2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病患者[インスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、本剤を投与すべきでない。]
2.3 重症感染症、手術等の緊急の場合[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので、本剤の投与は適さない。]
本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
通常、成人には、リラグルチド(遺伝子組換え)として、0.9mgを維持用量とし、1日1回朝又は夕に皮下注射する。ただし、1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減し、1日0.9mgで効果不十分な場合には、1週間以上の間隔で0.3mgずつ最高1.8mgまで増量できる。
7.1 本剤は、1日1回朝又は夕に投与するが、投与は可能な限り同じ時刻に行うこと。
7.2 胃腸障害の発現を軽減するため、低用量より投与を開始し、用量の漸増を行うこと。
良好な忍容性が得られない患者では減量を考慮し、さらに症状が持続する場合は、休薬を考慮すること。1〜2日間の減量又は休薬で症状が消失すれば、減量前又は休薬前の用量の投与を再開できる。
8.1 本剤はインスリンの代替薬ではない。本剤の投与に際しては、患者のインスリン依存状態を確認し、投与の可否を判断すること。インスリン依存状態の患者で、インスリンから本剤に切り替え、急激な高血糖及び糖尿病性ケトアシドーシスが発現した症例が報告されている。
8.2 投与する場合には、血糖、尿糖を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、3〜4ヵ月間投与して効果が不十分な場合には、速やかに他の治療薬への切り替えを行うこと。
8.3 本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。[
9.1.4、
11.1.1参照]
8.4 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。[
11.1.1参照]
8.5 急性膵炎の初期症状(嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等)があらわれた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導すること。[
9.1.2、
11.1.2参照]
8.6 胃腸障害が発現した場合、急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮する等、慎重に対応すること。[
9.1.2、
11.1.2参照]
8.7 本剤投与中は、甲状腺関連の症候の有無を確認し、異常が認められた場合には、専門医を受診するよう指導すること。[
15.2参照]
8.8 胆石症、胆嚢炎、胆管炎又は胆汁うっ滞性黄疸が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。[
11.1.4参照]
8.9 本剤の自己注射にあたっては、以下の点に留意すること。
・投与法について十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。
・全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。
・添付されている取扱説明書を必ず読むよう指導すること。
8.10 本剤とDPP-4阻害剤はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 腹部手術の既往又は腸閉塞の既往のある患者
9.1.3 糖尿病胃不全麻痺、炎症性腸疾患等の胃腸障害のある患者
十分な使用経験がなく、胃腸障害の症状が悪化するおそれがある。
9.1.4 低血糖を起こすおそれがある以下の患者又は状態
・脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
・栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態
・激しい筋肉運動
・過度のアルコール摂取者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には本剤を投与せずインスリンを使用すること。
