水虫対策

水虫(白癬)は、真菌(カビ)の一種である「白癬菌」に感染して起こります。 白癬菌は、床やバスマット、スリッパなどさまざまなところに存在しています。 そのため、日常生活の中で白癬菌が足などに付着することは避けられず、水虫は誰にでも起こる可能性のある身近な病気です。 水虫は、常にかゆみを伴うものと思われがちですが、水虫のある人のうち、かゆみがあるのは半数程度とされています。 そのため、水虫があることに気付かず、放置している人が少なくありません。 糖尿病のある人が水虫をそのままにしていると、足の組織が壊死してしまう壊疽を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。 多いのが、白癬菌が足に感染する「足白癬」や、足の爪に感染する「爪白癬」です。


●足白癬

足白癬は、日本人全体の約2割、特に50~60歳代の男性では約3割に起こり、次のような症状が現れます。

▼足の指の間が白くなる
初期には、足の指の間の角質が剥けてきます。進行すると、皮膚がふやけて白くなったり、赤く剥けたりして、かゆみが出ることがあります。

▼足の裏に水泡ができる
足の裏に小さな水疱(小水疱)ができ、かゆみが出ることがあります。

▼足の裏やかかとがガサガサになる
足の裏やかかとの皮膚が、厚く硬くガサガサになり、むしろ痛みが出ることもあります。

●爪白癬

足白癬をそのままにしていると、白癬菌が爪に感染して、爪白癬を起こすことがあります。 爪白癬は、国内で約10%の人が発症していると考えられ、加齢とともに増加し、特に高齢の男性に多く見られます。 爪白癬に進行すると、爪が白色から黄色に濁って厚くなり、やがて爪の中がボロボロになってしまいます。 重症化すると、自分では切れなくなるほど爪が分厚くなり、靴を履くと爪が靴に当たって痛むようになります。 そのため、体のバランスがとりにくくなり、転倒から骨折に至ることも少なくありません。


■水虫は皮膚の感染症

▼水虫の原因、白癬菌の正体は?
水虫は、カビ(真菌)の一種である「白癬菌」が、皮膚の角質層に入り込むことで起こる皮膚の感染症です。 白癬菌は角質や爪に含まれるケラチンというたんぱく質を栄養源としています。 特に足の裏の角質は体のほかの部分に比べて厚く、白癬菌の栄養源が豊富であるため、水虫は足に起こりやすいのです。 また、水虫を何年も放置して、白癬菌が爪の中に入り込むと、爪の水虫(爪白癬)になります。 白癬菌は角質が新陳代謝で剥がれた”垢(あか)”の中にも生息しているため、これが新たな感染源になります。 垢の中の白癬菌は、半年以上も生き続けるといわれます。

▼高齢者には水虫のある人が多い
白癬菌はどこにでもいる菌ですから、誰にでも感染する可能性があり、日本人の10人に1人は水虫があると考えられます。 水虫のある人は、中高年になるほど多くなります。これは、年齢とともに白癬菌と接触する確率が高くなり、 感染すると自然に治ることはまずないこと、また、高齢になると手足の手入れがおろそかになりやすいことなどが関係していると考えられます。 実際、高齢者施設では、入居者の8~9割に水虫があったという報告もあります。

▼糖尿病のある人は水虫に注意
糖尿病があると、感染に対する抵抗力が弱くなります。 また、角質に含まれる糖分が多い、つまり角質の栄養価が高いので、白癬菌が繁殖しやすくなります。 そのため、糖尿病のある人は水虫になりやすく、なると悪化し壊疽を引き起こすこともあるので、十分な注意が必要です。

■正しい診断を受けることが完治への第一歩!

水虫が疑われる場合には、早めに皮膚科を受診することが勧められます。 検査では、症状が出ている足の皮膚から角質を採取して、顕微鏡で白癬菌がいるかどうか調べ、水虫と似た症状を示す他の病気(下記参照)と鑑別します。

▼水虫のある人の半数以上はかゆくない
「水虫=かゆい」と考える人は多いのですが、実は水虫のある人の半数以上はかゆみなどの自覚症状はありません。 そのため、水虫があるのに気づいていない人もたくさんいるのです。 逆に、かゆみや水疱などの症状から水虫を疑って皮膚科を受診した人の約1/3は水虫ではなく、 湿疹やかぶれなどほかの皮膚の病気ということがあります。 つまり、水虫は症状だけで自己判断できません。

▼気になる症状があれば皮膚科へ
足に「かゆい、むずむずする、皮がむける、ざらざらする」などの症状がある場合、また爪に「白く、または黄色っぽく濁った部分がある、 厚くなる、ボロボロになる」などの変化が生じた場合は、何らかのトラブルが起きている証拠です。 普段から足の状態をよく観察し、気になる症状があれば、皮膚科を受診しましょう。

▼水虫の診断には「顕微鏡検査」が必要
皮膚科の専門医でも、見た目で水虫かどうかを診断するのは難しいものです。 診断のためには、医師が皮膚や爪の一部を削り取り、顕微鏡で白癬菌の存在を確認する「顕微鏡検査」が必要です。 顕微鏡検査は受診したときに数分で行える簡単な検査ですが、最近は、皮膚科でも顕微鏡検査を行うのは半数程度に減ってきているといわれます。 正確な診断のためには、顕微鏡検査を行っている皮膚科を選んで受診することをお勧めします。

