日本郵便、年功改め成果主義へ 年500億円削減見込む(朝日新聞)
日本郵政グループの郵便事業会社(JP日本郵便)は17日、国営時代の名残である年功序列の給与体系を民間企業なみの成果主義に改める意向を労働組合に伝えた。早ければ新年度から導入する。昨夏の宅配便統合と遅配問題などに伴う業績悪化を受け、人件費の見直しを検討していた。導入で年間500億円程度のコスト削減効果を見込む。
2007年10月に民営化した日本郵便は、非正規を含め約18万人の社員を抱えるが、給与体系は現在も旧郵政省時代の年功序列型がベースになっている。これを改め、基本給に加え、配達の個数などに応じた歩合制を上乗せする。成果を上げた人は従来より給与が高まる体系を導入する。
日本郵便は、年間約1兆円の人件費を5%程度抑制できるとみている。今月28日までに総務省に提出する経営改善策にも盛り込む方向だ。
まぁ年功否定、成果主義導入は今さらながらの感もありますが、将来的な昇給の期待が無くなると将来の収入をアテにした消費もなくなり内需も冷え込むことは、ここ十数年来の日本が証明しているところです。個別の企業が「自分だけでも生き延びる」ために賃下げに励むことは、その企業自身にとっては有益なのでしょうけれど、国の経済全体から見ると著しく有害と言えます。そうした「自分だけでも生き残ろう」とする企業の動きを適度に抑制し、国全体の経済が上向くように取り計らうのも政治の重要な役目のはずですが――その政治の役割を放棄して企業がお金を貯め込めるように便宜を図ってきたのが、やはりこの十数年来の日本だったりするわけです。
さて、成果主義導入が流行り始めた当初は「成果を上げた人は従来より給与が高まる」と称して、あたかもニンジン作戦のごとく従業員のモチベーションを高めるという旗印が振りかざされるのが一般的であったように思います。もちろん本当の狙いが成果主義を口実にした賃金削減にあったことは流行当初から全く代わっていないわけですけれど、それでも表面を取り繕うことには一定の努力がなされていたように記憶しています。しかるに今回の記事はいかがでしょうか?
一応は「成果を上げた人は従来より給与が高まる」と、決まり文句も書き添えられてはいるわけです。しかし、見出しには「年500億円削減見込む」と大々的に掲げられていますし、本文中でも同様の削減見込みが伝えられています。そして「年間約1兆円の人件費を5%程度抑制できるとみている」とも。これはつまり、従業員が成果を「上げない」ことを前提にしていることを意味しています。そもそも成果とは何なのか、日本的経営(経済誌上のではなく、現実の日本的経営)の元では企業業績が上向いても従業員給与は決して増えないものです。会社の業績が上がっても従業員の成果とは認められない、これもまた日本的成果主義の特徴の一つです。日本郵便の業績が上向こうとどうなろうと、従業員は成果を上げなかったものとして賃金をカットされる、それが今の時点で既に決定されていることを引用した記事は伝えています。
かつては賃下げを目的にしつつも「成果を上げた人に報いるため」と成果主義導入に当たっては上辺を取り繕う努力がなされていたものです。しかるに昨今では、もはや上辺を取り繕うことすら放棄されているように見えます。「成果を上げた人に報いるため」の成果主義ではなく、あくまで賃金カットのための成果主義であることが最初から明言されているわけです。公然と賃下げを宣言すれば世間の反感を買うであろうと、そういう想像が働いた時代はとうの昔に過ぎ去ったのかも知れません。今や賃下げを公言しても反感を買うどころか「もっとやれ」とばかりに世間が経営側に理解を示す、そういう時代に入ってしまったのでしょう。
多ければ良いってもんじゃ無い気がしますが……
大体、田舎が損するではありませんか。
配る量も少ないに決まってるんですから。
日本人の美徳であり悪徳でもある控えめさが、失われつつあるのでしょうか?