ラットにおいて最大臨床用量である1.8mg投与時の約18.3倍の曝露量に相当する1.0mg/kg/日で早期胚死亡の増加、ウサギにおいて最大臨床用量である1.8mg投与時の約0.76倍の曝露量に相当する0.05mg/kg/日で母動物の摂餌量減少に起因するものと推測される胎児の軽度の骨格異常が認められている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
ラットで乳汁中への移行が報告されている。ヒトでの乳汁移行に関するデータ及びヒトの哺乳中の児への影響に関するデータはない。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。生理機能が低下していることが多く、胃腸障害及び低血糖が発現しやすい。
特に糖尿病用薬との併用時には低血糖発現リスクが高くなるおそれがある。[
16.6.3参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低血糖(頻度不明)
脱力感、倦怠感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、知覚異常等の低血糖症状があらわれることがある。また、重篤な低血糖症状があらわれ意識消失を来す例も報告されている。
低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用時はブドウ糖を投与すること。また、患者の状態に応じて、本剤あるいは併用している糖尿病用薬を減量するなど適切な処置を行うこと。[
8.3、
8.4、
9.1.4、
10.2、
17.1.1-
17.1.5参照]
11.1.2 膵炎(頻度不明)
嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等、異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、急性膵炎と診断された場合は、本剤の投与を中止し、再投与は行わないこと。なお海外にて、非常にまれであるが壊死性膵炎の報告がある。[
8.5、
8.6、
9.1.2参照]
11.1.3 腸閉塞(頻度不明)
高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
9.1.1参照]
11.1.4 胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(いずれも頻度不明)[
8.8参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 1〜5%未満 | 0.2〜1%未満 | 頻度不明 |
感染症 | | | 胃腸炎 | |
血液及びリンパ系障害 | | | 貧血 | |
内分泌障害 | | 甲状腺腫瘤 | | |
代謝及び栄養障害 | | 食欲減退 | 高脂血症 | 脱水 |
神経系障害 | | | 頭痛、浮動性めまい、感覚鈍麻、味覚異常 | |
眼障害 | | 糖尿病性網膜症 | | |
心臓障害 | | | 心室性期外収縮 | 心拍数増加注1) |
血管障害 | | | 高血圧 | |
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 | | | 咳嗽 | |
胃腸障害 | 便秘、悪心 | 下痢、腹部不快感、消化不良、腹部膨満、嘔吐、腹痛 | 胃食道逆流性疾患、胃炎、おくび | 鼓腸、胃排出遅延 |
肝胆道系障害 | | | 肝機能異常 | 胆石症 |
皮膚及び皮下組織障害 | | | じん麻疹、そう痒症、紅斑、湿疹、発疹 | 皮膚アミロイドーシス注3) |
全身障害及び投与部位状態 | | 注射部位反応(紅斑、発疹、内出血、疼痛等) | 倦怠感、胸痛 | |
臨床検査注2) | | 膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ等)増加 | ALT増加、AST増加、体重減少 | |
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤とワルファリンとの薬物相互作用は検討していない。併用する際にはPT-INR等のモニタリングの実施等を考慮すること。類薬でワルファリンとの併用時にPT-INR増加の報告がある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラット及びマウスにおける2年間がん原性試験において、非致死性の甲状腺C細胞腫瘍が認められた。
