#SHIFT

くら寿司が年収1000万を出しても幹部候補生を採りたい理由リスクを背負える人が欲しい

» 2019年06月05日 13時00分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 幹部候補生を年収1000万円で募集します――くら寿司が公開した「エグゼクティブ新卒採用」の募集条件が話題になっている。この取り組みで同社は、2020年春入社の新卒採用において、26歳以下でTOEIC800以上、簿記3級以上を持つ人材を10人ほど採用する計画という。

photo

 新卒採用で高度なITスキルを持つ人材などに高年収を提示する例は増えているが、飲食店では珍しい取り組みだ。しかし、社員の平均年収(450〜500万)の2倍近い金額を払ってまで、業務経験のない新卒を採用する理由はどこにあるのか。

 エヌピーディー・ジャパンCRESTの調査によると、国内における回転寿司の市場規模は、15年に6000億円の大台に乗り、18年には6756億円に到達。各社が勝ち残りに向けしのぎを削る中、くら寿司が力を入れているのが海外展開だ。

photo 回転寿司の市場規模推移(=エヌピーディー・ジャパンCREST調べ)

 くら寿司の広報担当者は「海外事業を2本目の大きな柱に育てようとしているが、海外展開を積極的に行うための人材が足りていない」と話す。何年も中途採用で経営の中核を担う人材を募集してきたが、人材不足は続いており、「若い人の中にもそういう人材がいるのではないか」と新たに新卒採用も行うことにしたという。

 1000万は思い切った金額だが、広報担当者は「学生にとってもハイリスクハイリターンな取り組みだ」と説明する。幹部候補となった学生は年俸制での雇用となり、実績ベースで1年ごとに年収を見直す計画だ。期待に見合った成果を出せなければ、2年目以降は年収が下がる可能性もある。「成果によって年収が下がるのが嫌な人は要らない。ハイリスクだと分かった上で、年収に見合う結果を出す意欲のある人材を求めている」(広報担当者)

photo エグゼクティブ新卒採用の募集条件

 エグゼクティブ新卒採用で採用した学生は、経営理念や店舗業務などを学ぶための研修を2年間受けた後、1年程度の海外研修を経て配属となる。広報担当者は「ハードルの高い要求になるが、さまざまな部署の仕事を把握するだけでなく、どんな課題があり、どう解決すべきかを見つけてもらいたい」としている。

 募集開始から続々と学生のエントリーが集まる他、社内でも同様に幹部候補の公募を開始している。「結果を出そうという意欲のある“ギラギラした人”が欲しい。どんな人が応募してくれるか楽しみにしている」(広報担当者)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.