成果主義って結局会社に対しての忠誠心も下がるし営業の場合は人間としての品性まで下がり結果として会社の業績や評判を下げるだけの気がします。
「素晴らしい! 病変部位の切除に成功しました! 患者さんは虫の息ですけど!!」というブラックジョークのような。
そうした競争の果て、「成果不備」を理由に「次は自分が切られる」ということを忘れてる人が多いってことが、社会の悲惨さを象徴してますよね。
語弊があるかも知れませんが、こうした日本の「成果主義」のやり方って、ナチスの推進した優性主義的政策と親和性があるような気がしてなりません。
要するに狂気の沙汰ですね。
>配達の個数などに応じた歩合制を上乗せする。成果を上げた人は従来より給与が高まる体系を導入する。
日本郵便は、年間約1兆円の人件費を5%程度抑制できるとみている。
って、おまえら正直にもほどがあるっていう気がするし、そのことに記事が批判的でないっていうのも(予想通りとはいえ)心底からうんざりします。
だいたい人件費抑制って、それだけ私たちが貧しくなるっていう以上のことではないんですけど、それをどれくらいの人が認識しているんですかね。阿久根市は、市職員のボーナスを半減したおかげで阿久で根の消費は思いっきり冷え込んだんじゃないっていう気がするんですけど、そんな程度のこともマスコミは書かないしねえ。
需要のないところを、押し売りしてでも営業成績を上げろと迫るのかも知れませんね。まぁこれも、民間ではよくあることではあります。郵便事業の公益性などとは対極にあるはずですが。
>ノエルザブレイヴさん
何となく公務員っぽいものも(自衛隊を除いて)憎悪の対象ですからね。それを叩けば叩くほど国民は喝采を送ると……
>ローリーさん
売り込みをかけられる顧客の側だって、本来なら好ましくないことのはずですよね。それでも人件費削減が最優先、社会全体の利益は元より会社の長期的な利益よりも、社員を絞り上げることが優先されてしまうものなのかも知れません。
>不備さん
ユダヤ人なり公務員なり、あるいは正社員なり中高年なりを「悪い奴」に見立てて、それを攻撃することで人気を稼ぐというシステムですからね。ナチズム的な方法論は我々の社会にとって親和性が高いのでしょう。
>Bill McCrearyさん
成果を上げれば給与が高まると言いつつ、結果としては5%の人件費カットが既定路線なのですから矛盾も良いところですよね。にも関わらず、ツッコミの一つも出てこない辺り、そういう世相になってしまったのだなと痛感させられます。
自分も毒されていたところがありますが、日本は「民間では」と民間のやることをなんでも肯定し、お役所に対し民間流を過剰に求める「民間出羽守」が多い気がします。
取り上げそびれてしまいましたが、非正規職員にも年賀状販売のノルマが課せられていたなんて報道もあったように記憶しています。本来、郵便業務は営業活動をかけて拡販するような類ではないはずなのですが、その辺は考慮されずに「民間では~」を旗印とした給与カットが強行されていくのでしょうね……
今期の年賀葉書販売目標は以下でした。
正社員 8000枚
期間雇用 4000枚
内務期間雇用(組立さん) 800枚
これは僕の勤める集配センターの目標で、各支店・センターで異なります。
今期の予約活動は9月から始まり、販売の始まる10月末までに予約率40%以上が目標。達成者は0でした。
不思議なのは、僕ら郵便事業会社の内務員は窓口業務を行う郵便局会社と違い、お客様の立ち入る事が出来ないはずの作業場で作業をしています。基本的にお客様と対面する機会は無く、営業機会はほぼゼロです。それなのに営業目標が設定されています。そのため内務さん達はプライベートで知人友人から予約を取っているのですが……。
「それって時間外労働にならないの?」と思うのですが、誰も何も言わないので僕の思い過ごしかも知れません。
販売枚数と達成率が社員・期間雇用全員の氏名が並ぶ表で貼り出されます。
営業目標達成者は当センターでは社員が2人。1人は友人知人フル動員。1人は8000枚自爆購入。自爆社員は自分で使わない分を金券ショップに持ち込みました。
凡人69号さんがおっしゃった「金券ショップへ~~現実にあるそうですからね」は、「現実にあります」と訂正いただく事になります(汗)
前年、本年と年賀葉書の販売が伸びているとか報道されていましたが、その内自爆購入がどれだけの割合を占めるのでしょうね。
目標枚数未達成の社員、目標50%未満の期間雇用は全員反省文を書きました。
営業成績は評価(=給与)に直結すると、民営化されてから更に強くはっきり言われています。今回のこのニュースは、人件費削減が主眼であろうと思います。
余談ですが、早期退職者も募ってますよ。
保険や金融業界では友人や親類を相手に営業をかけざるを得ないのが常態化しているとも聞きますが、郵便事業も似たようなものになってしまったのですね。なんだかブラック企業の営業現場を彷彿とさせてくれますが(まぁ営業部署とは多かれ少なかれそんなものなのかも知れません)、それが郵便事業の目指すところなのかと疑問に思う向きが、もう少しあっても良さそうなものですよね。