血中カルシトニン値上昇、甲状腺腫、甲状腺新生物等の甲状腺関連の有害事象が臨床試験において報告されている。なお、国内外で実施された臨床試験プログラムにおいて、甲状腺に関連する有害事象の発現頻度は、本剤投与群(3.3件/100人・年)及びプラセボ群(3.0件/100人・年)で同程度であった
1)。
甲状腺髄様癌の既往のある患者及び甲状腺髄様癌又は多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴のある患者に対する、本剤の安全性は確立していない。[
8.7参照]
16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人における単回皮下投与後の薬物動態
32例の健康日本人成人男子に本剤2.5、5、10及び15μg/kg(体重60kgとすると、本剤0.15、0.3、0.6及び0.9mgに相当)又はプラセボを単回皮下投与した。皮下投与された本剤は緩徐に吸収され(tmax:7.5〜11時間、中央値)、半減期10〜11時間(平均値)で血漿中から消失した
1)。
健康日本人成人男子における単回投与後の血漿中濃度(平均±SD)
16.1.2 2型糖尿病患者における反復皮下投与後の薬物動態
15例の日本人2型糖尿病患者に、本剤5及び10μg/kg(体重60kgとすると、0.3及び0.6mgに相当)又はプラセボを1週間に5μg/kgずつ漸増する投与方法にて1日1回14日間反復皮下投与した。最終回投与後のtmaxは9〜12時間(中央値)であり、半減期は14〜15時間(平均値)であった。反復投与後の累積係数は1.6〜1.8と算出された
1)。
日本人2型糖尿病患者に本剤0.9mgを1日1回14週間投与した際の14週後の本剤濃度の平均値±標準偏差は10.1±4.2nmol/Lであった(42例)
2)。272例の日本人2型糖尿病患者を対象とした母集団薬物動態解析の結果、本剤1.8mgを1日1回投与した際の定常状態における平均血漿中濃度(推定値)は、20.9nmol/Lであった
16)。
16.2 吸収
本剤5μg/kg皮下投与後の絶対的バイオアベイラビリティは、55±37%であった(6例)
3)(外国人データ)。
16.3 分布
本剤のヒト血漿に対するin vitroタンパク結合率は、0.1〜1000nmol/L(10−6〜10−10mol/L)の濃度範囲において、98.7〜99.2%であった。また、ヒト血清アルブミン及びα-酸性糖タンパクに対するin vitro結合率は、それぞれ99.4%及び99.3%であった。
16.4 代謝
本剤は、GLP-1に比べて緩やかにDPP-4及び中性エンドペプチダーゼにより代謝されることがin vitro試験において示されている。
3Hでラベル化した本剤を健康成人に単回投与後、血漿中に検出されたラベル体は主に未変化体であった。その他に2つの代謝物が検出され、全放射能の9%以下及び5%以下に相当した。
ヒト肝ミクロゾームにおいて、CYP分子種の薬物代謝酵素活性の本剤による阻害作用を検討した結果、最高100μmol/Lの濃度まで、CYP分子種(CYP1A2、CYP2A6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4)に対する本剤の阻害作用は認められないか、非常に弱いものであった[50%阻害濃度(IC50)>100μmol/L](外国人データ)。
16.5 排泄
3Hでラベル化した本剤を健康成人に単回投与後、尿及び糞中に未変化体は検出されなかった。本剤の関連代謝物として排泄された放射能の排泄率は、総放射能に対して尿中で6%、糞中で5%であった。これらは3種類の代謝物であり、投与後6〜8日までに尿又は糞中に排泄された(外国人のデータ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害被験者における薬物動態
腎機能障害の程度の異なる外国人被験者[クレアチニンクリアランス(Ccr)による分類]における本剤0.75mg単回皮下投与後の薬物動態を、腎機能が正常な被験者(Ccr80mL/min超)と比較検討した結果を以下に示す
4)(外国人データ)。
腎機能 | AUC0-inf | Cmax |
比の推定値 [90%信頼区間] | 比の推定値 [90%信頼区間] |
軽度/正常 (軽度:Ccr50超〜80mL/min) | 0.67 [0.54;0.85] | 0.75 [0.57;0.98] |
中等度/正常 (中等度:Ccr30超〜50mL/min) | 0.86 [0.70;1.07] | 0.96 [0.74;1.23] |
