バナー2010年9月26日号本文へジャンプ
砂田喜昭 2010年9月26日更新  
公の施設利用条例
「政治活動だからダメ」は違法

九月議会 一般質問

 9月議会に提案された市民活動サポートセンターの設置条例について、「第五条で『政治活動または宗教活動に使用されるおそれがあるとき』入館を断り、退場を命ずることができるとなっている。『政治活動に使用されるおそれ』ということになると、たいへん範囲が広く、これでは自主的な市民活動に不当な制限を課すものではないか」と、砂田市議が追及しました。


これに関する民生文教常任委員会報告も掲載します。


自主的な市民活動が
排除されないか


 砂田市議
 水道料金の値下げを求める会が署名運動に取組み、料金値下げを市とともに実現し、子撫川ダムの固定資産税を取り忘れていた問題の解決にも貢献。政治的な要求を掲げた運動だが、社会に貢献したことはあきらかではないか。これが排除されるおそれがある。
 
小矢部平和委員会が核兵器廃絶を求めて、署名活動をしている。国連の潘基文(パンギムン)事務総長がNPT再検討会議に寄せられた600万筆の署名に触れて「みなさんの努力は、世界的な核兵器廃絶支持の大波をつくり出した」と評価。国連からも高く評価されるような市民活動を、政治的活動だとしてサポートセンターへの入館を断り、退場させるつもりなのか。
 
国民救援会は冤罪被害者の救援や取り調べの可視化を求めて活動しているが、この団体も排除されるおそれがないか。
この条文は削除すべきだ。これは地方自治法(注1)にも、判例(注1注2)にも反しており、このような条文をもっている自治体は、県内でも全国でも珍しい。

行政に訴える市民活動は
利用の制限を受けない


 総務部長
 地方自治法では「公の施設の利用を、正当な理由がなく拒んではならない」としているが、政治的活動、宗教的活動が市民活動にそぐわないこともあると判断した。どのような活動がそれに該当するか、個別の事案ごとに判断せざるを得ないので、内規でその基準を定めたい。基準としてはNPO法の基準(注3)に準じたい。先ほどおっしゃったグループを作って行政に訴えていく活動は政治的活動には該当せず、利用の制限を受けない。その他の施設についても、施設ごとに同様の内規を作って対応したい。
 砂田市議 この問題で、市の担当者がいまどれだけ「そんなことはない」と言っていても、条文が一人歩きし、この条例の目的で述べているような「市民の自主的で営利を目的としない社会に貢献する活動」がたいへん、狭く解釈されるおそれがある。
 総務部長 おっしゃるような心配もあるので、運用方法、内規の整備は欠かせないと、今回改めて思った。適正な運用方針で対応したい。

公民館で
市政報告会は可能


 砂田市議
 公民館で市政報告会を開くことは社会教育法23条にてらしても何ら問題がない(注2)と考えるが、どうか。文科省通知も参照。
 教育次長 不特定の地域住民を対象に行われる市政報告会は、市の条例で禁止している事例にあたらない。早急に公民館管理者に周知徹底を図っていきたい。


    
ー読者の声ー

 一問一答形式は今回が初めてですか?わかり易くていいのではないでしょうか。砂田さんはさすがにリラックスして気負わずに質問していましたね。聞きやすかったです。
 公共施設の使用問題は一歩前進の答弁を引き出したのではないですか。「サポートセンター」については、市が政治活動にこだわっていましたが、これだけしっかり質問しておいたということで、市側も意識するでしょうから、意義があったと思います。


(注1)判例1
 
普通地方公共団体は正当な理由がない限り住民が公の施設を利用することを拒んではならない(地方自治法244条2項)。
 1981年福岡地裁は、市の同和行政を批判する市政報告会を開こうとして公民館の使用を拒否された事件で、「市の同和行政に反対しているからといって使用を拒否するのは、地方自治法で言う正当な理由にはあたらない」として、原告勝訴。


(注2)判例2
「特定の政党の利害に関する事業」(社会教育法23条)とは
 佐賀地裁は2001年、ゴミ処理施設の学習会に共産党国会議員をよんだことで、公民館の使用を拒否された事件について、社会教育法23条の解釈を明確にし、原告勝訴。
 社会教育法23条1項2号によって公民館で禁止される「特定の政党の利害に関する事業」とは,@ 文字どおり,「特定の政党」の利害に関する政治的活動を指すのであって,
単なる政治的活動を指すのではない
A また,同号の
「利害に関する」の解釈についても,憲法に定められた集会の自由を実質的に保障するためには,公共の福祉に反しない限り,公民館という施設の利用が認められるべきであること,そして,集会なるものは通常何らかの政治的意思の表明を伴うことが多いことを考慮すれば,単に特定の政党に事実上の利害が関係するというだけでは足りず,たとえば,当該集会の目的が,特定の政党が掲げる政策内容にたまたま合致している部分があるとか,同目的を遂行するにあたり,結果的に同政党を支援することにもなったというだけでは足りないのであって,
B 
特定の政党の政策目的を実現するため(あるいは,反対政党の政策実現を阻止するため),統治機構の獲得維持を志向し,その一環としてなされるものでなければならない。


(注3)NPO法の基準
 この法律は、非営利活動を行う団体に法人格を付与するためのもので、その認証基準は次の通り。
 イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと。
 ロ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。
 ハ (略)

 国会審議を通じて、これらの条文が「憲法に規定する信教、結社及び表現の自由が侵害されることのないよう配慮し、特定非営利活動の自主性を損なうことのないよう十分に注意して適正に行う」とされ、政治活動一般が禁止されるものでないことを明確にしています。


県条例では
いまだに政治活動を「器物を損壊したり、風紀を乱したりする」ことと同じ反社会的行為として、公の施設の利用を禁止している条例をもっているのは、小矢部市ぐらいのものです。富山県はサンシップ(富山県総合福祉会館)や、サンフォルテ(富山県民共生センター)の施設設置条例を制定していますが、政治活動を禁止する条文を設けていません。


文部科学省が出している「公民館の設置・運営に関する通知」によれば、公民館の事業と選挙の関係について、昭和30年1月13日付け通達では、「公民館が住民の政治的教養の向上を図ることは通常においてもきわめて重要なこと」と指摘し、選挙に際しては社会教育法二三条に留意することと注意を促しています。
 また、公民館を特定の政党に貸すことについても、昭和30年2月10日付けで千葉県教育委員会に次のように回答しています。
 特定の政党に貸すという事実のみをもって直ちに社会教育法第二三条第1項第二号に該当するとはいえないが、当該事業の目的及び内容が特定の政党の利害にのみ関するものであって社会教育の施設としての目的及び性格にふさわしくないと認められるものである場合は該当すると解される。


9月24日、議会最終日に行われた民生文教常任委員会報告は次のように指摘しました。
 平成22年10月にオープンする市民サポートセンターの使用は、議会活動報告や市政報告会等の政治的活動も含め、入館制限をできる限り排除し、多くの市民が自由に使えるよう運営すること。
 また、市立公民館についても同様に、利用者の立場を尊重し、市民が大いに活用できるよう取り組むこと。

 トップへ戻る
砂田喜昭(Yoshiaki Sunata)のホームページへ戻る