アイデアと遂行はどちらが大事か

昨日のエントリーでは、起業アイデアを固めるためにに大事なことをFoodspottingのファウンダーが語ったことを書いたのだが、さらっと何気なく語られているけれど実はとても大事なのが

「アイデアを人に説明しまくる」

ということではなかろうか、と思うのでした。「アイデアを盗まれる」と心配する人が多いが、ほとんどの場合盗まれたりしない。というか、頼んでも盗んでくれない、というのが普通ではないかと思います。

アイデアは、形にしてナンボである。CD BabyのファウンダーのDerek Siversいわく

It's so funny when I hear people being so protective of ideas. (People who want me to sign an NDA to tell me the simplest idea.)

To me, ideas are worth nothing unless executed. They are just a multiplier. Execution is worth millions.

Explanation:

AWFUL IDEA = -1
WEAK IDEA = 1

SO-SO IDEA = 5

GOOD IDEA = 10

GREAT IDEA = 15

BRILLIANT IDEA = 20

NO EXECUTION = $1

WEAK EXECUTION = $1000

SO-SO EXECUTION = $10,000

GOOD EXECUTION = $100,000

GREAT EXECUTION = $1,000,000

BRILLIANT EXECUTION = $10,000,000

To make a business, you need to multiply the two.

これ、37signalsのGetting Realでも参照されているので、そちらで読んだ方もいるかも。ちなみに、executionって日本語訳は何が適切?要は、「アイデアを形にすること」なのだが・・・「遂行」か?「実行」か?一応「遂行」とすると・・・

「アイデアと遂行の掛け算で成功の価値が決まる。しかもアイデアは遂行の係数でしかない。ダメダメなアイデアは-1、弱いアイデアは1、その後いろいろレベルがあってすばらしいアイデアで20。遂行の方は何もしないと1ドル、超すばらしくて1千万ドル(10億円位)の価値。」

と。

つまり、

弱いアイデア X 超すばらしい遂行 = 1千万ドル

すばらしいアイデア × 何もしない = 20ドル

・・・こちらの最近のInc誌の記事もごらんあれ。アイデアはコモディティでしかなく、大事なのは能力あるマネジメントチームによる遂行力、と。「アイデアが全て」というのは「病気」であるとし、その代表的な3つの症状が挙げられてます。いわく

– 「アイデア」が、ただのクールな機能でしかない (独立した製品としての体も示していなければ、ビジネスモデルもない)

– 人にアイデアを盗まれると心配する (成功が実証されないアイデアなど誰も欲しくないのに)

– 競合がいないと喜ぶ (自分しかユーザがいないだけかもよ)

+++

・・・とはいえ、こうしたアドバイスは

「営々たる改善努力が苦手。アイデア一本で逃げ切ろうとする」という傾向が強いアメリカ人

に向けてより有効かも。

「ゴールは二の次。それよりプロセスが大事」という傾向が強い日本人

には「ちっとはアイデアの中身も考えよう」というアドバイスの方が有効な場合もあるのでは。

世の中、二つの異なることが半々で重要だったりするのです。「正しい目標設定」と「遂行努力」、どっちが大事って、そりゃどっちも大事だわな、みたいな。

で、その人がどちらに偏っているかによって、適切なアドバイスがまったく逆になる。そして、アメリカは「努力より才能・大志重視」の国。その国の人に向けた「努力が大事」というアドバイスは、「努力最優先」の日本人にはあんまり価値がないかも。Outliersとか・・・・。

上記のDerek Siversの言葉でも、ダメダメなアイデアは「-1倍」という恐ろしい係数だ。1千万ドルの努力をしても、1千万ドルの借金が残る計算だ。そんなのいやですよね。

(というか、実際このDerek Siversのコメントを最初に読んだときは、「ダメなアイデアでー1倍、すばらしいアイデアで20倍って、アイデアの価値が超大きいじゃない」と、日本で育った私は思ったのでした。)

アイデアと遂行はどちらが大事か」への2件のフィードバック

  1. なんか「良いアイデア」がひらめいたらなんとかなるという発想はちょっとアレですよね。実際に何かやっている人と何もやっていない自分との差は「ひらめいたかどうか」という「一瞬の幸運」だけだと思いたい・・・気質みたいな。
    僕自身がやっていることは秘密ですけど、僕のとこのクライアントのオジさんとかはまさに「話しまくる」ことで成果に繋げるタイプですね。結構笑われたり馬鹿にされたりしつつ、中には聞いてくれる人や紹介してくれる人がいてまた繋がって・・・というのがやっぱりマットウな成功プロセスというものなんだろうなと思います。
    日本人にどうやってそういう行動を取らせるかという点で色々やって見えて来たのは、「焦らせない」「リスクを取らせない」ことが大事なのかなと。「アメリカ人風に行動しろ」というプレッシャーがあるとそもそも何もやらない人が、「毎日一枚ずつ紙を積んでいってください」なら「俺もやろうかな」と思ってもらえたりするようなところがあります。そういう「気質にあった起業プロセス」みたいなのの成功事例をパイロット的に作り込んで標準化できれば、結構「俺も俺も」的ブームになって日本全体がシリコンバレー的連携に持ち込めたりするはずだと思っているところですね。まあ、日本人の時間感覚からいうとIT分野のようにスピードが命ではないところでそういうのが起きるんだと思いますが。
    なんというか「数打ちゃあたる」という、「人生をゲーム的に捉える」狩猟民族的考え方自体が大多数の日本人にとって受け入れられがたいところがあるので、「最初の段階で開墾する土地の選定に凄い時間をかけながらも、いざココと決めたら一所懸命」というモードにしてあげることが彼らの価値を引き出す秘訣だと感じます。そういう思考法は変化の激しい時代に大鑑巨砲主義になりがちなんですけど、まあ、「とはいえ僕ちゃんそれしかできないんだもん(でもそれなら誰よりうまくできるもん)」の発想で、「どうやって活かせるか」を考えたいところですね。

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