goo

「理想的な淡水水槽」 12.1.1.魚は自然下で何を食べているか 前編


デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

12.1.1. 魚は自然下で何を食べているか 前編


「切り取られた原産地」とでも言うべき水槽の中において、飼育されているすべての魚に適合し、なおかつ不足なく最適な栄養を含むエサを与えるという仕事に取り掛かる時、その魚たちの自然下での本来の食物を研究することは非常に役に立つ。こうした「天然のメニュー」の下調べを可能な限り現実的に行うために、我々はある論文の要約を引用したい。この論文はアクアリウム専門誌「AQUARIUM heute」の1987年4号に掲載された、ガイスラー博士(Dr. Geisler)によるものである。魚の生態学者であり、熱帯水域についての専門家であるガイスラー博士は、長年にわたり自然のビオトープにおける観賞魚の食物についての研究にも携わっており、飼育下での魚の食物に関する世界最高の見識者の一人とみなされている人物である。

「自然下で魚が何を食べているのかという疑問に対して簡潔に、そして的確に回答するということは非常に重要なことである。我々の現在の知識水準からすれば比較的答えやすい疑問、つまりロバや象、ネズミ、人などの哺乳類についての栄養生物学上の回答は、既に一冊の本にまとめられている。しかし魚類を扱う我々の本には、大きな知識の隙間がまだ存在している。なぜならこの魚類に関する本は、乾季と雨季、そして水位の高低などの熱帯河川に特有な年間における変化を無視してまとめられたものだからである。

今現在この問題については、過去の熱帯河川の調査結果をふまえて回答が引き出されているに過ぎない。世界のすべての熱帯地方に当てはまるわけではないが、その中で比較的高緯度にあたる南アメリカにおける例として、中央アマゾンの小川に生息する小型魚の胃の内容物についての調査結果を示そう。

この調査は熱帯の湖沼分野における生態学の権威であるDr. H.A.Knöppelがマックスプランク研究所(Max-Planck-Institut)で、49種およそ1300匹の魚の胃の内容物を精査したものである。この調査の中でParacheirodon innesi(ネオンテトラ)、Symphysodon属(ディスカス)、Pterophyllum scalare(スカラレ・エンゼル)といった水槽で飼育される魚については、動物地理学上の根拠に基づいていないということに注意してもらいたい。

我々が作表するにあたり4種のカラシン、5種のシクリッド、そして1種のナマズのみを選び出しているが、アマゾン川流域の低地帯原産で水槽飼育に適した魚の栄養生物学上の特性を際立たせる目的においては、これで十分であると考える。なにしろ我々の作表の資料となったDr. H. A. Knöppelの調査では、アリから水生のナンキンムシに至るまで24(!)もの魚の食物が記載されているのだから。自然下でのこの魚の食物の多様性が、まず読者を驚かせることだろう。しかし水槽内で生まれ育った魚が好まないものもこのリストには含まれている。殻が非常に固いミズダニや、他の生物を刺す性質を持った水生のナンキンムシなどがこれにあたる。」


魚は自然下で何を食べているか (Dr. H.A.Knöppel, Max-Planck-Institut)


図を拡大する


※表に記載されている用語について(編集:デュプラジャパン)

カラシン

ヘッドアンドテールライト・テトラ=Hemigrammus ocellifer ocellifer

ポエキロソブリコン・ユニファスキアトゥス=Nannostomus unifasciatus(ワンライン・ペンシルフィッシュ)を指すと思われる。

レポリヌス・フレデリキ=Leporinus friderici

コッペラ・ナッテレリィ=コペラ・ナッテリィ(Copella natteri)

シクリッド
ゲオパグス・ジュルパリ=通称ジュルパリ(Satanoperca leucosticta)を指すと思われる。

アカリクティス・ヘッケリー=Acarichthys heckelii

ビッグアイ・シクリッド=Acaronia nassa

アピストグラムマ・アガシジィ=Apistogramma agassizii

エキデンス・テトラメルス=Aequidens tetramerus

ナマズ
カリクティス=Callichthys callichthys

エサ
庭にあるワラ=水中・土壌に沈殿した植物の繊維質

岩屑=デトリタス(Detritus)。植物質と動物質が含まれる土などの有機物の粒子

ゲンゴロウ=ガムシ科の昆虫を指すと思われる。




魚が自然下で食べているものについて調査する際は採取直後の解剖が
有効である。写真はボートの上で解剖されるディスカス。




マメ科の木の果実。雨季には大型カラシンの重要なエサとなる。
上記の表からも、特定の魚種は我々の想像以上に植物質のエサに
依存していることがわかる。




Dupla系出版社であるAquadocumenta Verlog GmbHから出版されていた
アクアリウム専門誌「AQUARIUM heute」の英語版「Today's AQUARIUM」。
高度な内容が評価され、世界中で刊行されていた。
写真は1987年の1号と2号の表紙。



※魚は自然下で何を食べているか 後編へ続く



ブログ内検索キーワード
栄養 食物 AQUARIUM heute 熱帯 ビオトープ 
アマゾン マックスプランク研究所 カラシン シクリッド 
ナマズ デトリタス ディスカス





←前のページ 次のページ→


「理想的な淡水水槽」目次へ

Dupla&HOBBY exclusiv ブログトップへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「理想的な淡... 「理想的な淡... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。