日米首脳会談「テ・タテ交渉」の気になる中身
2月10日正午(日本時間11日未明2時)からホワイトハウスで開かれた日米首脳会談・ワーキングランチは、日本側から安倍晋三首相、麻生太郎副総理・財務相、岸田文雄外相、米側からドナルド・トランプ大統領、マイク・ペンス副大統領、レックス・ティラーソン国務長官、マイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官が出席した。
“日米オールスター・キャスト”のように見えるが、実は首脳会談はわずか45分、そしてワーキングランチは50分間であった。その心は、トランプ大統領が日本に求める2国間交渉の枠組が整ったことを示すセレモニー的な意味合いが大きかったということである。
今回の日米首脳会談に関して玄人筋が注目しているのは、11日夜の大統領別荘「マララーゴ」で行われる夕食を交えたテ・タテ会談(通訳のみでノートテイカーも同席しない)の「中身」である。
ところで、当初は世耕弘成経済産業相も首相訪米に同行して会談する予定であったピーター・ナバロ大統領補佐官(ホワイトハウスに新設された国家通商会議=NTCの議長でもある)の存在感が急上昇している。
と同時に、同補佐官の傍らに常にいる副官的な存在のアレックス・グレイ氏も要注意である。間もなく通商担当大統領副補佐官に就任すると見られる同氏は昨年の大統領選期間中、トランプ陣営のアジア政策担当者を務め、外交専門誌『フォーリン・ポリシー』(11月号)に米海軍の復権と対中強硬策を提唱したことで知られる。
前カリフォルニア大学(アーバイン校)教授のナバロ大統領補佐官は、通商・貿易政策のみならずトランプ政権のアジア政策全般を担う国務、国防、商務省の実務責任者である国務次官補(東アジア・太平洋担当)、国防次官補(アジア・太平洋担当)、商務次官補(アジア担当)の人事権を持っている。そして筋金入りの対中強硬派だ。
もう一人のキーパーソン
もう一人、キーパーソンを挙げておきたい。マシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級部長である。ロイター通信と米紙ウォールストリート・ジャーナルの北京特派員を7年間務めた後の2005年9月、米海兵隊に入隊してイラクとアフガニスタンでインテリジェンス活動に従事した異色の経験の持ち主である。
アフガニスタン従軍時(海兵隊大尉)にやはり同地に駐在していたフリン陸軍中将の知己を得て、駐留米軍のインテリジェンス組織の再建に貢献した。同氏もまた対中強硬派であり、アジア関連ポストの人事に発言権がある。因みに、ポッティンジャー氏をNSCアジア上級部長に起用したのはもちろんフリン大統領補佐官である。
先に来日したジェームズ・マティス国防長官は稲田朋美防衛相との会談の中で、中国の南シナ海での海上覇権活動について最大級の懸念を表明した。このようにトランプ政権の要路を占める人物を見てみると、対中強硬派が実に多いことが分かる。
習近平国家主席は当分間、様子見を決め込んでいる。同国指導部は2月16、17両日にドイツのボンで開催される主要20カ国・地域(G20)外相会合に王毅外相を派遣しないことがその表れである。
そして注目すべきは、安倍・トランプ会談でトランプ大統領が中国を改めて「為替操作国」として批判し、日本の「円安誘導政策」については言及するのか、それともしないのか、である。今回の日米首脳会談を日米2国間交渉のキックオフと位置付けた安倍首相の成否は、その一点に尽きる。
さらに安倍・トランプ会談後、トランプ大統領がお得意のツイッターに同会談についてどのような感想と評価を投稿するのか。その「指先介入」次第で東京金融市場の為替は円安に振れ、株式は株高となるのだ。
(本記事は2月18日に修正いたしました。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51005の末尾をご覧ください)