日本一には、小さなことからコツコツと…。16日、秋季練習6日目にして、中日落合博満監督(56)がついに動きだした。自らバットを握り若手にバントのお手本を披露。選手に基礎徹底をうながした。ロッテとの日本シリーズでバントミスを連発。バントが日本一を逃した要因にもなった。指揮官が就任8年目となる来季に向け、基礎からチームをつくり上げる。

 コツン、コツン…。ナゴヤ球場の室内練習場に独特の打球音が響き渡った。打席でバットを握っているのはユニホーム姿の落合監督。その周りに立つ10人の若手投手陣は、ラインぎりぎりに転がるボールを食い入るように見つめた。これまでベンチなどで静観していた指揮官が秋季練習6日目にしてついに“始動”した。かつての3冠王が自らバットを握り手本を披露したのは、なんと小技だった。

 「そんなに強く握るとヘッドが下がるぞ!

 右足を前に出さないとダメじゃねえか!

 もっとヘッドを前に出せ!」。約5分間の実演の後も、レッスンは終わらない。川井、朝倉、山内ら打席に立つ投手陣には真横から矢継ぎ早に指示を飛ばした。重点的に指導を受けた川井は「バントについては監督から初めて教えられた。ボクはもともと形が良くないですから。しっかり決めないといけませんからね」。室内練習場にはピーンと張り詰めた空気が流れた。

 はたから見ればオレ流始動。だが、バントにこだわる理由がある。今季のチーム犠打数は158でリーグ断トツ。投手が決めた犠打も33とリーグ1位を誇る。当たり前のことを確実に決めるところが中日の強さだった。しかし、ロッテとの日本シリーズではバントのミスを連発。特に第6戦では勝負どころでバントが決められず、延長15回引き分け。結局、翌日の第7戦で敗れて終戦となった。バントミスが日本一を逃す1つの要因にもなった。

 バント教室から始まったレッスン。だが、これだけでは終わらなかった。打撃マシンに向かう堂上直、岩崎達らを見つめると、アドバイスを送った。入団が決まった佐伯と並んで打撃練習をする小池には身ぶり手ぶりで指導した。V逸から8日目。リーグ、日本シリーズの完全優勝へ-。指揮官が、新たなシーズンへ向けて基礎の徹底からスタートさせた。【桝井聡】

 [2010年11月17日11時29分

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