■オリジナル読み物は「ISSUE」で、ノンフィクション書籍情報は「BOOK WEB」で、ノンフィクション作家情報は「WHO'S WHO」で
オリジナル読み物満載の現代プレミアブログISSUEページへノンフィクション作品ガイド満載の現代プレミアブログBOOK WEBページへノンフィクション作家の情報満載の現代プレミアブログWHO'S WHOページヘ現代プレミアブログCOMMUNICATIONページヘ現代プレミアブログWORK SHOPページヘ
現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


佐藤優「深層レポート」「封印された橋洋一証言」(※『現代プレミア』より)

橋洋一は、官僚たちを本気で怒らせてしまった。
「埋蔵金」を暴いたことがその理由ではない。
霞が関のエリートたちが絶対に許すことのできない
「真のタブー」に触れてしまったのだ――。
私は、直接聞いた彼の証言を伝えようと思う。
“唐突な犯罪”によって彼の口を封じてはならない。

 橋洋一氏(元内閣参事官、東洋大学教授)が、窃盗で書類送検されたという話を筆者は田原総一朗氏から聞いた。
 3月30日の午後5時45分頃のことだ。その日、内幸町ホール(東京都千代田区)で行われた「『月刊現代』休刊とジャーナリズムの未来を考えるシンポジウム」のために筆者が楽屋に入るなり田原氏からこう話しかけられた。
「佐藤さん、橋洋一さんがたいへんなことになったよ。盗みで書類送検されたということだ」
「エッ、盗みですか。逮捕されたんですか」
「逮捕はされていないみたいだ。高級時計とカネを盗んだという話だ」
「…………」
 その話を聞いた瞬間、3月3日、講談社で橋氏と対談したときの記憶が鮮明に甦ってきた。橋氏は、「財務省からにらまれているから、これから何があるかわからない。国税(国税庁)が査察に入ってくるかもしれない。身辺についてはいつも用心しているのです」と言っていた。いったい橋氏に何があったのだろうか。
 報道をまとめると以下のような姿になる。
 3月24日に、橋洋一氏は、東京都練馬区の温泉施設で、鍵のかかっていないロッカーからブルガリの高級腕時計(数十万円相当)と5万円入りの財布を盗んだということだ。「霞が関すべてを敵に回した男」あるいは「霞が関の埋蔵金を白日の下に晒した男」として知られ、そしてまた小泉構造改革を進めた竹中平蔵氏(金融担当大臣、総務大臣を歴任)の知恵袋として活躍した橋氏の・唐突な犯罪・、しかも脱税や横領のような知能犯ではなく、窃盗という破廉恥犯として摘発されたことには違和感がつきまとう。
 橋氏自身が窃盗の事実を認めているとの報道がある一方、事件後、橋氏は世間を避け、口を閉ざしてしまったので真相はわからない。
 だが、ひとつだけはっきりしていることがある。この事件によって橋洋一氏の信用は崩れ落ち、その発言が封じ込められたということだ。


伝える責任
 3月3日、筆者はこのムックの企画で橋氏と初めて会った。3時間にわたって、官僚や国家について語り合っていた。ひとことで言うと、橋氏は、学校秀才とは異なる天才肌の男だ。まず結論が直観的に見える。そして、直観的につかんだ真理を誰にでもわかるように論理的に筋道立てて説明する能力がある。数学者や哲学者としての資質をもっている人だ。筆者は橋氏のような人物の目から霞が関の「官僚動物園」がどのように見えたかについて、聴取したいという欲望を抑えられなくなった。そこで、このムックの対談とは別に、あと2~3回、対論を重ね、官僚論に関する共著を作ろうと考え、橋氏からも了解をいただいた。
 ところが事件発覚後、橋氏から「企画はなかったことにしてほしい」との連絡がきた。理由の説明はなかったが、当然、事件が影響している。しかし、3月3日の対論と今回の事件は何の関係もない。そもそも、今回の事件と、橋氏が小泉政権下で行った新自由主義的改革(橋氏は、自らを新自由主義者と考えていないが、第三者的に見て同氏の政策を新自由主義と特徴づけることは間違っていないと思う)、また霞が関の「埋蔵金」発掘は、まったく別の問題だ。
 橋氏が自己規制の形で発言を封印しようとしていることはよくないと思った。
 読者には御案内の通り、筆者自身が、「鬼の特捜」(東京地方検察庁特別捜査部)によって、逮捕、起訴された刑事被告人なので、同じような境遇に置かれた橋氏が当面は静かに過ごさせてほしいと考える気持ちもわかる。だがそれでは、橋氏の「口封じ」をしたいと思っている勢力の思うツボだ。それから、3月3日の対論はオンレコで、読者に伝えることを前提に聞いた話である。面白い内容がある。聞いてしまった以上、言論界で飯を食っている筆者としては、職業的良心として、橋氏とのやりとりを読者に伝える責任があると思う。橋氏の心情も理解できるが、やはり国民の知る権利がそれに優先する。それに中長期的には、この対論の内容を明らかにしておいたほうが橋氏の利益にもかなうと筆者は思う。そうした考えをメールで伝えたところ、佐藤優の責任において橋氏の言葉を読者に伝えることに対しては、承諾するという回答が戻ってきた。以下、速記録を元に、橋氏の発言を紹介しながら、現下日本の官僚が抱える宿痾{しゅくあ}について、読者とともに考えていきたい。


「第2回」に続く


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« WHO’S WHO:沢... ただ者じゃな... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。