大阪府立大学を卒業し、第一線でご活躍されている先輩方のお話を聞くことができる校友懇話会。

今回は、株式会社海遊館 二フレル事業部の棚田麻美さんが講師として登壇されました。
生命環境科学部(現:生命環境科学域)卒の棚田さんが二フレルでキュレーターとしてご活躍されるまでに至った経緯や、二フレルの魅力についてご講演いただきました!

◆プロフィール
棚田麻美さん
2010年 大阪府立大学生命環境科学部生命機能化学科 卒業
同年        株式会社海遊館 入社


■なぜこの仕事に就いたのか

物心ついたときから動物園の獣医さんになることが私の夢でした。
獣医学部を目指して大学受験をしましたが、2年間浪人し3回チャレンジしたものの挫折。
獣医になることだけを考えて突き進んでいたのでいまさら何をすればいいのかわからず、せめて獣医学科の雰囲気を味わいたいと考え、獣医学科の授業を受けることができる大阪府立大学 生命環境科学部 生命機能化学科に入学しました。

大学2年生のとき、私の人生を変える出来事が起こります。
大学が設置するアルバイト募集の掲示板に、天王寺動物園のアルバイト募集を発見。
頭に血が上っているのが自分でわかるほど興奮しました。

すぐに、面接を受けに行き無事合格。私は晴れて動物園で働くことができるようになりました。仕事は、えさ売り場でえさを売る仕事。働いていると、飼育員の方に声をかけていただくようになり、獣医として動物園で働きたかったことなどを話していると、獣医でなくとも飼育員として動物園に関わることができるという、今から考えると当たり前のことを教えていただきました。

その時から獣医に代わる新たな目標として、飼育員になるために勉強をする生活が始まりました。

とは言うものの、飼育員というものはただでさえ定員が少ない上に、この職に適した野生動物が学べる大学や飼育員専門学校などで学んでいるライバルと競わなければなりません。

残念ながら学部時代の就職活動では飼育員になることができず、飼育員とは異なる就職先も視野に入れて大学院へ進学。

飼育員の夢をあきらめかけていたそんなとき、海遊館で3年間の契約社員の応募があることを発見しました!
そして、当時所属していた研究室の先生にも内緒で面接を受けに行き、内定をいただくことができました。

契約の3年が切れた後はどうするの?という周りからの声もありましたが、大学院をやめて海遊館(当時大阪ウォーターフロント開発株式会社)に入社しました。
夢にまで見た飼育員の生活がスタート。入社当時は海獣類(アシカ、アザラシ、イルカ、ラッコ)を担当していました。

飼育員としての働きが認められ入社2年目には正社員に。さらに、「二フレル」プロジェクトに企画段階から加わることができ、2015年のオープンとともに二フレルに移りました。

■二フレルとは

このプロジェクトは海遊館として、チャレンジングなものでした。
大前提として会社から受けた指令は、大水槽は作らない。海獣類の展示はしない。これまでにない水族館を作りなさい。というものでした。

そもそも水族館とは何なのか…。

日本にある水族館・動物園は小さいものを含めると200ほどもあり、人口当たりで世界一水族館が多い国となっています。

そんな中これまでに無い水族館を作らなければなりませんでした。

私たちが目指したのは、既成概念を打ち砕く水族館。

「感性にふれる」をコンセプトに掲げて生物の多様性に触れられる水族館を目標にしました。
二フレルは、「いろにふれる」「わざにふれる」「すがたにふれる」「みずべにふれる」「うごきにふれる」の動物を展示する5つのエリアと映像を中心とする2つのエリア、計7つのエリアで構成されており、中にはホワイトタイガーやワオキツネザル、カピパラ、ミニカバなど動物園にいるような生き物がいるエリアや、生き物がまったくいない美術館のようなエリアもあります。このように一般の水族館の枠にはまらない、水族館+動物園+美術館のような場所がニフレルであり、私たちは「進化するミュージアム」と名乗っています。

 

感性に触れるための様々なニフレルのこだわりを紹介します。

まず1つ目は、従来のように大型、あるいは窓枠タイプのものでは無く、それぞれが独立、そして360度すべての角度から生き物を見ることができる水槽。しかもこの水槽には蓋がありません。各水槽がフロアに独立して置かれているので、えさをやったり、掃除をするなど、飼育員が何をしてもお客様との会話が生まれるようになっています。


この「コミュニケーションが生まれる環境」が、2つ目のこだわりです。
一般の水族館では、飼育員とお客様が関わる機会はそう多くありません。
これに対してニフレルでは、飼育員をキュレーターと呼び、「お客様と生き物の架け橋」であると定義付けています。