重度/正常 (重度:Ccr30mL/min以下) | 0.73 [0.57;0.94] | 0.77 [0.57;1.03] |
末期/正常 (末期:血液透析を必要とする被験者) | 0.74 [0.56;0.97] | 0.92 [0.67;1.27] |
16.6.2 肝機能障害被験者における薬物動態
肝機能障害の程度の異なる外国人被験者[Child-Pugh scoresに基づく分類]における本剤0.75mg単回皮下投与後の薬物動態を、肝機能が正常な被験者と比較検討した結果を以下に示す
5)(外国人データ)。
肝機能 | AUC0-inf | Cmax |
比の推定値 [90%信頼区間] | 比の推定値 [90%信頼区間] |
軽度/正常 (軽度:Child-Pugh分類A) | 0.77 [0.53;1.11] | 0.89 [0.65;1.21] |
中等度/正常 (中等度:Child-Pugh分類B) | 0.87 [0.60;1.25] | 0.80 [0.59;1.09] |
重度/正常 (重度:Child-Pugh分類C) | 0.56 [0.39;0.81] | 0.71 [0.52;0.97] |
16.6.3 高齢者における薬物動態
本剤1mg単回投与後の薬物動態を健康な若年者(21〜45歳:平均年齢33歳)及び高齢者(65〜83歳:平均年齢69歳)で比較した。若年者及び高齢者における本剤の曝露は同程度であった[AUC
0-tの比(高齢者/若年者)と90%信頼区間:0.94[0.84;1.06]]
6)(外国人データ)。[
9.8参照]
若年者及び高齢者における単回投与後の血漿中濃度(平均±SD)
16.7 薬物相互作用
本剤の薬物相互作用の検討には、溶解性及び膜透過性の異なる薬剤を用いた。本剤1.8mg又はプラセボ反復投与後の定常状態において、パラセタモール、アトルバスタチン、グリセオフルビン、リシノプリル及びジゴキシンの単回投与後の薬物動態を比較検討した結果を下表に示す。また、経口避妊薬中のエチニルエストラジオール及びレボノルゲストレルについても同様に検討した結果を表に示す(外国人データ)。
経口薬 | 投与量 | N | AUC0-∞比[90%信頼区間] | Cmax比[90%信頼区間] | tmax差(h)[90%信頼区間] |
パラセタモール | 1.0g | 18 | 1.04[0.97;1.10] | 0.69[0.56;0.85] | 0.25[0.00;1.54] |
アトルバスタチン | 40mg | 42 | 0.95[0.89;1.01] | 0.62[0.53;0.72] | 1.25[1.00;1.50] |
グリセオフルビン | 500mg | 22 | 1.10[1.01;1.19] | 1.37[1.24;1.51] | 0.00[−7.00;2.00] |
リシノプリル | 20mg | 40 | 0.85[0.75;0.97] | 0.73[0.63;0.85] | 2.00[2.00;3.00] |
ジゴキシン | 1mg | 27 | 0.84[0.72;0.98]注 | 0.69[0.60;0.79] | 1.125[0.50;1.25] |
エチニルエストラジオール | 0.03mg | 21 | 1.06[0.99;1.13] | 0.88[0.79;0.97] | 1.50[1.00;2.50] |
レボノルゲストレル | 0.15mg | 14 | 1.18[1.04;1.34] | 0.87[0.75;1.00] | 1.50[0.50;2.00] |
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 単独療法(国内第III相試験)
食事療法又は食事療法に加え経口糖尿病薬単剤投与にて治療中の2型糖尿病患者400例を対象とし、本剤1日0.9mg(268例)又はグリベンクラミド1日1.25〜2.5mg(132例)を52週投与した。本剤は、毎週0.3mgずつ漸増し、0.9mgまで増量した。プライマリーエンドポイントである投与後24週のHbA1cを指標とした血糖コントロールに関して、本剤のグリベンクラミドに対する非劣性が検証された(非劣性マージン:0.4%)。投与後24週のHbA1cが治療目標である6.9%未満を達成した被験者の割合は、本剤投与群で26.9%、グリベンクラミド投与群で10.6%であった。その他の結果は下表のとおりであった
7)。
HbA1c(%)の推移(平均±SD)
項目 | 投与開始前の平均 | 投与群 | 投与後24週 | 群差 (95%信頼区間) |
N | 最小二乗平均 (標準誤差) |
