秋になると色々なイベントが増えてきます。そうなると我々ギズモードも忙しくなります。
かくいう僕(三浦)は、イベントでは主にコンパニオン撮影部隊(隊員一人)として活動をしております。初登板が2006年の東京ゲームショーでしたから、かれこれ3年くらいやってますね。
でも、人物撮影が得意というわけではないんです。ただ写真撮るのが好きだったから引き受けたんですが、これが難しいのなんのって。最初は失敗しまして。その様子はこちらでご覧になれます。写真が小さいのは、大きくできないほどひどい有様だったからですよ...。せっかくきれいなコンパニオンなのに、低レベルな撮影じゃ意味がない!
しかし、勉強しようと思っても、イベント会場でのコンパニオン撮影のノウハウって、あんまり紹介されていないんですよね。「イベントにおけるコンパニオンの撮り方」みたいな本があればいいんですが、さすがにないんですよ。
そこで僕は、この3年間一人でこつこつといろいろ試してきました。その結果、なんとかまともな写真が撮れるようになりました。そこで今回は、現在僕がどのようにコンパニオンを撮影しているのかをご紹介したいと思います。みなさんのお役に立つかどうかは謎ですが、「ああ、ギズモードのコンパニオン写真は、こんな風に撮ってるんだな」と思っていただければ幸いです。
もし、これから僕が紹介する方法を実践するのなら、あくまで自己責任で。そして、自分なりにいろいろアレンジして、あなただけのコンパニオン撮影術を築き上げてください。
長くなるので、お時間のあるときにでも読んでいただければ幸いです。
【準備編】まずは準備するものです。僕はデジタル一眼レフ本体のほかに、以下の4点を使います。
●外付けストロボなるべく大光量のものを。ガイドナンバー(GN)が30以上あれば問題ないでしょう。あまりストロボの扱いに慣れていない人は、お使いのカメラメーカー純正のものがオススメ。サードーパーティのものでも、お使いのカメラで自動調光(TTL)に対応しているものであればOK。普段使っている外付けストロボがあればそれを使いましょう。
●ブラケットカメラの横などにストロボをセットするための道具。ストレートタイプや高さが移動できるタイプなどいろいろありますが、とりあえず何でもOKです。できれば頑丈そうなのがいいですね。
●オフフラッシュケーブルカメラ本体とストロボを離して使う場合に必要なケーブルです。ブラケットでカメラの横にストロボをセットするので必須です。これもお使いのカメラメーカー純正のものを用意しましょう。
●ディフューザーストロボの発光面に取り付けて、ストロボの光を拡散するためのものです。これにより、直接ストロボを当てたときに比べ、ストロボ光が柔らかくなり、てかりやきつい影を緩和できます。これはいろいろ種類があるんですが、なるべく拡散面積の大きなものがベスト。
ストロボにキャップのようにはめる乳白色のディフューザーがありますが、これはあまり効果がありません。
この手のタイプは、ストロボを天井に向けて使うことを前提にして、天井を利用した拡散効果を狙っています。しかし、イベント会場は天井が高い場所が多いため、ほとんど効果がありません。
すべてセットした状態が上の写真です。かなりごつくなりますが、僕の使っているストロボは小さめなので、まだましかな。
コンパニオン撮影時は縦位置が多くなるので、縦位置の写真も。もちろんストロボは必ずレンズの上に来るようにします。レンズとストロボが縦の直線上に並ぶようにすると、いやな影が目立ちにくくなります。また、ディフューザーが縦長の形状のほうが、影は目立ちません。
これでとりあえずの準備はOKです。
最近は高感度に強くてISO3200とかで余裕できれいな写真が撮れるデジタル一眼レフもあるんですけど、僕はあくまでもストロボにこだわっています(高感度に強いデジタル一眼レフが買えないだけじゃないかというつっこみはナシで...)。
【レンズ編】【カメラのセッティング編】お次はレンズです。僕は標準ズームレンズを使用しています。できれば広角(35mm換算24~28mm)をカバーしている方がいいですね。
よくポートレート撮影で、望遠レンズで撮影することがあります。望遠レンズで撮影すると背景がぼけて、人物が浮き上がったような効果が出しやすくなります。
しかし、イベント会場は戦場です。そんな悠長な撮影はしていられません。望遠レンズで撮影するということは、コンパニオンから遠ざかって撮影することになります。すると、自分とコンパニオンの間の空間を、人がバンバン通ります。これじゃあいつまでたっても撮影できませんので、標準レンズで距離を詰めて撮影するのがベターです。広角があったほうがいいというのは、状況によっては後ろにひけない場合もあるためです。広角で人物撮影をするとゆがんでしまいがちですが、その場合はちょっと下からあおるなど、アングルを変えることで対処します。
単焦点レンズの方が描写がいいんですけど、イベント会場は戦場なので(大事なことなので2回言ってみた)、レンズ交換なんかしている余裕はありません。ズームレンズでいきます。望遠も欲しい場合は、もう1台カメラを用意した方がいいでしょう。
