コラム:サントリーが米ビーム買収で攻勢、創業以来の精神貫く

コラム:サントリーが米ビーム買収、「やってみなはれ」精神貫く
1月13日、サントリーには創業者が残した「やってみなはれ」の精神があるが、米ビーム社買収に160億ドルを投じたのも、まさにこの精神が根底にあるためだ。写真はサントリーの蒸留所で2013年12月撮影(2014年 ロイター/Sophie Knight)
Rob Cox
[ニューヨーク 13日 ロイター] -サントリーホールディングスには創業者が残した「やってみなはれ」の精神がある。米ビーム社買収に、同社の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の20倍にも相当する160億ドルを投じたのも、まさにこの精神が根底にあるためだ。
この数字は、ビーム社に関心を持っていただろう英ディアジオや仏飲料大手ペルノ・リカールなどにとっても、理解できないものではない。
米複合企業フォーチュン・ブランズからスピンオフして以降、ビーム社は格好の買収標的と見なされてきた。
ビーム社の魅力は「ノブクリーク」など、バーボンウイスキーにある。特にディアジオを中心とする多国籍の酒造メーカーのポートフォリオにブラウンスピリッツの世界的ブランドが欠けている状況を考えればなおさらだ。
サントリーHDがビーム社の単独のブランドを買収するのではなく、ビーム社自体を買収すると発表したことは唐突だったものの、それほど意外ではない。市場が縮小する日本では、どの消費財メーカーにとっても必要不可欠な戦略だ。サントリーは2014年の展望について、現在事業を展開する市場が全体で前年比1%縮小するとの見通しを示した。
そうしたなか、サントリーHDは今回の買収に向けた伏線を引いていた。食品・飲料を手がける子会社、サントリー食品インターナショナル<2587.T>を上場させ、買収資金として活用できる約40億ドルを調達した。
サントリー食品インターナショナルの事業戦略はとりわけ積極的で、英製薬大手グラクソスミスクライン(GSK)から飲料ブランド「ルコゼード」と「ライビーナ」を取得することで合意した。
今度は親会社であるサントリーHDが攻勢をかける番というわけだ。実際、それは大胆な動きだった。「ピナクル」や「アブソリュート」ウォッカといった単独ブランドの売却額がEBITDAの20倍近くとなる一方、複数の蒸留酒ブランドを合わせた場合、通常、比率はもっと低くなる。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの調査によると、アライド・ドメックに対してペルノ・リカールは14.7倍相当を支払った。
シーグラムに対しては、ペルノ・リカールは9.8倍、ディアジオは12.9倍を支払った。
さらにこれら案件では、醸造の過程で十分なシナジー効果があった。一方、サントリーHDのビーム社買収ではこれがごくわずかだ。
ディアジオとペルノ・リカールはその気になればビーム社買収の資金を調達できるかもしれない。たとえばディアジオのケースだと、借り入れを通じて100億ドル超を調達でき、株主からも資金を集めればいい。
ただ、それは背伸びだろう。公開企業ではないサントリーHDは、買収で3%のリターンを確保できる。まさに「やってみなはれ」だ。
*見出しを修正し、記事の体裁を整えて再送します。
●背景となるニュース
*サントリーHDは、負債含み米ビーム社を160億ドルで買収する。世界のスピリッツ市場でのシェアは第3位となる。
*サントリーHDはビーム社に対し、1株あたり83.5ドルを支払う。これはビーム社の1月10日終値に25%のプレミアムを上乗せした水準で、同社の9月終了の年度のEBITDAで20倍以上。
*ビーム社とサントリーのスピリッツ事業を合わせた売上高は43億ドルを超える。
*筆者は「ReutersBreakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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