<ヤクルト2-10巨人>◇18日◇神宮

 リーグ3連覇へカウントダウンに入った巨人はヤクルトに快勝、優勝マジックナンバーを7とした。9月に入って9発と本塁打を量産する阿部慎之助捕手(30)が7回、通算200本塁打となる今季28号3ランで試合を決めた。球団で200本塁打は6人目で、捕手では初の快挙。巨人の優勝は最短で22日の中日戦(東京ドーム)で、今月中には原監督の体が宙を舞う可能性が高くなった。

 阿部は少しうつむいてダイヤモンドを1周した。7回の5連打を締めくくる28号は、自身200本目の本塁打。ヤクルトのキャラクター「つば九郎」から花束で出迎えを受け、右翼席に頭を下げた。「たくさんの人が支えてくれました。裏方さん、コーチ、練習に携ってくれた方々。内海も楽になったので、うれしかった」。まず周囲に感謝し、先発左腕を気遣ったのが阿部らしかった。

 実は体調万全でなかった。「近づかない方がいいですよ、今日のボクには。風邪ひいちゃって…」と、鼻声で球場入りした。それでも逆風を突いて、特大の140メートル弾をバックスクリーンに放り込んだ。「昨日は11時間、ぶっ通しで寝ました。ドーピング検査にかからない薬を確認して飲んでね」と試合に備え、何事もなかったようにスタメン出場。記念のアーチにも「ふさわしい当たり」と納得できた。

 寸分のスキも見せず、リーグ3連覇を決める。過去2年はこの9連戦でライバルを猛追し、大逆転Vを果たした。追われる立場で迎える正念場を前に、「まだまだですね。もつれると思うんですよ」と険しい顔だった。そういう決意を実践したのは6回無死二塁の第3打席だった。初球から2球続けてセーフティーバントの構えをし、相手の内野陣を揺さぶった。そして3球目の外角直球を引っ張って、進塁打の一ゴロを打った。中押しとなる中井の犠飛をおぜん立てした後に、ダメ押し3ラン。主将の仕事だった。

 阿部の奮闘につられるように、打線はヤクルト投手陣を粉砕した。5回に小笠原の中前適時打で均衡を破ると、中盤以降に10得点。守備を固めながら次々とメンバー、守備位置を変更させるベンチワークで、結局、ベンチに残った野手は捕手鶴岡1人という一丸での完勝だった。

 原監督は「慎之助の進塁打が大きかった」と6回のチーム打撃を絶賛。「すごいホームランだったねえ。(通算200号は)非常に価値がある。もう倍くらい打つんじゃないかな」と、巨人捕手として初の大台に乗せたアーチにほれぼれしていた。優勝マジック7にも、「全員で戦っていく。このスタンスは変わりませんよ」と油断はなかった。最短Vは22日。慎之助を中心にまとまったチームのゴールが、目前に迫ってきた。【宮下敬至】

 [2009年9月19日8時20分

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