現代音楽と聞くと大抵の人は、やれ難解だの、頭が痛いだのと拒否反応を示しがちだが、この世界にも行き過ぎた前衛を批判し、メロディアスな曲を作る作曲家がいる。その中で最もよく知られているのが、吉松隆であろう。
吉松の楽曲は、メロディの美しさに特色がある。もちろん現代音楽家であるから前衛的な技法も用いるが、そんなことは微塵も感じさせない力が、吉松の曲にはある。中でも、プレイアデス舞曲や本作のような現代邦楽作品に、吉松の叙情性を強く感じることができる。
このCDには吉松が作曲した4つの現代邦楽曲が収められている。「夢あわせ夢たがえ」の幻想的な雰囲気、「すばるの七ツ」に垣間見れる愛嬌、再録で一層の余裕を聞かせる「もゆらの五ツ」の叙情性、そして「なばりの三ツ」のそこはかとない哀愁。日本人好みのメロディが印象的な楽曲の数々は、聞く者を感動させてくれること請け合いである。
演奏者は、20絃筝のパイオニア吉村七重。現代邦楽界のトップ・リーダーということもあり、演奏はなかなかのものである。
評価/100点中65点