野田佳彦総理は30日夜、同日の税制抜本改革2法案の閣議決定、法案の国会提出を終えて首相官邸で記者会見を行った。

 野田総理ははじめに、法案提出に至るまでの経過をあらためて報告。党内では前原誠司政調会長を中心に連日にわたり深夜まで熱心に議論いただいたとして、党幹部や参加議員に感謝の言葉を述べた。

 そのうえで、「政府・与党としては結論を出す時に結論を出した。これからは国会審議、与野党協議を通じて国家国民のために避けて通れない、先送りできないこの課題について大いに議論し、最終的にはきちんと成案を得ていかなければいけない」と強調。野党議員の多くも社会保障の安定化、充実化とそのための安定財源として消費税引き上げの必要性を認識しているとの見方を示し、「政局でなく大局に立つなら政策のスクラムを組むことは十分可能」だとして、野党に対し協力を呼びかけた。

 また、議論を深めていくために一番必要なのは国民の理解であるとして、社会保障と税の一体改革の意義について、「今日より明日が良くなると思うことができる社会をつくりたい。その行き着く先が、国民の多くが不安に思っている社会保障の持続可能性」だと力説。若者が抱く雇用への不安、働く女性が抱く出産・子育てへの不安、誰もが抱く老後への不安などを取り除くことがその根幹との見解を示した。

 特に、改革を進めるにあたって重要なのは、少子高齢化による人口構成の急速な変化に対応できる持続可能なものにするためには給付・負担両面でより公平にしていくことだと主張。給付の公平性の観点から、人生前半の社会保障に光を当て、支える側でも社会保障の恩恵を感じられるようにすると説き、その柱として7千億円を充てる子ども・子育て新システムを挙げた。

 一方、負担の公平性を保つためには、保険料や所得税といった現役世代の負担、不足分については赤字国債を発行しながら今の社会保障を支えるという、いびつな構造を改め、安定的かつ公平な基幹税として消費税の引き上げが必要だと指摘。法人税や所得税に比べ景気動向や人口構成に影響されない点においても「オールジャパンで助け合い支え合っていく。社会保障に充てる税金としては消費税が一番ふさわしい」と述べた。

 消費税引き上げに伴いより大きな負担を強いられる低所得者層への対策として、番号制度の導入後には給付付き税額控除制度を導入する方針を明示。その制度設計を進めていくとともに、制度導入以前は簡素な給付措置をとっていく考えだとした。

 「今日より明日が良くなると思うことができる社会」の実現に向けては、一体改革の推進とあわせて日本経済の再生、デフレ脱却だと述べ、法案には今後10年の平均で名目経済成長率3%、実質経済成長率2%とする数値を目標として掲げたことにも言及。日銀と緊密に連携、問題認識を共有しながら新成長戦略の加速、年央にとりまとめる日本再生戦略などさまざまな政策を総動員しながら目標達成に向けて全力を尽くすと表明した。

 また、政治への信頼回復に向けては、問題を先送りせずに自己決定できる政治が日本に存在しているかが問われており、「決断する政治」「未来を慮る政治」の象徴的なテーマが社会保障と税の一体改革だと指摘。政府・与党として年度内提出という初期の目標を実現した今、国会として問題を先送りせずに決断できるかどうかが問われると指摘。真に国民のための一体改革であり、成案を得られるよう全力を尽くすとした。

 さらに、身を切る改革をしっかりやり抜くと宣言。これまでの取り組みに加え、行政改革実行本部を中心に公務員制度改革、特別会計改革、独立行政法人改革などさらなる行政行革、歳出削減を推進していくとともに、国会議員の定数削減をはじめとする政治改革を、最初の消費税引き上げとなる2014年4月までにしっかりやり遂げていくと決意表明した。