<5月20日>(月)
〇いろいろなことが起きる世の中であります。本日は台湾の頼清徳新総統の就任式、と思っていたら、昨日になってイランの大統領と外相が乗ったヘリが行方不明に。日本のメディアは「不時着」「安否不明」などと書いているけれども、海外メディアは"Crashed"と書いている。こりゃまあ、どう考えても絶望ですわな。
〇1日経ってから「やっぱり絶望」と伝わりました。いやはや、怖いですよ。そうでなくてもライシ大統領(63歳)は、最高指導者のハメネイ師(85歳)の後継者かもしれないと目されていたひと。これでイランの体制がどうなるのか。イラン大統領職は補欠選挙が行われるのでしょうが、そこでポスト・ハメネイ師が浮かぶかどうかはわからない。ハメネイ・ジュニアの立候補は、さすがにないと思いますけど。
〇おそらく今回の事態で、ロシアのプーチン大統領が焦っているのではないかと思います。イランの支援がなくなると、ウクライナ戦争の遂行に支障をきたす。まあ、そんなことにしてしまったご本人が悪いのですが。
〇さらに今回のヘリコプター事故が、実はイスラエルの仕業であったなら。これはもう中東戦争の引き金を引きかねない。もちろん、イランは簡単には認めないでしょうし、イスラエルも認めるはずがないけれども、そうだった場合には目も当てられない。
〇ところがこんな日に株価は好調なのである。「地政学リスク」なんて口ばっかりですな。いや、ワシの持ち株も上がっているから、文句を言うような筋合いではないのですが、「下がった時だけが地政学リスク」というのはホントにそうですな。いやはや。
<5月21日>(火)
〇先週、ワシが中国に行っておった間に、アメリカ大統領選挙に変な動きが起きている。
●バイデン大統領とトランプ前大統領6月下旬に討論会開催見通し (NHK 2024年5月16日
7時41分)
〇大統領候補者というものは、夏の党大会で正式に指名されるものであって、9月のレイバーデイ(今年は9月2日)以降が本選挙となり、テレビ討論会は10月頃に2〜3回(副大統領候補者も1回)というのが長年にわたる「お作法」である。
〇それを6月にやるというのは、明らかにフライングであろう。とはいうものの、今年は「現職大統領対前大統領」の戦いである。いずれも高齢者ではあるけれども、若い候補者たちは皆さん様子見モードになっていて、「われわれは2028年でいいですぅ〜」という感じになっている。それで3月にほぼ「バイデン対トランプ」の構図ができちゃったのだから、後は激突を早めるしかないのかもしれない。
〇もうひとつの可能性としては、日本と同様にアメリカでも期日前投票が当たり前になってきて、おそらく今年も9月には郵便投票が始まってしまう。だったら、今まで通りに「9月までは本選挙じゃありません」というポーズを続けるのは嘘くさい。テレビ討論会も、なるべく早めに始めることが合理的となる。
〇第3政党の候補者、今年の場合はいかにも波乱要因となりそうなロバート・F・ケネディ・ジュニアを排除する、という隠れた狙い目もありそうだ。彼がどの程度の州で候補者登録できるかは未知数なのだが、例年通り秋にテレビ討論会となったら、三つ巴になってしまう可能性は否定できない。
〇しかしこの話、本当に成立するのかどうか、ちょっと疑問に思えてきた。バイデンさんにとって、あまりにも有利な取引なんだもん。司会は6月がCNNで、9月がABCという2つともリベラル・メディアである。そして6月下旬には、NY地裁の「口止め料事件」の判決が出る公算が高い。もちろん、その場合は有罪であろう。
〇トランプさんは当面は裁判対応が忙しいが、そろそろ副大統領選びも進めなきゃいけない。8年前に選んだマイク・ペンス州知事(インディアナ州)は、まだまだトランプ氏に懐疑的だった共和党内を宥めるにはいいチョイスであった。それが今ではかなり雰囲気は変わっている。今の共和党内は、トランプに媚びを売る人(ティム・スコット)は居ても、逆らえる人(ニッキー・ヘイリー)はあんまり居ない。