HbA1c(%) | 9.30 | 本剤 | 263 | 7.38(0.07) | −0.51 (−0.72,−0.31) |
グリベンクラミド | 130 | 7.90(0.10) |
FPG(mg/dL) | 202.6 | 本剤 | 261 | 137.2(1.9) | −12.9 (−18.2,−7.5) |
グリベンクラミド | 130 | 150.1(2.5) |
AUCPG,0-3h(h・mg/dL) | 888.63 | 本剤 | 243 | 577.54(9.53) | −93.05 (−119.61,−66.50) |
グリベンクラミド | 119 | 670.60(12.69) |
投与開始前から投与後24週までの体重の変化量は、本剤投与群において−0.92kg、グリベンクラミド投与群において0.99kgであった
7)。
投与後52週までの重大でない低血糖(血糖値<56mg/dL)の発現は、グリベンクラミド群(1.10
注)に比べて、本剤投与群(0.19
注)で低かった(注:被験者1人1年間あたりの低血糖発現件数)
8)。[
11.1.1参照]
17.1.2 スルホニルウレア剤(SU剤)との併用療法(国内第III相試験)
グリベンクラミド、グリクラジド又はグリメピリドにて治療中の2型糖尿病患者264例を対象とし、本剤1日0.6mg(88例)、0.9mg(88例)又はプラセボ(88例)を朝又は夕に、投与中のSU剤と併用して52週投与した。プライマリーエンドポイントである投与後24週のHbA1cを指標とした血糖コントロールに関して、本剤0.9mgとSU剤との併用療法のSU剤単独療法に対する優越性が検証された(p<0.0001)。
本剤0.9mgとSU剤の併用療法とSU剤単独療法との間に有意差が認められたため、本剤0.6mgとSU剤の併用療法とSU剤単独療法との比較を実施し、本剤0.6mgとSU剤との併用療法についてもSU剤単独療法に対する優越性が認められた(p<0.0001)。投与後24週のHbA1cが治療目標である6.9%未満を達成した被験者の割合は、本剤0.6mg+SU併用療法群で23.9%、本剤0.9mg+SU併用療法群で46.6%、SU単独療法群で4.5%であった。その他の結果は下表のとおりであった
9)。
HbA1c(%)の推移(平均±SD)
項目 | 投与開始前の平均 | 投与群 | 投与後24週 | 群差 (95%信頼区間) |
N | 最小二乗平均(標準誤差) |
HbA1c(%) | 8.84 | 本剤0.6mg+SU | 86 | 7.41(0.11) | −1.02 (−1.27,−0.77) |
本剤0.9mg+SU | 87 | 7.14(0.11) | −1.29 (−1.54,−1.04) |
SU剤単独 | 88 | 8.43(0.11) | |
FPG(mg/dL) | 171.1 | 本剤0.6mg+SU | 85 | 132.2(3.5) | −26.4 (−34.5,−18.2) |
本剤0.9mg+SU | 86 | 126.2(3.5) | −32.4 (−40.5,−24.2) |
SU剤単独 | 87 | 158.5(3.5) | |
AUCPG,0-3h(h・mg/dL) | 767.28 | 本剤0.6mg+SU | 83 | 614.58(14.75) | −111.15 (−147.61,−74.68) |
本剤0.9mg+SU | 84 | 575.50(15.01) | −150.22 (−186.32,−114.12) |
SU剤単独 | 71 | 725.72(15.71) | |
投与開始前から投与後24週までの体重の変化量は、本剤0.6mg+SU併用療法群において0.06kg、本剤0.9mg+SU併用療法群において−0.37kg、SU単独療法群において−1.12kgであった
9)。
投与後52週までの重大でない低血糖(血糖値<56mg/dL)の発現において、本剤とSU剤との併用療法群とSU単独療法群との間に差は認められなかった(被験者1人1年間あたりの低血糖発現件数:本剤0.6mg+SU併用療法群1.44、本剤0.9mg+SU併用療法群1.37、SU単独療法群1.29)
10)。[
11.1.1参照]
17.1.3 経口糖尿病薬との併用療法(国内第III相試験)
経口糖尿病薬(速効型インスリン分泌促進剤、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害剤又はチアゾリジン系薬剤)単剤にて治療中の2型糖尿病患者360例を対象とし、前治療の経口糖尿病薬を層別因子として無作為割り付けを行い、本剤1日0.9mg(240例)又は追加の経口糖尿病薬(前治療と異なる機序による薬剤。国内で承認された効能又は効果、用法及び用量に従う)(120例)を、投与中の経口糖尿病薬と併用して52週間投与した。
