乗り物

ロードバイクに「隠しモーター」をこっそり取り付けるとこんな感じ


2010年頃から自転車レース界でその存在が噂されていた「隠しモーター」が、2016年1月30日にベルギーで開催されたシクロクロス選手権に出場した19歳のベルギー人女性選手の使用した車体から発見されました。国際自転車連合によれば、トップレベルの大会で「メカニカルドーピング(機材によるドーピング)」が発覚したのは今回が初めてとのことですが、事件発覚前からその存在は噂されており、2015年4月の時点で自転車関連のニュースを取り扱うCyclingTipsが「自転車にこっそり取り付けられる電動アシスト」がどのようなものなのかを報じています。

Hidden motors for road bikes exist — here’s how they work | CyclingTips
http://cyclingtips.com/2015/04/hidden-motors-for-road-bikes-exist-heres-how-they-work/

オフロードで行われる自転車競技「シクロクロス」の世界大会が2016年1月30日にベルギーで開催されました。同大会では年代別のカテゴリを設けており、U23の大会に出場していたベルギーのナショナルチャンピオン兼ヨーロッパチャンピオンであるフェムケ・ファンデンドリーシュ選手が使用していた自転車から、電動アシスト用の機材が見つかりました。トップレベルの大会で技術的な不正が確認されたのは今回が初めてで、ファンデンドリーシュ選手は「友人のもので自分の自転車でない」と否定しています。

【自転車】ベルギー選手が「隠しモーター」使用か “機材ドーピング”と波紋 - 産経ニュース


シクロクロス世界選手権で史上初の機材ドーピングが発覚  | cyclowired


自転車レースでまさかの「隠しモーター」、ウワサがついに現実に:イザ!


同大会で使用されたもののような、見た目では電動モーターが装着されていることがわからない「隠しモーター」は、既に市販されています。その内のひとつをCyclingTipsが実際に自転車にセットして動作を確認しています。

CyclingTipsがセットアップを試したのはオーストラリアのvivax driveが販売している「vivax assist」。これは4300オーストラリアドル(約36万円)近くする代物で、電動モーターの他に、バッテリーパックやバッテリー収納用のサドルバッグ、充電器、電子制御装置を収納するためのシートポスト、モーターを自転車のクランクにつなぐためのアダプターなどがセットになっています。

これがvivax assist。自転車のクランク(左右のペダルをつなぐシャフト)に設置するタイプのモーターで、長さは22cm。以下の画像の縦に伸びる銀色と黒色の筒状のものがモーターになります。モーターのバッテリーはシートの裏側に取り付けできるようになっており、ここから伸びるケーブルで給電し、クランクとモーターはギアで連結されています。


これは連結ギア部分。モーターの底とクランクにギアがあり、これがかみ合ってペダルを回してくれるわけ。


実際に取り付けるとこんな感じ。端から見てもモーターが設置されているようには思えない、というのがポイント。


バッテリーはデフォルトだと専用のサドルバッグに収納してサドルの裏側に固定することになっています。


サドルバッグに収納されているバッテリーはかなり巨大。


さらに、オプションでフレームの中にバッテリーを隠すこともできる模様。


モーターの起動はボタンを押すだけでOKで、ボタンはハンドル下部に取り付けられて、シートポストに取り付けられた制御装置につながっています。


なお、vivax assistのモーターの出力は200W(ワット)で、これはオーストラリアではeバイク(電動アシスト自転車)のモーター出力が250Wまでと分類されているからだそうです。ただし、vivax assistがドライブシャフト部分に伝える出力は110W相当しかない模様。また、vivax assistは乗り手のペダルこぎをアシストするもので、利用時は「ライダーのペダルをこぐ力」+「モーターの出力」が合わさることになります。なお、バッテリーの容量は60分間のアシストが可能なものと、90分のアシストが可能なものの2種類。モーターの重量は750グラムで、バッテリーは60分のアシストが可能な方で900グラム。その他パーツも含めると、全部でなんと1.8kgもの重量になります。90分のアシストが可能なバッテリーの場合、さらに重量が400グラム増加します。

装着にはシマノのホローテックIIクランクと、直径31.6mmのモーターを収納可能な真っ直ぐなシートチューブが必要とのこと。モーターのサイズは長さ220mm×直径31.6mm。


以下の画像はVivaxブランドのカーボンフレームにシマノのULTEGRAシリーズの変速機やペダル、セライタリアのサドル、Zippの60 Clincherなどを装着したもの。もちろんクランクシャフト部分にはvivax assistが連結されています。なお、vivax assistを装着した状態で、自転車全体の重量は7.9kgだったそうです。


また、モーターの起動ボタンは有線接続されているのですが、無線接続のものに変更することも可能。無線接続のボタンの場合、ボタンはハンドル部分などに埋め込むことができます。

実際にvivax assistをセットしたロードバイクで、電動モーターを使用している様子は以下のムービーで見られるようになっており、ペダルをほんの少し回すだけで、足を離してからもホイールが延々と回転し続ける様子が見られます。

Motor demo on Vimeo


なお、モーターを起動していなくても余計な抵抗は感じられないそうで、険しい登坂時などに使用すると確かにモーターの恩恵を感じられたそうです。また、モーターのアシストがあるおかげで一定のペースを保ったまま自転車をこぐのがとても楽になるとのこと。モーターからは極小音のノイズがするそうですが、それほど大きなものではないそうです。また、以下のムービーの終わり頃にノイズを聞くことができます。

Vivax Assist on-bike demo on Vimeo


なお、vivax assistは自転車競技時に隠れて使用するために作られたものではなく、サイクリングなどの際に乗り手間の能力差を少しでも埋めることができるように、と開発されたものです。しかし、CyclingTipsは「自転車競技でvivax assistや類似製品が使用される可能性はある」としており、それが2016年になってついに実現してしまったというわけです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ロードバイクの違法コピー品の実例と、粗悪品を掴んでしまわないための心得 - GIGAZINE

ロードバイク乗りがスネ毛を剃ることで生まれていた最大のメリットとは? - GIGAZINE

ワンタッチ取り付け可能でロードバイクの重量増にもならない「UpStand」 - GIGAZINE

in 乗り物,   動画, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.