EUなどイスラエル非難 欧米や中東で抗議デモ
ガザ支援船襲撃
【カイロ=安部健太郎】パレスチナ自治区ガザへ向かっていた国際支援船団をイスラエル軍が31日に急襲し、少なくとも9人が死亡したことを受け、各国政府や国際機関でイスラエルを非難する声明や抗議デモなどが広がっている。国連安全保障理事会に続き、北大西洋条約機構(NATO)やアラブ連盟も1日に緊急会合を開き対応を協議する。
イスラエル軍が急襲・拿捕(だほ)した支援船は31日夜までに同国中部のアシュドッド港に横付けされ、乗船していた親パレスチナの活動家のうち少なくとも32人が当局に拘束された。船内は捜索を受けている。イスラエル軍当局者は同日、乗船者の死者は9人と発表した。当初は10人と説明していた。
欧州連合(EU)に加えアフリカ連合(AU)も急襲は「国際規範の重大な侵害」などとし、イスラエルを非難する声明を出した。急襲で自国民の犠牲者が出たトルコに加え米国、ギリシャ、フランス、英国、スウェーデン、エジプト、ヨルダンなど欧米や中東ではイスラエルに対する抗議デモが起きた。
安保理の緊急会合では「(2009年1月採択の)安保理決議1860に沿って、ガザ地区に支援物資や支援員が自由に入れるようイスラエルに要請する」(英国)、「イスラエルの安全保障問題は襲撃を正当化しない」(オーストリア)など批判が相次いだ。
国連の潘基文(バン・キムン)事務総長も声明で、「暴力行為を非難する。イスラエルは早急に十分な説明をしなくてはならない」と述べた。
一方、イスラエルは急襲の正当性を主張。米国も支援物資運搬にはイスラエルの許可を得ることが通例として「海上からの直接輸送は適当ではなかった」と述べ、同調する姿勢を見せた。
死者が出たのはトルコ国旗を掲げた支援船団最大の船。イスラエル軍特殊部隊員がヘリコプターから降下して船に乗り込んだ後、パイプなどを手にした活動家らと衝突が起きた。作戦に参加したある特殊部隊員は、活動家らに殴打され小銃を奪われたため拳銃で応戦したと主張。支援船側はイスラエル軍が先に発砲してきたとしている。
イスラエルの軍事行動をめぐっては、2008年12月のイスラム原理主義組織ハマスとの衝突を受け、09年1月に国連安全保障理事会が「イスラエル軍の完全撤退につながる停戦」を求める決議を採択。同決議はガザ地区への人道支援に対する妨害停止を求め、文民への暴力行為を非難している。