投与後52週におけるHbA1cの変化量(平均±SD)は、本剤と経口糖尿病薬の併用療法(以下、本剤群)で−1.21±0.90%(ベースライン:8.1±0.8%)、経口糖尿病薬を追加した2剤併用療法(以下、追加経口糖尿病薬群)
注)で、−0.95±0.74%(ベースライン:8.1±0.8%)であった。投与後52週のHbA1cが治療目標である7.0%未満を達成した被験者の割合は、本剤群で64.9%、追加経口糖尿病薬群で45.8%であった
11)。
HbA1c(%)の推移(平均±SD)
注)追加経口糖尿病薬群における追加の経口糖尿病薬の内訳は、DPP-4阻害剤51例、メトホルミン30例、α-グルコシダーゼ阻害剤16例、スルホニルウレア剤14例、チアゾリジン系薬剤5例、速効型インスリン分泌促進剤4例であった。
本剤群における前治療の経口糖尿病薬別のHbA1cの変化量は以下のとおりであった
12)。
HbA1c(%) | N | 投与開始時 | 投与後52週までの変化量 |
速効型インスリン分泌促進剤 | 58 | 8.3(0.8) | −1.18(0.96) |
メトホルミン | 61 | 8.0(0.7) | −1.02(0.97) |
α-グルコシダーゼ阻害剤 | 62 | 7.9(0.8) | −1.23(0.85) |
チアゾリジン系薬剤 | 58 | 8.0(0.8) | −1.41(0.79) |
重大な低血糖は認められず、重大でない低血糖(血糖値<56mg/dL)の発現は少なく、52週間の投与期間中に、本剤群で240例中2例(0.8%)(α-グルコシダーゼ阻害剤併用:1例、チアゾリジン系薬剤併用:1例)に計7件、追加経口糖尿病薬群で120例中2例(1.7%)(速効型インスリン分泌促進剤+メトホルミン併用:1例、チアゾリジン系薬剤+メトホルミン併用:1例)に計2件報告された。重大でない低血糖の被験者1人1年間あたりの発現件数は、本剤群で0.03、追加経口糖尿病薬群で0.02であった
11)。[
11.1.1参照]
17.1.4 インスリン製剤との併用療法(国内第III相試験)
インスリン製剤(Basalインスリン、混合型インスリン又はBasal-Bolus療法)にて治療中の2型糖尿病患者257例を対象とし、前治療のインスリン療法を層別因子として無作為割り付けを行い、本剤0.9mg(127例)又はプラセボ(130例)を1日1回、インスリン製剤と併用して36週間投与した。インスリン投与量は、投与開始後の最初の16週間では固定し、その後の20週間では自己測定による血糖値及び投与量調節ガイダンスに従って調節された。
プライマリーエンドポイントであるHbA1cのベースラインから投与後16週までの変化量に関して、本剤とインスリン(固定用量)の併用療法のインスリン単独療法(固定用量;プラセボ併用)に対する優越性が検証された[群差(本剤とインスリンの併用療法−インスリン単独療法)の推定値:−1.30%[95%信頼区間:−1.47;−1.13]、p<0.0001]。インスリン投与量を調節した期間を含む投与後36週の評価でも、本剤とインスリンの併用療法のインスリン単独療法に対する優越性が確認された[群差(本剤とインスリンの併用療法−インスリン単独療法)の推定値:−0.81%[95%信頼区間:−0.99;−0.63]、p<0.0001]。
投与後16週のHbA1cが治療目標である7.0%未満を達成した被験者の割合は、本剤とインスリンの併用療法で52.8%、インスリン単独療法で3.1%、投与後36週では、本剤とインスリンの併用療法で55.9%、インスリン単独療法で9.3%であった
13)。
HbA1c(%)の推移(平均±SD)
前治療のインスリン療法別のHbA1cの変化量は以下のとおりであった
13)14)。
HbA1c(%) | N | 投与開始時 | 投与後16週 | 投与後36週 |
本剤+インスリン併用 | 127 | 8.8(0.9) | −1.73(0.88) | −1.68(0.92) |
| Basal | 50 | 9.0(0.9) | −1.87(0.65) | −1.61(0.86) |
| 混合型インスリン | 50 | 8.5(1.0) | −1.61(1.08) | −1.81(1.02) |
| Basal-bolus | 27 | 8.9(0.9) | −1.68(0.79) | −1.58(0.82) |
インスリン単独療法(プラセボ併用) | 129 | 8.8(0.9) | −0.43(0.64) | −0.88(0.75) |