〇2024年選挙は、過去のセオリーがあんまり通用しない戦いになるのかもしれない。上海馬券王先生が、「10年トレンド」という手法に疑問を抱きつつも予想に活かしているように、ワシも過去の経験値を活かしつつ、予想をしていくほかはない。
<5月22日>(水)
〇今日はちょっと用事があって経済産業省に行ったのであるが、1階のロビーでふと昔の記憶が蘇った。
〇1990年代のことだから、まだ通産省と呼ばれていた時代である。当時は今のようなゲートや入館手続きなどはなく、外部の人が勝手に省内に入ってよかった。1か所で用事を済ませた後で、「どれどれ、あの人はどうしているか」などとアポなしで別の部署を訪ねてもよかった。まあ、当時は日本中のオフィスがそんな感じだったのである。
〇その日のワシは通産省内で一件用事を済ませて、といっても外があんまり暑いものだから、1階のロビーで涼みながら扇子でパタパタやっていた。するとそこへ通りかかったのが、まだ課長補佐くらいであった齋藤健である。ワシの姿を見るなり、酷いことを言うのである。
「こらこら、こんなところで油を売ってちゃダメじゃないか」
〇いちおう公務で来ているんだから、「こんなところ」はないだろう。とまあ、彼は昔からそんな風でした。今は大臣ですけど。
〇当時はそんな風で、日本中どこのオフィスも風通しが良かったんですよ。今みたいにセキュリティが厳しくなくて、あの頃の方がきっと日本の組織の生産性は高かったのではないかなあ。まあ、言っても詮のない話ではありまするが。
<5月23日>(木)
●英国、7月4日に総選挙 スナク首相「早期解散」で賭け
〇スナーク英首相が下院の解散を表明しました。秋ごろだろうと言われていましたが、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、とばかりにタイミングを早めたようです。
〇衆目の一致するところ、14年ぶりの労働党政権誕生の公算が大である。皆さん、キャメロン首相の「ブレグジット」のことは忘れているようだが、ボリス・ジョンソン首相の「コロナ下のパーティー事件」のことは許してくれそうにない。日本でも「銀座3兄弟」って事件がありましたけど、ああいうのは尾を引きますからな。
〇ところで労働党政権となったら、英国外交が親EUになるのではないかとか、近年の「インド太平洋路線」(AUKUS締結、CPTPP加盟など)が見直されるのかなと思っていたのだけど、労働党は「外交は変えません」と言っているらしい。英国は二大政党が慣れているので、こういうところはさすがですな。
〇14年間も野党暮らしを体験したら、「とにかく前政権の全否定」から入りたくなるところでしょうが、そういうのは概ね碌なことがない。大事なのはイデオロギー上の対立ではないのです。議会制民主主義の要諦は、「金魚鉢の水はときどき入れ替えましょう」ということに尽きる。
〇日本にも、そういう練れた野党が居てくれたらいいんですけどねえ。今のところはあんまり期待できそうにはありませんな。ということは、またしても自民党総裁選のガチンコ勝負で、「疑似政権交代」をやってもらうのが次善の策ということになる。英国は7月解散でも、日本の6月解散の確率は低そうです。
<5月24日>(金)
〇この週末、日本ダービーが開催されます。さっそくながら、ラジオ日経「マーケットプレス」のスペシャル企画、「私の日本ダービー注目馬」のご紹介であります。
〇今年はちょっと本命馬に偏った傾向がありますかね。皐月賞馬、ジャスティンミラノに人気が集まるのは自然な流れですが、牝馬のレガレイラも人気があります。
〇編集F氏こと東洋経済新報社、会社四季報オンライン編集部長の福井純さんが詳しい見解を語っておられます(ラジコで聞けます)。いやあ、大変勉強になります。
