2012.06.21
# 雑誌

この男以外に日本の未来を決められる政治家がいるのか 竹中平蔵登場!「橋下さんには物事の本質が見えている」

「消費税の増税に対する考え方ひとつをとっても、橋下市長とそこらの政治家はデキが違う」。論客・竹中平蔵慶応大教授が橋下市長を支持する理由はどこにあるのか。

この人しかいない

 以前大阪で橋下徹市長と4時間近く議論したことがありますが、よく勉強していて、物事の本質が見えている人だという印象を受けました。なぜ橋下氏が大阪市民だけでなく、国民的人気を誇っているのか、よくわかった気がします。

 これまで日本の既存政党は、与党も野党も、その時々で言うことをコロコロ変えてきました。例えば、民主党は'09年のマニフェストには書いていなかった消費増税を行うと唐突に言い出しました。

 一方の自民・公明両党は先ごろ、'05年のマニフェストで約束した郵政民営化に逆行するような「改正郵政民営化法案」に賛成した。つまり与野党とも、約束を平然と反故にしたわけです。これで国民の間には既存政党に対する決定的な不信感が芽生えた。そんな状況下に現れたのが、正論を唱える橋下氏でした。

 ウソばかりついている既存政党と、原理原則を守る橋下氏。国民は今、この強烈なコントラストを目の当たりにしているのです。

 野田総理は「今国会での消費増税法案成立に政治生命を賭す」と語りましたが、このタイミングで増税なんかしたら、それこそ現状での増税に反対している橋下氏がますます勢いづいて、野田氏は政界から退場させられるでしょう。

 当然、私も野田政権の消費増税法案には反対です。私から見れば、政府が今やろうとしているのは「とりあえず増税」に過ぎない。長期的に消費税率と社会保障がどうなるかははっきりしないけれど、とりあえず消費税を上げると言っているだけです。理由もはっきりしないままに、国民からなけなしのお金を集めるなどというのは、愚策の極みと言っていい。

 無論、財政再建は避けられませんし、社会保障の充実も必要でしょう。しかし、今のような手順、やり方で増税したところで、何の効果もない。それどころか、日本の経済をさらに悪い方向に導くことは間違いないのです。

 順を追って説明していきましょう。まず、今の国家予算には無駄が多すぎる。振り返ってみれば'03年から'07年までの5年間、つまり小泉内閣時代には、一般会計の総額は82兆円程度でした。ところが今年度を見ると、いわゆる『隠れ借金』(一般会計から外して政府が先延ばしにしている歳出)も含めて96兆円と、実に14兆円も増えました。しかも、その間にGDPはまったく増えていない。つまり国民の財布は膨らまないのに、政府の財布だけが20%も膨張したのです。

 なぜこうなったのか。歳出増の要因としては、高齢化による社会保障費の増加が挙げられます。しかし、この5年間での社会保障費の自然増分は4兆円ほどで、残りの10兆円は、「子ども手当」などのバラマキ政策を取ったことで生じた無駄な予算です。

 政府は今後、消費税を5%上げれば税収が13兆円増えると言いますが、何のことはない、これまで膨れ上がった14兆円の赤字を取り返そうとしているだけなのです。これでは財政再建は果たせないし、社会保障の改善にもつながりません。

 さらに政府は'20年に基礎的財政収支を黒字化するためには消費税を17%に上げる必要があると試算しています。「低福祉・重税国家」を目指しているのでしょうか。

 むしろ今、政府がやるべきは増税ではなく、経済運営を正常化させることです。私は「成長派」などと評されますが、なにも特別な成長戦略を考えろと言っているわけではない。おかしな政策をやめて、普通のことをやろうと言っているだけです。リストラを防ぐという名目でありながら、むしろ雇用の柔軟性と流動性をそぐ結果になっている「雇用調整助成金制度」を筆頭に、長期的に日本の成長力を失わせる政策を、民主党はいくつも推進してきたのですから。

 一方で、歳出を増やさない努力も欠かせません。

 ハーバード大学のアルバート・アレシナという政治経済学者が導き出した法則があります。彼がOECD加盟20ヵ国の財政再建の事例を62ケース調べたところ、徹底的に歳出削減をした後で増税した国は成功し、増税を先に実施した国はすべて失敗していたのです。では、野田政権は「徹底した歳出削減」をしたでしょうか。このままでは日本は失敗のケースのひとつに数えられることになる。

 財政再建の基本は増税ではないのです。むしろ経済を回復させ、自然増収を目指す。これが世界の常識です。経済学を学べば、そのくらいのことはすぐにわかるはずなのに、なぜ野田首相はここまで消費増税にこだわるのでしょうか。

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