| Basal | 50 | 9.0(0.9) | −0.41(0.60) | −0.66(0.81) |
| 混合型インスリン | 51 | 8.8(1.0) | −0.53(0.72) | −1.14(0.67) |
| Basal-bolus | 28 | 8.6(0.8) | −0.31(0.56) | −0.80(0.65) |
重大な低血糖は認められなかった。重大でない低血糖(血糖値<56mg/dL)は、36週間の投与期間中に、本剤とインスリンの併用療法で127例中42例(33.1%)[Basalインスリン:50例中8例(16.0%)、混合型インスリン:50例中21例(42.0%)、Basal-Bolus療法:27例中13例(48.1%)]、インスリン単独療法で130例中36例(27.7%)[Basalインスリン:50例中4例(8.0%)、混合型インスリン:52例中23例(44.2%)、Basal-Bolus療法:28例中9例(32.1%)]で報告された。本剤とインスリンの併用療法で血糖コントロールにおける優越性が確認されたが、重大でない低血糖の発現に、本剤とインスリンの併用療法(1.2
注)及びインスリン単独療法(1.3
注)間で有意差は認められなかった[群比(本剤とインスリンの併用療法/インスリン単独療法)の推定値:0.94[95%信頼区間:0.52;1.70]、注:被験者1人1年間あたりの発現件数]
13)。[
11.1.1参照]
17.1.5 リラグルチド1.8mg/日の有効性及び安全性の検討
(1)単独療法(国内第III相試験)
リラグルチド0.9mg/日による12週間(観察期間)の治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者466例を対象とし、本剤1日0.9mg(233例)又は本剤1日1.8mg(233例)を26週間投与した(主要期間)。本剤1.8mg群ではさらに26週間延長した(延長期間)。無作為割り付け後、本剤1.8mg群では1週間に0.3mgずつ、1.8mgまで漸増した。プライマリーエンドポイントである投与後26週のHbA1cの変化量について、本剤1.8mgの本剤0.9mgに対する優越性が検証された。
HbA1c(%) | N | 無作為割り付け時 | 投与後26週までの変化量 | 群差 (95%信頼区間) |
本剤1.8mg | 233 | 8.14(1.02) | −0.23(0.90) | −0.40 (−0.55;−0.24) |
本剤0.9mg | 233 | 8.10(0.87) | 0.17(0.85) |
26週間の主要期間中、重大な低血糖は認められなかった。重大な又は血糖値確定低血糖
注が本剤0.9mg群で1件報告された[注:重大な低血糖(米国糖尿病学会分類による)又は低血糖症状の有無に関わらず血糖値(血漿)が56mg/dL未満の低血糖]
15)。
(2)経口糖尿病薬との併用療法(国内第III相試験)
経口糖尿病薬(メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジン系薬剤、スルホニルウレア剤、SGLT-2阻害剤又は速効型インスリン分泌促進剤)単剤にて治療中の2型糖尿病患者を対象とし、本剤1日1.8mg(273例)を投与中の経口糖尿病薬と併用して52週間投与した。
併用した経口糖尿病薬別の投与後52週におけるHbA1cの変化量は、以下のとおりであった。
HbA1c(%) | N | 投与開始時 | 投与後52週までの変化量 |
メトホルミン | 47 | 8.30(0.90) | −2.09(0.98) |
α-グルコシダーゼ阻害剤 | 41 | 8.30(1.05) | −1.90(1.09) |
チアゾリジン系薬剤 | 42 | 8.15(0.94) | −1.84(0.80) |
スルホニルウレア剤 | 42 | 8.44(1.08) | −1.56(0.93) |
SGLT-2阻害剤 | 61 | 8.33(0.91) | −1.74(0.89) |
速効型インスリン分泌促進剤 | 40 | 8.38(1.11) | −1.67(0.76) |
重大な低血糖は認められなかった。重大な又は血糖値確定低血糖
注が6例(スルホニルウレア剤併用:4例、チアゾリジン系薬剤併用:1例、速効型インスリン分泌促進剤併用:1例)に計13件報告された
16)[注:重大な低血糖(米国糖尿病学会分類による)又は低血糖症状の有無に関わらず血糖値(血漿)が56mg/dL未満の低血糖]。[
11.1.1参照]
使用開始後は、キャップ等により遮光して室温に保管し、30日以内に使用すること。