ホアキン・フェニックスは2008年に突然ラップミュージックに専念すると、役者業の引退を表明。あまりにも突然の引退発表に加え、ルックスもひげもじゃにロン毛のダーティスタイル、その上セカンドキャリアであるはずのラップがみじめなほど下手くそときたら、世間は対応していいのか分からなくなってしまった。しかし、後にこれは映画『容疑者、ホアキン・フェニックス』(10)のために世の中を欺く壮大なジョークだったことが判明する。
『容疑者、ホアキン・フェニックス』は、義理の弟だったケイシー・アフレック(ベン・アフレックの弟で、当時ホアキンの妹サマーと結婚をしていた)が監督し、ホアキンが主演するモキュメンタリーで、すべては撮影のための演出だということを知っていたのは、ホアキンとケイシーの二人だけだった。有名な話では米人気TVトーク番組「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」でのホアキンの狂気ぶり。トークショーなのに支離滅裂な答えの連発で、司会のレターマンはもちろん、視聴者たちも多いに混乱させた。
結局、二人は2年間世間を騙して映画を完成させたが、多くの人たちは悪ふざけがすぎると激怒。ジョークとして笑い飛ばしてくれる人は少なかった。とはいえ、2年間も業界関係者を含め、世界を騙し続けるのは至難の業。そこまで本気で人を騙せるとは、まさにホアキンこそ、リアル・ジョーカーと言っても過言ではないだろう。ただし、唯一の疑問が、そこまで世間を騙せる抜群の演技力を誇るホアキンが、なぜあんなにもラップが下手なのか(わざと下手にしている演技ではない)? 練習量の問題だったのか……。
Vol1. 俳優人生の原点、家族とドラマティックな生い立ち。
Vol2. 最愛の兄リヴァーとの別れ、その23年後に明かされた秘話。
Vol3. 華麗な恋愛遍歴、婚約者ルーニー・マーラと出会うまで。
Vol4. ヴィーガンを貫く私生活と、アルコール依存症でリハビリの過去。
Text: Rieko Shibazaki