Oculusの最新デヴァイスではじまる「VRのなかでのものづくり」

オキュラスがコミコンで披露した「Medium」は、仮想現実(VR)を使ってアーティストたちの創造活動を助ける新ツールだ。VRのなかで制作を行うことでどんなメリットがあるのか? その使い心地を動画で紹介。
Oculusの最新デヴァイスではじまる「VRのなかでのものづくり」

テレビ番組『バットマン・ザ・フューチャー』のアーティスト、バーナード・チャンは、1960年代にバットマンを演じたアダム・ウェストのマスクの彫刻をつくり始めた。が、すぐに80年代後半の作品に移る。「次はマイケル・キートンかい?」。ティム・バートン時代のマスクを直しながらチャンは言う。

といっても彼は、粘土も、そのほかの物理的な物体をいっさい使っていない。すべて仮想現実VR)のなかで行っているのだ。

コミコン・インターナショナルの狭いステージに立ち、ヘッドセット「Rift」を装着したチャンは、オキュラスのスカルプチャーツール「Medium」と近日発売されるコントローラー「Touch」を使って、仮想3D空間のなかで彫刻をつくっている。チャンは、Mediumの多彩な機能のおかげで、20分もかからずにかっこいいバットマンスーツを2着仕上げた。

Mediumの機能として、例えば「シンメトリーツール」を使えば、バットマンの顔の片方で行った作業をすべてをもう片方にコピーすることができる。制作結果はズームイン、ズームアウトで確認することが可能だ。Mediumのプロジェクトディレクター、ブライアン・シャープがコミコンのプレゼンテーションの間に語ったように、「VRのなかで行ったほうが、粘土を使うよりもやり直しや取り消しが簡単にできる」のである。


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Mediumは、もともとはチャンのようなコミック・アーティスト向けに作成されたものではなかったという。だが結果的に、MediumはVRのなかでアートを制作したいと思うすべての人に向けたものになった。このツールはシンプルかつ直感的で、誰でも1時間あれば使い方を習得することができるのだ。

「コミックを描くとき、わたしは極めて伝統的な方法を使っています。いまだにペンと鉛筆で、紙に描いているのです。それをスキャンして読み取り、ワコムのタブレットを使って描画を追加して仕上げます」とチャンは言う。「(Mediumで作業する場合もプロセスは)ほぼ同じです。遊んだり、おもちゃにするのがとても楽しいツールであることが使っていてわかりました」

おもちゃになるものを与えること、は重要だ。オキュラスの社内でシャープのチームは、フェイスブックに会社が買収された直後から、2年近くの年月をかけてMediumを開発した。Mediumは、ある時点で商業利用されることになるだろう。しかし彼らの望みは、あくまでクリエイターたちにものをつくるのを楽しんでもらうことである。

「わたしたちにとって、プロのアーティストたちにMediumを気に入ってもらうことは重要です。そしてすでに、Mediumは彼らに受け入れられているようです」とシャープは言う。「しかし同時に、(プロでない)誰もが使える必要もあります。ソフトウェアを使うための退屈な作業をすべて取り除き、ユーザーたちが『もっとうまく描こう』と考えることだけに集中できるようにすること。それがMediumのエキサイティングなところなのです」

[7月29日 リードを一部訂正いたしました。]

TEXT BY ANGELA WATERCUTTER