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「理想的な淡水水槽」 9.1.5. 栄養素の泉

デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

9.1.5. 栄養素の泉


たび重なる調査と試行錯誤の末に、ある日我々は思いもかけない発見をした。熱帯地方の小川の岸辺近くで、錆色の水が湧いているのを見つけたのである。慎重に湧水地点の周りにあるものを取り除き、鉄とマンガンの濃度を測定したところ驚くべき結果が得られた。熱帯地方の河川において水草の成長を支える栄養素の供給源を、我々はついに発見したのである。この「栄養素の泉」から川に沁み出していたのは、水草の成長に不可欠な純粋な栄養素を凝縮したものであったのだ。

サンプルをドイツに持ち帰り、実験室でより精密な分析を試みた結果次のことが明らかになった。地下から川へと湧き出すこの水は、同じ川のその他の場所で測定した水より鉄分で40倍、マンガンは27倍、さらに窒素や二酸化炭素(CO2)で20倍もの高い濃度を示したのである。またこの地下水は、簡単に酸化し、たいていすぐに沈殿する性質を持つ栄養素を圧倒的に多く含んでいる。この性質から、これらの栄養素は「臨界栄養素」と呼ばれる。そしてこの栄養素の泉は永遠に湧き続けるのである。昼も夜も、そして雨季も乾季も。

栄養素の泉の存在に気付いてからは、この地域でそれを至るところで発見することができた。特に田んぼに流れ込む小さな流れの中に、このような泉が多く湧いていた。これらの泉によって小川は永遠に栄養素の供給を受け、水草はそれらを十分に使用することができるのだ。

我々は、熱帯の小川において一年の異なった時期に極端な変化が生じる(例えば雨季には岸から水があふれるほどの洪水となり、乾季には一気に水の流れが少なくなる)場所においても、川岸の水の構成要素には大きな変質が起こらないことをつきとめた。これについては、水位の異なる3つの時期に行った南タイの小川の水質測定を記した「9.1.1.流れのある水」の表が明確に証明している。

理想的な水槽を作るにあたり、これは非常に前向きな実験結果である。すなわちこの結果をふまえることで、水槽内の水草のために連続的に特有の環境を作り出すという我々の仕事の負担を軽くすることができるのである。この観察結果が、水槽飼育を通して我々が推測し、長い間実践してきた技術に確証を与えた。

これらの結果からわかったことがある。それは、水位の変化による水の化学的変化がクリプトコリネの開花に影響を及ぼすということである。これは毎年秋に来るはずの雨季が来ず、水位が圧倒的に低かったある年にはっきりと観測された。この年クリプトコリネは、通常ある一定の高さに達する水位に対応するために咲かせる花を自ら排除したのだ。


スリランカのため池。水の流れが少ない水域の典型。
水槽中でよく飼育される多くの水草が自生している。




クリプトコリネの生息する小川。このような小川の
底部には鉄分を豊富に含む沈殿物が多く見られる。





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