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17歳が語る“脱・ネトゲ廃人” 「スレた目」が変わったとき(1/2 ページ)

» 2010年04月02日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 西村本気さん

 両親の離婚にショックを受け、12歳のころから引きこもるようになった。中学校にはほとんど行かず、ネットゲーム(ネトゲ)に没頭した。2日間寝ずにプレイすることもざら。西村本気さん(17歳)は、気づけば“廃人”になっていた。

 一念発起して勉強に励んだこともある。高校の生徒会で活躍したことも。だが「ネトゲの方が楽しい」と再び引きこもりがちになった。高校は1年で中退。生活するのに必要最低限の金をアルバイトで稼ぎ、残りの時間はネトゲにいそしんだ。

 そんな毎日が大きく変わりはじめたのは、昨年6月ごろ。西村さんが自身の半生やネトゲ廃人へのインタビューをまとめた本を執筆することになり、今年1月に「僕の見たネトゲ廃神」(リーダーズノート刊、224ページ)を出版した。

 2月には「非モテSNS」の副管理人に就任。約20人の運営スタッフをまとめている。「積極的にユーザーと絡んでいるんです。ネトゲよりリアルの世界は広い。いまは人生を楽しんでいます」とうれしそうに話す。“ネト充”から“リア充”に――17歳のいまを追う。

なぜネトゲにハマるのか

 ネトゲに熱中するあまり、睡眠や食事もとらずにプレイするなど、健全な生活が送れなくなった人を「ネトゲ廃人」と呼ぶ。西村さんも1年ほど前まではネトゲ廃人だったという。一体どんな経緯でのめりこむようになったのだろうか。

 西村さんが12歳のとき、両親が離婚した。仲が悪かった父親に引き取られ、精神的に追い詰められたという。学校を休み、父親が自宅にいない昼間を一人で過ごすのが唯一の楽しみに。徐々に引きこもりがちになり、ネットで時間をつぶすようになった。

 ネトゲは、たまたま見かけたバナー広告で知った。ゲーム機を持っていなかった西村さんは、ネット上でゲームができることに感激し、やってみることに。2日間続けてプレイし、少し寝てまたプレイする――そんな日もあるほどのめりこんでいった。

 ネトゲの楽しみは、ほかのユーザーと対戦したり、アバターを着せ替えたりすることよりも、親しくなったユーザーとチャットで会話することだったという。学校に行かず、家族との会話も少なかった西村さんにとって、チャットは唯一のコミュニケーションの場だった。

高校デビューするも……

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 引きこもり生活が変わり始めたのは中学3年生のころだ。学校に来るよう熱心に励ます担任教師に心を動かされ、西村さんは学校に通うようになった。分からないところをネットで調べたり、ネトゲの仲間に聞いたりしながら、受験勉強にも励み、高校に無事合格。「高校デビューしよう」と張り切っていた。

 入学後2カ月間は順調だった。生徒会にも入り、活動した。だが、「引きこもりが長かったせい」か、学校の友達への気の遣い方が分からない。「チャットの方が楽しい」。学校へ行くのは、当時はまっていたネトゲがメンテナンスで利用できなくなる毎週木曜日だけになった。

 出席日数は足りず、成績も散々に。教師は「もう今から頑張っても遅いよ」と言った。気づけば、すっかりネトゲの世界へ逆戻り。ネトゲにハマった人を追った本の企画で、出版社のリーダーズノートから、“ネトゲ廃人”として取材を受けたりもした。

 留年してまで学校に行きたくないと、08年10月に退学。「どこで間違えたんだろう。あっさりと1年経たずにやめることになるなんて」と後悔する反面、「またネトゲができる」とうれしい気持ちもあった。生活に最低限必要な月5万円をアルバイトで稼ぎ、残りの時間ほとんどすべてをネトゲにあてるようになった。

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