こんにちは。行政書士の大越です。


 前に書いた記事 で、東京都の青少年育成条例の改正の中の非実在青少年について、「創作物の年齢を見るなど不毛である」と書いたことがありました。


 うちの事務員が、例の「非実在青少年」の定義について、東京都に問い合わせたそうです。

 その結果、下記のような回答を頂いたそうなので、掲載しておきます。



********ご注意********

非実在青少年を盛込んだ東京都青少年条例は、まだ可決されておらず、施行規則も決定されていないため、本来正確な回答が出来る段階ではありません。

また、電話の担当者も、このような質問を想定していないと思うので、個人の裁量による判断もあるかと思います。

そしてこの質問は電話によって行ったため、言葉の齟齬などで都の担当者に正確に質問を伝えられなかったものなどもあるかと思います。

よって、あくまで参考程度です

(追記)

 言うまでもないとは思いますが、これらの質問における都の回答において、該当する・しないの判断はたいした意味を持ちません。この問い合わせに価値があるとすれば、創作物に「非実在青少年」という用語を適用する意義を問いかけるぐらいのものです。



質問 : 次の場合は、「非実在青少年」の定義に該当しますか?



①年齢が100歳であるが、実は魔法使いで、魔法により自らの外見を操作でき、外見が10歳程度の人物の場合


  →該当しない


②年齢が100歳であるが、実は魔法使いで、魔法により自らの外見を操作でき、外見が10歳程度であるが、魔法を誤って使用したために自分の出自についての記憶をなくし、自分は10歳の少女であると信じており、現実の世界と同じ世界観の中で、小学校に通っている人物の場合


  →該当する(本人の認識している年齢を見る)

   (ただし、その後⑤⑥の質問との違いを指摘したら、該当しないとのこと?)


③地球の公転速度が遅くなり、一年の長さが1000日になった世界観の作品の中で、その作品の時間の単位として7歳として描かれている人物(現実の世界では20歳に相当)の場合。


  →該当する(客観的な年齢で見る)


④人間の身体と精神の成長が早くなる薬品が開発され、全ての人間にその薬品の摂取が義務づけられ、全ての人が10歳で成人と同じ体格と精神が完成するようになり、法律上も10歳をもって成人とみなされる世界観の作品の中での、11歳の人物の場合


  →該当する(客観的な年齢で見る)


⑤本当の年齢は20歳であるが、本人は17歳であると勘違いしており、作品の最後まで本人は本当の年齢を知らないまま作品が完結した人物の場合


  →該当しない


⑥本当の年齢は17歳であるが、本人は20歳であると勘違いしており、作品の最後まで本人は本当の年齢を知らないまま作品が完結した人物の場合。


  →該当する


⑦10歳の時に冷凍冬眠の処置を受け、10年後に目覚めたので、年齢は20歳であるが、精神・肉体ともに10歳当時のままである場合


  →該当しない


⑨10歳の人物が事故に遭い、脳のみが無事であったため、脳死状態であった20歳の人物の体の提供をうけ、脳を移植して蘇生した人物の場合。


  →該当する


⑩20歳の人物が事故に遭い、脳のみが無事であったため、脳死状態であった10歳の人物の体の提供をうけ、脳を移植して蘇生した人物の場合。


  →該当しない(脳が基準らしい?)


⑪外見は人間と変わらないが、人間と同じように20歳で成人する異星人で、作品中では人間の法律が適用されない、10歳の異星人の場合


  →該当しない(人間ではない)


⑫3歳の犬が魔法によって人間の姿に変身した場合


  →該当しない(人間ではない)


⑬アダルトビデオに見られるような、「女子高生」ではなく「女子校生」のような表記


  →該当しない


⑭総合すると、今回の条例案で定める「非実在青少年」は、SF的な設定を加味してしまえば、回避出来てしまうのではないか


  →そのとおり(のような言葉)


********問い合わせここまで********


 他にもいくつか質問しましたが、ネットを検索してみると、それは他の方がなさっているものがほとんどのようなので、省略します。

 より具体的な例などは、皆様の方で直接書面などで問い合わせた方がいいかもしれません。

 とりあえず、「東京都はSFに弱い」ということでしょうか?


 というか、現状の漫画に問題があるとするならば、規制したいはずの「性的感情を刺激しないが悪質な性描写」とやらが、上記のような逃げ道でクリアできてしまうなら、むしろその方が穴だらけで問題なんじゃないでしょうか?

 なんでそこまでして「青少年」であることにこだわるんですか?

 いや、東京都の肩を持つわけじゃないですけど。



 それにしても、この電話質問のメモを見た時は、思わず吹いてしまいました。

 これを読むと、やっぱり創作物中の人物を判定するなんて、不毛ですね・・・


 自分も公務員時代は、さんざん電話や窓口で苦情対応しました。あげくの果てに私個人への脅迫電話までもらったことまであります。

 それでも、大体の場合において「理」は役所側にあるので、たんたんと時間をかけて説明すれば、最後はわかっていただける場合がほとんどでした。

 ですから、苦情電話や、どなり込みへの対処には耐性があるつもりですが、今の東京都青少年課はあまりやりたくないと思いました・・・

 なにせ「理」が微妙ですから・・・


 筆者の個人的見解ですが、条例改正案の条文の「年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写」という文言では、「見た目」や「絵柄」そして「声質」で判断できるという可能性を潰し切れていないと思います。

 だから将来的に、「非実在青少年」の定義を回避するためにSF話が流行ってしまった時は、施行規則を変更してくることは十分ありうるとおもっています。


 筆者は、東京都の青少年育成条例の反対運動に関与しておらず、また人脈もありません。

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あと、前の記事のアクセス履歴を見たら、ツイッターからいらした方が結構いました。

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