ちなみに僕の場合。以前はキヤノン EOS 30D+EF 17-40mm F4L、今はオリンパス E-3+ZD 12-60mm F2.8-4というのが基本です。
【ピント編】ストロボ撮影で一番頭を悩ますのが、カメラの設定をどうするかでしょう。僕もいろいろ試しましたが、ストロボがメーカー純正のものであれば、カメラにおまかせの「P」モードで十分です。細かいことはカメラに任せて、撮影に集中できます。ただし、ストロボが強すぎたり弱すぎたりした場合は、その都度ストロボの調光補正をしましょう。
ISO感度は画質を考えると低感度(ISO100~200)でいきたいところです。しかし、低感度でストロボをばしばし使っていると電池がすぐに消耗されてしまいます。画質との兼ね合いもありますが、通常よりも1段~2段アップ(ISO200~400、機種によっては800)で撮影をすれば、ストロボの電池が長持ちします。また、シャッタースピードを速くすることができるので、手ぶれを軽減する効果もあります(Pモードで撮影している場合)。
【画質編】コンパニオン撮影に限らず、人物写真の場合、ピントは目に合わせます(全身の場合は顔全体でOK)。カメラのAFを使用する場合は、AFポイントを随時変更して目に来るようにして撮影しましょう。ただし、中央以外のAFポイントが信用できないという場合は、AFポイントを中央1点にして、目にピントを合わせてから構図を変える「AFロック」を使いましょう。
マニュアルでピントを合わせた方がしっかりと目を狙えますが、イベント会場は思っている以上に暗いので、マニュアルフォーカスはあまり実用的ではありません。AFでスパスパ撮影する方が効率的です。
●マニュアルでピントを合わせた場合薄暗がりでマニュアルでピントを合わせた結果、顔には全然ピントが来ていない上、ストロボの光量が低く手ぶれまでしているというかなりひどいカット。
●AF(オートフォーカス)でピントを合わせた場合でも、AFで目にちゃんとピントを合わせつつ、ストロボの調光補正をして撮影をすれば、このようになります。ややあごの下の影が気になりますが、イベント撮影ではこの辺は妥協しましょう。
デジタルカメラの場合は、撮影の際に画質を選択できます。僕はほぼRAWで撮影しています。【コミュニケーション編】RAWならば、露出などにそれほど神経質にならずに撮影に集中できるからです。かといって、現像時にすごい手を加えるかというと、そういうことはありません。修正をしても露出は±0.5くらいの範囲です。あとはホワイトバランスを変更するくらいですかね。いくらRAWとはいえ、現像時の大幅なパラメータ変更は画質が劣化してしまいますので、最小限にとどめています。
おそらく、一般の方でもこれまでのノウハウは実践できると思います。それほど難しいことありませんからね。あとは、実際に現場に行って撮影をすればいいんですが、一番重要ともいえるのが、コンパニオンとのコミュニケーションです。
よく会場で見かけるのが、他人が撮影している隣や後ろから便乗して撮影している人です。まあ、それでも写真は撮れるんですが、カメラ目線じゃなかったりするので、あまりおもしろくないですよね。できればカメラ目線で「俺だけの」写真が欲しいですよね。
一方、声をかけるのがなんとなく恥ずかしいという気持ちもわかります。
でも、大丈夫ですよ。コンパニオンは「写真を撮られるために」そこに立っています。なので、撮影前に「お願いします」と声を掛ければ、カメラに向かって目線をくれたりポーズを付けてくれたりします。そこで、2~3カット撮影して「どうもありがとうございました」と軽くお礼を言うだけ。
たったこれだけのコミュニケーションでいいんです。別に「きれいだね~」とか「いいよいいよ~、その角度!」とかシャッターを切るごとに「よし! よし! 今日のディナーはうなぎに決まりだ!」なんていう必要はないんですよ。
ほら、一声かければこの通り。目線をくれますよ。
最初は恥ずかしいかもしれませんが、慣れればなんてことはありません。近所の顔見知りの人に「おはようございます」と言っているのと同じです。僕の場合、午前中は元気よく挨拶して写真撮ってます。でも、終わり近くになると結構疲れてくるので、会釈だけってこともしばしば。それでも、挨拶しないよりかは幾分ましです。
なお、必要以上に長居するのはマナー違反です。コンパニオンにもほかの撮影したい人にも迷惑がかかりますので、やめましょうね。
とまあ、普段はこんな感じで撮影してるんです。
以上、長くなりましたが、僕のコンパニオン撮影方法のご紹介でした。
この秋もいろいろイベントがありますので、いっぱいコンパニオンを撮影する予定です。普段きれいなお姉さんを撮影する機会なんてないですから、みなさんもイベント会場で思う存分撮影してみるのもいいんじゃないですかね。
もし、会場であったら気軽に声かけてください。それで、いろいろと撮影についての情報交換ができればうれしい限りです。
(三浦一紀)