キュレーターはニフレルでは展示物の一つ。お客様とお話しすることが大前提、これも仕事の一つとなっています。お客様との会話を生むために説明パネルを、生きものの魅力の本質に迫った五・七・五の十七文字に留め、伝わらない部分をキュレーターが伝えるということも始めました。この五・七・五での説明文「生きもの五七五」はキュレーターが考え、プレバトなどのテレビ番組でおなじみの俳人 夏井いつき先生に添削していただいています。また、館長の「ニフレルを文化発信の場にもしたい」との思いから、「生きもの五七五」をお客様に考えていただくイベントも、時々おこなっています。

 

そして最後、3つ目のこだわりは、変化をする展示。

ニフレルは「いつ来ても(おなじものが)見られる」ではなく、「いつ来ても違う」を目指しています。
例えば、オープン当初はオオテンジクザメがいた水槽は、現在テッポウウオの水槽になっています。テッポウウオには実際に、マングローブに見立てた棒の間を歩く虫を打ち落としてもらっています。なお、オオテンジクザメは、海遊館に戻ってもらいました。

このように、ニフレルの展示は、短期間で変わる、「生きているミュージアム」を体現しています。

■水族館の存在意義

皆様は水族館の存在意義は何だとお考えでしょうか。

動物園水族館協会では動物園水族館での存在意義を、
・レクレーション
・教育
・自然保護
・調査研究
の4つと定義づけています。

自然保護と調査研究というと水族館からは離れた領域のように聞こえますが、例えば、ニフレルではパオスバティという淡水フグを、日本で始めて繁殖させることに成功し、その結果を学会で研究発表もしています。

このパオスバティは東南アジアに生息しているのですが、詳しく研究している人がほとんどいません。レッドリストに載せるか否かもわかっておらず、私たちが調査研究することで種の保存や、自然保護にも一役かっていると考えています。

また、ニフレルに住んでいる生きものたちにストレスを与えないため、心理学の観点からの工夫もなされています。ストレスを感じていないか、気持ちよく過ごせているか、細心の注意を払っています。
動物園・水族館にいる生き物は、どうしても自然界にいる生き物よりも狭い世界で生活しています。そんな彼らの生活に張り合いを持たせるための考え方のひとつに、環境エンリッチメントというものがあります。

環境エンリッチメントとは、生き物に様々な選択肢を与えることです。例えば、採食エンリッチメントと言うことで、同じ食べ物だけを与え続けるのではなく、いろんな種類の食べ物を、そしてマンネリにならないよう異なった方法で与えています。

このような工夫で選択肢を増やすことによって、生き物の生活の質(QOL)をあげています。

 

■今後の目標

私の今後の目標は大きく3点あります。

まずは、私の担当する生き物について、海外の学会で発表することです。
私はまだその場には立てていませんが、海遊館としては麻酔なしで採血やエコーが取れるハズバンダリートレーニングについてなど、海外での発表の実績があります。

ニつ目は、日本発の水族館栄養士になること。
海外では動物園などに専属の栄養士が居るのは当たり前ですが、日本では飼育員の仕事の中に含まれています。
府大で学んだことを生かして、水族館栄養士を名乗ることができるように勉強しています。

最後に、水族館や動物園とは、生き物を見て、生き物のことを伝えて、生き物を好きになってもらう場所と思っています。と言うことで、命について真剣に考える場所を作って、命について真剣に考えられる世の中にしたいと考えています。


【学生の感想:知識情報システム学類 MICHITAKERs 崎山琴音】

二フレルの由来ともなった「感性にふれる」という言葉。
これには、大人になっていくと知らないうちに忘れていってしまう感性を思い起こし、子供にとって機会が少なく、感じることのできない感性を育む、というコンセプトがあることをお話されていました。
それは私の中で、今まで考えていた、生き物を知り・触れ合う場所という、水族館のイメージとは全く異なる新しいものでした。
人と生き物をつなぐ架け橋となるべく、日々変化している二フレル。そして、好きなことを追い求め、自分の決めた道を進み続けている棚田さんの姿が、とても生き生きと感じられました。

 

社会でご活躍されている先輩方のお話を直接聞くことができる校友懇話会。なんと校友会会員の学生は参加費無料(人数が多ければ割引)で参加することもできます。校友懇話会開催前には、中百舌鳥門横の校友会掲示板にポスターが出ているので、機会があれば参加してみてはいかがでしょうか!

 

◆リンク

過去の校友懇話会はこちらを参照

棚田さんは校友会主催の「夢こもんず」にもご登壇されています。
棚田さんがどのようにして夢を実現されたのか詳しく取材しています。ぜひこちらの記事もご一読ください。

夢こもんずレポート「生き物を愛し、生命を尊ぶ子どもを増やしたい!」 生命環境OG 棚田麻美さん(ニフレル)|MICHITAKE

MICHITAKERsが二フレルへ取材に行った記事はこちら

開館前のニフレルにMICHITAKERsと獣医学類生が潜入!

 

【取材日:2018年2月14日】
【取材:崎山琴音 MICHITAKERs 現代システム科学域 知識情報学類1年、右大輝 マネジメント学類4年】
※所属は取材当時。