〇不肖かんべえの予想は、皐月賞でも賭けたあの馬であります。いやもう、少々意地になっている。でも、そうやって意地を張らないと、当たった時に嬉しくないので、ここは勝負です。
〇今年の4歳牡馬が「弱い」という定評があって、今年の3歳牡馬の実力が気になるところ。3歳牝馬はかなりレベルが高そうで、牡馬もそれなりに強いんじゃないでしょうか。日曜日が今から待ち遠しい。
<5月26日>(日)
〇今日は年に1度の町内清掃の日。またしても日本ダービーと重なってしまった。それでも作業は午前中で終わるので、午後からは勝負に集中できるからありがたい。
〇ドブさらい、去年はコロナ明けということもあって念入りに作業した覚えがあるのだが、1年たって蓋を開けてみたらやはり汚くなっている。まあ、これは仕方あるまい。そのためにやっているようなものである。
〇草むしりと同時に、庭木の剪定も行う。町内会も高齢化が進んでくると、庭木が伸びっ放し、みたいなことになりがちである。今は業者さんを呼ぶにしてもおカネがかかるし。まあ、拙宅の伸び過ぎた枝は、自分で切ってゴミ出ししておけば、ちゃんと持ってってくれるのだから良しとしなければなるまい。
〇作業が終わってからひと風呂浴びて、お昼から缶ビールを空けるのである。わはははは。労働の後のビールは旨い。
〇ついでに今日は早めに寝てしまって、明日はモーサテに出演なのである。よろしかったら見てやってくださいまし。ん?そういえば今宵は静岡県知事選挙もあるのかな? まあ、大勢に影響がないことを希望します。
<5月27日>(月)
〇早朝にモーサテに出演した日は、一日がとっても長く感じられる。もう、あんまり仕事に精を出す感じでもない。ところが今日の午前中に、「蓮舫氏、都知事選へ出馬表明」の報が飛び込んできた。いやはや、いきなり目が覚めました。
〇小池百合子対蓮舫、って、ラスボス決戦みたいではありませんか。「学歴詐称と国籍詐称のどっちが重たいか」なんてことは、普通の有権者は気にかけないものですから、この際、棚に上げてしまって問題ないと思います。いやあ、久々に魔物が棲む東京都知事選をエンジョイできそうで、ワクワクしちゃいます。
〇小池氏と蓮舫氏、お二方とも不肖かんべえがまったく知らない方ではないんですけれども、ご両人の「魔物度合い」を比較した場合、これは小池さんの完勝です。先日の東京15区補欠選挙で限界が見えた、なんてことを言う人が居ますけど、まったくそんなことは信用しちゃいけない。政治の世界で彼女を敵に回すなんてことは、まったく空恐ろしいことです。
〇ただし都知事として3選を目指すとなると、そこはどうなるかわからない。彼女はチャレンジャーであるときは絶大な強さを発揮するけれども、自民党と組んで守りに入った時にどう判断されるのか。萩生田さんが応援に入ったりすると、逆効果になっちゃうかもしれないご時勢ですのでね。
〇逆に蓮舫さんのオーラの行方も興味深いところです。このまま参議院に留まっていても、たぶんこれ以上の輝きは得られないだろう。だったら都知事選に打って出て、「女子の本懐」を試すのも悪くはない。それがダメでも、次には衆院選出馬というシナリオもあり得るのだから、やってみて損のない冒険になりそうです。
〇結局のところ、情勢調査が出るまではまったくわからない戦いとなりそうですが、ひとつだけ間違いないのは、「東京都知事選が盛り上がる年は、その後に国政も大きく動く」の法則であります。2024年はやっぱり寝た子を起こすような政局になるんじゃないかなあ。岸田さんの鈍感力はかなりのもののようですけど、東京都知事選は刮目すべしと申し上げたいです。
<5月28日>(火)
〇本日は東北エネルギー懇談会の定時総会で仙台市へ。なんだか知り合いがとっても多い。過去にお世話になった方がいっぱいいらっしゃる。
