2012.04.13

米国が『関税撤廃』に柔軟姿勢を見せ始めたTPPにどう対応する?!野田民主党よりさらに情けない谷垣自民党の「問題先送り」

 日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加をめぐって、米国が柔軟な姿勢に転じる兆しが出てきた。日本経済新聞や読売新聞の報道によれば、カーク米通商代表部(USTR)代表が訪米中の玄葉光一郎外相との会談で「関税撤廃の詳細は今後の交渉次第」という認識を示したという。

 実際にカーク代表がどういう文脈で語ったのか分からないので、即断は禁物だが「それは、まあそうだろう」と思う。なぜなら「どんな品目で、どのように関税撤廃を目指すか」という問題こそが交渉の核心であるからだ。

 日本の交渉参加を認めるかどうかをめぐる、いわば予備交渉の段階で、米国が核心の問題について断定的な方針を通告してしまうはずがない。今回のカーク発言は額面通りなら、当たり前のことを言っただけだ。

 日本にとっては、ひとまず最初の山を越えた形になる。今後、本交渉への参加を前提に、日本国内で「どういう品目でどんな例外扱いを求めるか」という調整作業が本格化するだろう。

交渉に参加するかどうかで大騒ぎする幼稚さ

 ふり返れば、TPPが日本で大騒ぎになったのは「10年間ですべての品目の関税撤廃を撤廃する」という例外なき自由化の旗を掲げたからだ。だが、昨年11月4日付のコラムに書いたように、およそ通商交渉において最初から「例外ありの自由化」を掲げるような振り付けはありえない。

 どの国にも、国際的競争から保護したい産業はある。それは、たいてい強力な既得権益集団を形成していて政治的パワーもある。だから最初から「例外ありの自由化」なんて言ったら「おれの業界は絶対に自由化を阻止しろ!」と国内で大騒ぎになって、とても交渉開始どころではなくなってしまう。

 まずは、だれもが貿易自由化の崇高な理念とともに「例外なし」と旗を高く掲げて交渉をスタートさせる。その後で双方が納得できるように表と裏の舞台で取引する。これが通商交渉のパターンだ。こんな話はイロハのイであり、なにも難しい交渉の担当者でなくても新聞記者の私だって知っている。

 日本では「TPPに参加すれば米国にやられてしまう」といった話がやたらと宣伝されたが、その米国もオーストラリアとの自由貿易協定(FTA)では、砂糖や一部の乳製品を関税撤廃の例外扱いとすることで合意している。だから、TPPが「すべての関税撤廃」と旗を掲げたとしても、いずれ交渉に入れば、例外品目について「話し合いの余地はある」と考えるのが普通の感覚だ。

 もしも、日本以外の交渉国がみなそろって「絶対に例外は認めない」と言うなら、そのときに考えればいい話なのだ。米豪協定からみても、そんな事態にはまずならないと思うが。

 というわけで、私は先のコラムでも別の記事(たとえば『Voice』2012年1月号、引用した読者のサイトは)でも「交渉に参加するかどうかで、なにをいったい大騒ぎしているのか」と冷ややかにみていた。幼稚で子供じみた騒ぎと思った。

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