担当M(以下M):手を使うことが厳しく取られるようになりました。

ラモス(以下R):いい面と悪い面と両方あると思いますよ。サッカーとしては面白くなるでしょうし、でも何かあるとすぐ止まってしまう選手も出てくるだろうし。判断が難しいと思いますね。でも、本当に一番問題なのは審判によって取ったり取らなかったりということなんですよ。同じレフェリーでも、その日によって基準が違ったりする波も結構ある。試合によってルールが違うと感じることもありました。

M:レフェリーにはいろんなタイプがありますよね。それでも1980年代に出た『サッカー人間学』という昔の本に書いてあったことが今でも当てはまります。

R:この分類が本当にそのとおり。

M:何も言わない『見えないレフェリー』、やたらとホイッスルを鳴らす『笛吹レフェリー』、ホームに甘い『ホームレフェリー』、選手を小僧扱いしてすぐ呼びつける『威張ったレフェリー』、名前どおりに『きざなレフェリー』、ユーモアがある『微笑みレフェリー』なとど分類されていました。

R:本当に笑える。『笛吹レフェリー』とか『威張ったレフェリー』が日本は多かったかな。ちゃんとショルダーチャージしているのに、飛んだらファウル、アピールしたらファウル、それはちょっと勘弁って感じでしたよ。今までの外国籍選手の中ではフッキがかわいそうでしたね。目をつけられてるんじゃないかって感じでしたよ。僕は『見えないレフェリー』が好きだったね。

M:足をよく狙われていたから『笛吹レフェリー』がよかったんじゃないですか?

R:アドバンテージをとってくれるレフェリーが好きだったんですよ。調子がいいときはよほどのことがない限りボールを取られない自信があったから、ガチンと当たられても持ち直してパスできた。

M:『見えないレフェリー』は激しいプレーをする選手に好まれそうです。

R:僕は激しくはなかったですよ。スライディングでボールを奪いにいくときは必ずボールだけに触れたから。スライディング・タックルってコツがあるんですよ。たとえばフッキにしても上半身はすごいけれど、下半身にそんな差はない。だからじっくりボールを狙うんです。そして相手が自分よりちょっと前に出たときに、さっとスライディングに行く。最初から体をガツガツぶつけて、それからボールを取ろうとしても体格差があると飛ばされちゃうから。

あとスピードのある選手のボールをスライディングで取るときは、もう一つ工夫するんです。そういう選手はトラップから大きく前に出してくるから、どっちにトラップしようとしているか相手の体や目を見て考えておくんです。それでボールが来たときにはもう先にスタートする。それで競争して、粘って最後に相手がちょっと前に出たときにスライディング。そうやって国立競技場で岡野選手からボールを2回取りましたよ。

そういう駆け引きをちゃんと分かってくれるレフェリーが好きでした。昔も今も、確かにちゃんと取ってくれる時はあります。正確な判定がどんどん増えてくれれば、もっと選手も活躍するようになると思いますよ。