◆水虫と似た症状を示す皮膚の病気

水虫を疑って皮膚科を受診した人のうち、約1/3からは白癬菌が見つかりませんでした。 その場合は、次のような皮膚の病気の可能性があり、治療法が異なります。

▼汗疱
痒みを伴う水疱が、手足の指や、手のひら、足の裏などに繰り返しできます。

▼多汗症
手のひら、足の裏に過剰に汗をかき、角質が白く浮き上がって、剥けてきます。

▼接触皮膚炎
特定の物質の刺激やアレルギー反応でかぶれ、かゆみが出ます。水虫の薬が原因で起こることもあります。

▼掌蹠膿疱症
膿が溜まった小さな「膿疱」が手のひら、足の裏に数多くでき、よくなったり悪化したりを繰り返します。 膿疱の出始めにかゆみがあります。

▼乾癬・掌蹠角化症
手のひら、足の裏が赤くなります。角質が分厚くなり、時にひび割れが起こります。

■水虫の治療

新陳代謝の仕組みを理解して”治し切る”
焦らず根気よく治療する


●足白癬の場合

足白癬の治療は、「抗真菌薬の塗り薬」を1日1回塗るのが基本です。 塗り薬を使うタイミングは、角質層が柔らかくなって塗り薬が浸透しやすい入浴後や、足をきれいに拭いて清潔にした後がよいでしょう。 塗り薬は、最低でも4週間以上、再発を防ぐためには、2~3ヵ月間は使い続けることが必要です。 症状がなくなっても、白癬菌が残っている可能性があるので、自己判断で薬を塗るのをやめてしまわないようにしましょう。


●爪白癬の場合

爪白癬の治療では、「抗真菌薬の飲み薬」を3~6ヵ月程度服用するのが効果的です。 抗真菌薬の飲み薬では、 肝機能障害貧血などの副作用が起こることがあるため、 まず血液検査を行って、飲み薬が使えるかどうかを調べます。飲み薬を使えない場合などには、抗真菌薬の塗り薬を使用します。 また、抗真菌薬の飲み薬との「飲み合わせ」によっては、併用できない薬もあるため、持病などで服用している薬がある場合は、必ず医師に伝えてください。 爪白癬があって自分では爪が切れない場合は、皮膚科で切ってもらうとよいでしょう。 爪白癬によって歩行に支障を来している場合、爪を切ることで歩けるようになることもあります。


●その他

▼治療の中止が再発の原因
高温多湿になる夏場は、白癬菌の活動が活発になるので、かゆみなどの症状が現れやすくなります。 皮膚科で処方された塗り薬などを使うと、多くの場合、1~2週間ほどで改善し、見た目もきれいになるので、 「これで治った」と思って治療をやめてしまう人が少なくありません。 しかし、この段階では角質層のほうにいる白癬菌は、まだ生き残っています。

▼薬の塗り方
塗り薬の場合、白癬菌は足の裏のどこに潜んでいるかわからないので、症状のある部分だけでなく、足の裏全体、 また、足の指と指の間にもむらなく塗るのがポイントです。

▼症状がよくなった後も3ヵ月間は治療を続ける
水虫を完治するには、角質層の奥に潜んでいる白癬菌をすべて退治しなくてはなりません。 足の裏の角質は厚いので、新陳代謝(ターンオーバー)が遅く、新しい角質に生まれ変わるのに3ヵ月ほどかかります。 症状がよくなった後も、少なくとも3ヵ月間は薬を塗り続けることが必要です。 足の爪、特に親指の爪の場合は、新しく生え変わるまでに1年~1年半ほどかかるので、爪白癬ではさらに長期間の治療が必要です。 完治したかどうかは自己判断ではなく、皮膚科医に確認してもらいましょう。

■角質に入り込ませない感染対策

白癬菌はどこにでもいる菌なので、油断していると感染・再感染する恐れがあります。 感染・再感染を防ぐためには、普段から白癬菌は足につくものと考えて、角質層に入り込ませないための対策を取ることが大切です。

▼対策①1日1回は足を丁寧に洗う
足に着いた白癬菌が角質層に入り込むのには、約12~24時間かかるといわれます。 白癬菌は乾いたタオルで拭き取ったり、足を洗うことで簡単に取り除けます。 また、1日1回は足を石鹸で丁寧に洗い、白癬菌をきれいに取り除きましょう。 角質に傷ができると白癬菌が入り込みやすくなるので、ナイロンタオルなどでゴシゴシこすったり、軽石などで角質を削ったりせず、 手を使って優しく洗いましょう。洗った後は水気を十分に拭きとり、しっかり乾燥させます。

▼対策②足の裏を健康に保つ
健康な足の裏は柔らかく、ツルツルしています。足の裏が硬く、カサカサするのは、皮膚の乾燥によって、角質の表面が捲れているからです。 捲れた角質の隙間からは、白癬菌が入り込みやすくなります。洗った後は保湿をして、角質のキメを整えておきましょう。 また、足の裏の角質が厚くなると、それだけ白癬菌の住処が広がることになるので、角質を厚くしないことも水虫予防のポイントです。 角質は外から物理的な刺激を受けると、防御反応で厚くなる性質があります。 靴はクッション性があって歩きやすいものを選ぶようにしましょう。

▼対策③通気性のよい靴や靴下を履く
白癬菌は湿度が70%以上になると、活発に活動を始めます。靴の中は湿度が高くなりやすいので、できるだけ履く時間を短くしたり、 必要な時以外はサンダルなどの通気性のよい靴に履き替えたりするとよいでしょう。

▼対策④感染を防ぐ
足白癬のある人と一緒に生活していると、健康な人の足にも白癬菌が付いてしまうことは避けられません。 そのため、足白癬を予防するためには、家庭内での予防が最も重要とされていますが、 「スリッパを別にする」「お風呂のマットを分ける」「足拭きマットは毎日洗う」「素足で触れる場所はこまめに掃除する」などを心がけましょう。 また、銭湯やプールなど、人が多く集まる場所で素足になった場合は、靴下を履く前に、白癬菌を落とすためにタオルで足の裏や指の間を拭くだけでも、 感染の予防になります。