〇それもそのはず。この会、昨年は二戸市、一昨年は新潟市、2年前は青森市で呼んでもらった。さらにそれ以前を遡ってみたら、登米市(15年)、山形市(14年)、宮古市(13年)にも行かせてもらっている。東北は広いですから、こういうご贔屓はとってもありがたい。
〇で、そういう今日になって、東北電力の株価が一日で10%高である。データセンターなどの需要で電力消費量が増える、という思惑に加えて、「女川原発2号機の安全対策工事が終了した」という昨日のニュースが重なったかららしい。再稼働の予定は9月であるし、今後は規制庁の審査もあるはずなので、まだまだ先は長いはず。それでも株高は結構なこと。
〇講演会の方は、例によって「世界四分の計」から始めて、「もしトラ」話、「シン・産業政策」やら上海土産話やらを語った上で、「GXとDXを同時にやるとエネルギー需要が増える」てなことを申し上げる。エネルギー地政学は、これからますます重要になりますよね。円安で問題になる「デジタル赤字」なんて、わが国が毎年買っている鉱物性燃料の輸入金額に比べれば、まったく可愛らしいものでありますから。
〇その後の懇親会では、東北6県+新潟県という東北電力管内の日本酒が勢揃い。各県3本で合計21種類。とりあえず日高見(宮城県)と写楽(福島県)と久保田(新潟県)を頂戴しました。いやもうまことにご馳走様でした。東北にはまた来週も出没いたします。
<5月30日>(木)
〇某所で聞いた話。
「政治家は長いキャリアの中で、1回でも当てれば大物だ。小池百合子さんは、@日本新党、A小泉旋風、B東京都知事選と3回も当てている。こんな人は滅多にいるものではない。希望の党騒動や今回の東京15区補選を見て、もう神通力が消えた、などという人が居るけれども、そんなことは信じちゃいけない」
〇なるほど、政治家って意外とそんなものである。菅義偉さんなんかも、当てたのは2012年の自民党総裁選(安倍さんを担いだ)と、2020年のポスト安倍(事実上は二階幹事長の独走)の2回だけである。後は意外と連戦連敗なので、生涯勝率は必ずしも高くはない。それでも総理になったら大したものである。
〇逆に言うと、大きな負けをした政治家は、意外と負けが負けにならないものらしい。小泉純一郎は3度目の自民党総裁選で勝ったが、その前の2回はアンダードッグだった。安倍晋三さんも言うに及ばず。岸田さんも2020年の負けのお陰で、21年の勝ちに結びついた。さらに石破茂さんなんて、総裁選は連戦連敗で勝率ゼロなのに、9月の総裁選になるとちゃんと名前が出てくる。
〇もっとも、「石破さんが首相になって、アメリカがトランプ大統領になったら最悪の組み合わせ」てな見方もできる。というか、それは上手くやれる人の方が圧倒的な少数派だと思うぞ。うーん、誰がやっても難しいです。
〇首長選挙はその手の心配は不要なので、大いに冒険したらよろしい。とはいえ蓮舫さんは過去に何を当てた人なのか。あらためて考えてみると、よくわからない人であったりする。いずれにせよ、政治家は勝負する人たちであって、勝敗は兵家の常。「1回でも勝てばいい」というのは、ハッとさせられる指摘であります。
<5月31日>(金)
〇今月は日経新聞の「私の履歴書」、趙治勲さんの回を毎朝楽しく読ませてもらいました。ホントにいい人なんですねえ。囲碁にはあんまり詳しくない不肖かんべえでありますが、こういう棋士が居るって、本当にいいことですね。
〇振り返ってみると、5月の朝はずいぶんこの人に助けられたと思います。明日からはまた誰か別の人が登場するでしょう。「当たり」と言える人は、だいたい年に1人か2人だと思いますけど、さて、どなたが登場されるのか。やっぱり初回が楽しみなんですよね。
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