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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第11回

iPhoneアプリを作る高校生(後編)~「アメリカへ武者修行」

2010年09月17日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚

【今週の1枚】iPhoneアプリクラスの先生と二人で。なお写真はすべて渡辺祥太郎氏による提供

 iPhoneアプリを作り始めた高校生、渡辺祥太郎氏。前回はiPhoneアプリを開発するまでを紹介したが、今夏にはアメリカのカリフォルニア州スタンフォード大学のキャンパスで行なわれたサマーキャンプ「iD Tech Camp」へ参加してきたとのことだ。

 このiD Tech CampはITに特化したサマーキャンプで、毎年スタンフォード大学で行なわれている。下は7歳から高校生まで参加する人がおり、コンピュータに関するさまざまなコースを選んで受講できる。渡辺氏はその中でも最もレベルが高いiPhoneアプリデザインのクラスを受講することになったそうだ。キャンプに参加して1週間を過ごしたその様子を聞いた。

iD Tech Campが行なわれたスタンフォード大学の校舎

 「朝、7時に起きてみんなで芝生に集まって朝食を食べます。これは普通かもしれませんが、食事から帰ってくるとゲームタイムが40~50分待っています。みんなで1ヵ所に集まって、円になってゲーム、というのは日本の高校生のカルチャーにはあまりないですよね。そのゲームが終わってから自分たちの先生の所へ行って、11時半までひたすらプログラムの講義。円になってのゲームの時と、先生たちの顔つきは変わって真剣勝負です。

 11時半からの昼食のあとはレクリエーション。コンピューターのゲームをしたり、ジュースを飲みに行ったり、大学内のツアーに出たり。僕はせっかくなので、大学内ツアーに参加したりしていました。14時半に戻ってきて、また17時半までぶっ続けでプログラミング。その後再びゲームタイムがあって、夕食になります。その後に先生たちが毎日イベントを用意していて、タレントショーや映画、カジノなどを楽しみ、後は就寝。これが1週間続きます」

 ただITの知識や経験にどっぷり浸れるだけでなく、周りの人間と仲良くなったり、レクリエーションを通じて豊かな経験を積める場がiD Tech Campだった、と振り返る。渡辺氏はできるだけ多くの日本の中学生/高校生も参加してほしいと語るが、そこには彼が受けたカルチャーショックが関係している。

レベル、人数がまったく違う
世界を感じた1週間

 iD Tech Campに渡辺氏が参加したのは1週間だったが、もう少し長い期間参加する子供もいるそうだ。たとえばiPhoneアプリのクラスを取るにはC言語の基本を学んだ方が良いため、最初の1週間はC言語のクラスを取り、次の1週間はiPhoneアプリ開発のクラスを取る、といった具合にレベルと期間に合わせてクラスのアレンジができる。渡辺氏は「その講師陣がまた素晴らしかった」と目を輝かせる。

 「講師は皆、プロのプログラマーであり、教えることについてもプロの人たちでした。プログラミングを習うと、どうしても正しい/間違いという指摘をされがちです。しかし彼らは、僕がどんなコードを書いていても、その書き方に合わせて適切なアドバイスをくれたり、コードを書き足したりしてくれます。もちろん上手いコード、下手なコードというのはあるのですが」

iPhoneアプリクラスの教室の様子。使われるのはもちろんMacばかり

 こうして非常に充実した環境の中で、iPhoneアプリ開発の腕を磨くことになった。渡辺氏が参加したiPhoneクラスでまず驚いたのは隣の10歳の子供のタイピングのスピードだった。「なんでこんなに小さい子が、こんなにタイピングが速いの?」という驚きがあった。しかしクラスでは、先生が喋るコードに合わせてタイプしなければならず、渡辺氏自身もタイピングは鍛えられ、速くなったと語る。

 そして、コンピューターと早くから親しみ、使いこなしている子供がiD Tech Campに押し寄せているという事実を目の当たりにすると、プログラマーやマーケットに参加している人数の多さやレベルの高さを感じずにはいられなかった。

 「日本では、iPhoneアプリを開発する高校生というと珍しい存在ですが、アメリカではさほど珍しくもなく、すごくもないということがよくわかりました。日本だけではなく海外でも評価されるアプリが作れるようになることが、新たな目標になりました」

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