本日の METSA プレゼンテーション資料で発表する、当社ビジネスモデルの内容

本日、METSA (首都圏ソフトウェア協同組合) にて Wagby のプレゼンテーションを実施させていただくこととなりました。そこで説明する内容を整理しておきます。
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まず図の左上は市場環境の変化です。すでに SI 業界に従事する方は体感済みですが、大型の新規案件はオフショア開発が主であり、そこでカバーできない分があってようやく国内に回されるようになっています。国内優先は既存システムの保守となっており、開発を生業とする企業は死活問題となっています。

その上、中小規模の開発案件もこの不況で激減していることはいうまでもありません。

加えて、プラットフォームの大きな変化があります。パソコンから、iPhoneiPadAndroid といったスマートフォンが端末の主流になりつつあります。これは Windows API の終焉を意味します。2000年代に Access で作成されたシステムの保守も限界に近づいていますが、次の開発は Web とスマートフォンの対応が求められています。Access 中心のクラサバ開発の脱却をしなければ、ただでさえ縮小する市場の中で、その立ち位置は限りなく小さくなっていくことは明白です。

次に図の右上です。当社を含め、多くの同業他社様が次の進路を探しています。どの企業も「受託・派遣ではもう持たない」という思いは共通しています。さりとてパッケージ開発は気軽に試すというボリュームではありません。市場にはすでに、熟成されたパッケージが数多く存在します。パッケージ提供企業は今や SaaS とガチンコで勝負している状況です。

組み込みは伸びるらしいという市場予測から、業務アプリから組み込みへシフトされるところもあります。しかし、組み込みもほどなくオフショア化されることでしょう。その前提で取り組むかどうかです。

価格を下げて対抗... も、すでに国内の人月単価はぎりぎりまで下がっており、これ以上の価格競争力をもたせるのは厳しいでしょう。

流行の SNS 系や、ネット上のサービス企業に転身するというアイデアもあります。しかしネット上のサービスの多くは無料です。無料+広告モデルで勝負できるのは、これからビジネスを興す若い企業向きですが、すでに多くの雇用を抱えている既存企業にとっては大冒険です。

では当社は Wagby というパッケージで勝負するのか、といえば、実は難しいところです。開発ツールはもはや無償という認識が強く、ツール(やミドルウェア)でのビジネスは成立しにくいといえます。では Wagby の強みは何かといえば、「他方法よりも速く開発できる」ことにつきます。つまり、業務アプリ開発のノウハウを Wagby 定義ファイル化することで、これまでの常識を超えたスピードで、パッケージ開発できるのです。ビジネスの本質は「開発に要する工数」ではなく「業務ノウハウ」であり、Wagbyを使うことで、ようやく開発業者は自身の強みを発揮できるようになります。

もう一つは無料マーケティングです。すでに Wagby は個人・小規模利用は無料です。マニュアルもすべて公開し、メーリングリストで技術サポートも行っています。ここで期待しているのは、Wagby を使って第三者が開発した「業務アプリケーション」を増やすことです。今後、皆さんが開発された業務アプリを wagby.com で紹介することも進めていきます。Wagby の認知度が高まることで Wagby への機能追加要望やカスタマイズに対応するというのが、もう一つのビジネスです。

私は過去の(そして現在もオフショアで行われている)工数ビジネスからの脱却を意識しています。このモデルは集中的に開発者を必要としますが、あとが続きません。業務システムは「一度つくったら使い続ける」ものではなく、「常に少しずつ変更しながら、時代にあわせていく」ものだと考えており、そのためには組織全体による PDCA サイクルの実現が不可欠です。規模は小さくとも PDCA サイクルを着実に回せるような仕掛けを Wagby で実現していきます。

これは、これまでの保守ビジネスとも少し違います。「毎日、少しずつ、開発し続けるビジネス」とでもいいましょうか。この体制を整備することが、企業の IT 化だと考えています。メールが使えて、ファイルサーバがあるのが IT 化だというのはあくまでも初期段階であり、Wagby によって本当に必要となる、強い IT を実現できればという気持ちで活動しています。その考えに賛同していただける開発者、お客様を増やしていくことが、究極的には当社のビジネスモデルということになります。