。

 最初に取りかかったというドリームキャストのデザインについて、福原氏のイメージでは白銀の鎧をまとった中世の騎士風だったが、KEI氏らしさも取り入れて柔らかい感じの鎧に。髪型もツインテールだったが、ドリームキャストのマークをイメージさせるようにくるっと巻き髪にしたという。セガサターンはツインCPUという特徴から両手に何か持たせる形をオーダーし、髪型もツインテールに。また土星の輪をイメージしてナイツをオマージュし首輪を付けた。こちらはある程度すんなりと決まったという。

 そのあとに制作したメガドライブは、2人がツインテールかつミニスカートだったので違うアプローチを意識。ハードにも書かれている“16-BIT”から数字を自慢することと、通信モデムを使ったネットワークゲームサービスの「ゲーム図書館」があったことから、優等生で分厚い本を持つキャラクターになったという。「優等生だからメガネをかけさせて、学ランっぽくホットパンツに。それでいて色っぽさを出すためにヘソ出しにしました。金髪なのは16-BITの文字からきていますけど、3人のバランスがいい感じでまとりました」(福原氏)。

  • ドリームキャスト(声:M・A・O)

  • セガサターン(声:高橋未奈美)

  • メガドライブ(声:井澤詩織)

 ちなみにロボピッチャは厳密に言うとゲームハードとは異なるものの「擬人化したら喜んでもらえるだろうということと、キャラ立てがしやすそうという点で決めました。また異色なキャラをあえてひとり入れることで、他のキャラクターが引き立つことも考えました」(福原氏)、「こちらで検討していた段階でも、ロボピッチャは候補に入れてました。パロディとして取り上げられたマンガの影響から、セガファン以外への認知度も高いですから。セガの玩具という意味合いのハードだと思ってもらえたら」(中山氏)という理由から採用したという。

 福原氏は難産だったキャラクターにテラドライブを挙げた。「正確には僕が迷走したと言えるのですが、メガドライブの派生ハードにはメガドライブ2、メガCDにメガCD2とバリエーションがあり、16-BIT以外の要素でメガドライブらしさを出すためにはどうしたらいいのか。さらにPCとメガドライブが融合している感じを出すにはと考えると、なかなかイメージがまとまりませんでした。そのためにKEIさんへのオーダーを先延ばしにしていたら、KEIさんのほうからデザイン案が送られてきました」と振り返る。そんなテラドライブは、ソニックをイメージさせる猫耳に下ふちメガネ、ニーハイなど萌え要素を大きく盛り込んだキャラクターとなった。

 こと女性に人気が高いのは、このテラドライブとマスターシステムという。マスターシステムはFM音源搭載ということでヘッドフォンを装着。さらに太ももには、かつてセガが発売した光線銃のジリオンも身につけている。中山氏によれば擬人化することによって、キャラクターを愛でる対象として見ることができ、女性でも興味を持ってもらいやすいという。

  • メガドライブ2(声:山岡ゆり)

  • メガCD(声:三上枝織)

  • メガCD2(声:金魚わかな)

  • ロボピッチャ(声:もものはるな)

  • テラドライブ(声:井上麻里奈)

  • マスターシステム(声:髙山ゆうこ)

 ちなみにサムドラにおけるセガ・ハード・ガールズでは家庭用ゲーム機だけではなく、LINDBERGHやModel1といったアーケード用の基板も擬人化されている。こちらはKEI氏だけではなく、多様なイラストレーターを起用してデザインした。福原氏によれば家庭用ハード以上に自由なイメージで、それぞれ描き手の持ち味が出たデザインになったという。ただ、プロジェクト展開するには少々マニアックであることや、キャラクターが多くなりすぎることの懸念から、現段階では家庭用ハードに絞っているという。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]