敵は巨人じゃない!

 中日落合博満監督(56)が25日、26日から始まるペナントレースへ向けて記者会見を行った。4年ぶりのV奪回を目指す指揮官は周囲が打倒・巨人に過熱することに「特定の球団だけのことを考えたことがない。そんなことをしていたら足をすくわれる」と警鐘を鳴らし、26日からの広島3連戦を含めて144試合すべて勝つ意気込みを示した。

 指揮官としてこれから始まる戦いへの指針を示した。開幕を翌日に控えた会見の途中、落合監督は昨季8勝16敗と大きく負け越した巨人に話しが及び、打倒巨人が重要かと問われると、口調が鋭くなった。

 落合監督

 どこか特定の球団(に勝つ)というのは今まで考えたことがない。どこに勝たなきゃいけない。どこなら負けてもいい。そんなことをやっていたら足をすくわれます。できれば144試合全部勝ちたい。

 今季の最大目標に3年間遠ざかっているリーグ優勝を設定した。その3年間、王者に君臨しているのが原巨人。特に昨季は8勝16敗と一方的に敗れ、目の前での胴上げを許した。さらにはクライマックスシリーズ第2ステージでも敗れた。

 そのため、23日に行われた中日新聞本社激励会では白井オーナーが「今年は逆にしていただきたい。それでやっとバランスが取れる」と発言。周囲は「V奪回」を「打倒・巨人」と同義だととらえていた。ただ、現場を指揮する落合監督は違った。1球団だけに集中することの危険性を指摘した。就任した04年から「どこに勝っても1勝は1勝」とあくまでゴールだけを見据えてきたポリシーはぶれていなかった。会見後には、あらためて自身の目指す究極の野球を語った。

 落合監督

 オレの理想は15人で勝つことだ。野手が8人、先発が6人と抑えが1人。レギュラーは打てて、守れて、丈夫だったら変える必要ない。先発が基本完投して、抑えがたまに投げれば負けないだろ。144勝できるよ。でも、そうはいかないからいろいろ考えなきゃいけないんだ。

 144勝が不可能なことはわかっている。実際に今年も荒木が左足の故障で開幕1軍を外れた。投手陣では山本昌、朝倉、中田、川井が故障で開幕には間に合わなかった。ただ究極を目指さなければ優勝どころか、打倒・巨人も果たすことができないというわけだ。

 敵は巨人だけではない。今、考えるべきは名古屋に乗り込んできた赤い軍団。「明日のメンバー?

 明日の練習を見てみなきゃわからないよ。何が起こるかわからないんだから」。落合監督は不敵に笑った。悲願のゴールは1戦必勝の先にある。【鈴木忠平】

 [2010年3月26日11時12分

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