ウェブビジネスの
アテンションとマネタイズ
歴史と事例に学ぶ
Akky Akimoto(秋元裕樹)
サイボウズ/Asiajin
アジェンダ
- 自己紹介
- ウェブとビジネスの歴史
- 技術者と経営者
- 事例
- まとめ
自己紹介
Akky Akimoto / 秋元裕樹 / @akky
今日の話: アテンションとマネタイズ
→ 注目が集まるとお金儲けができる
ウェブ・ビジネスにおけるアテンションの重要性
- ウェブにより、個人が大量の情報に到達できるようになった
- 近所の店、カタログと郵便の通信販売から、ウェブと宅配便へ
- 商圏が日本に、あるいは世界に
- 注目を集められた上位店が客を総取り
ウェブ15年強の歴史
World Wide Web登場からのウェブビジネスの変遷
探し物の歴史
自分の問題を解決してくれる情報、楽しい情報や時間つぶし、安い買い物、おいしいレストラン、etc.
(1) ディレクトリーサービス
実現させた技術: ウェブの一般化・商用化
ウェブの一般化(ユーザー数)・商用化(意識の変化。それ以前は「ウェブで企業の宣伝をするなんて! ウェブでお金を取るなんて!」)
勝者: Yahoo!
- Yahoo! (1994)
- 「ジェリーとデビットのWWWガイド」
- 役に立つウェブサイトをリスト化。数が増えてきたのでカテゴリー分け
- 便利だということで来訪者が増加。広告主が多数現れる
Yahoo!時代のウェブ・ビジネス
- ヤフーのカテゴリーに載ると成功。リストの先頭に載れば大成功
- サイトを審査員に申請し、見に来てもらう(今でもある仕組み。審査の申請にお金を払うようになった = リスティング・ビジネス)
- 図書館のアナロジー: コーナーで書籍をジャンル分けする
Yahoo!のビジネス・モデル
集まってきた人に広告を見せる
世界初のバナー広告 - AT&T on HotWired (1994)
凋落と言われるが、いまだに有効で大きなビジネスでもある。特に日本や香港・台湾等で
via adland.tv
(1.5) ドメイン争奪戦
- 1990年代末期、いわゆるドットコム・バブル
- 英単語.comというドメインを数百万円~数億円で買収するニュースが飛び交った
- business.com, jobs.com, hotels.com, drugs.com, etc.
- 実は日本はあまり関係なかった。英単語の正しいスペルなんて知らないし
Firefoxでは.comが勝手に補完される。時間があればデモしてみてもよい
(2) ロボット検索サービス
- Wanderer (1993)
- プログラムにリンクを辿らせて多数のページを取得
- 数秒でその単語の載っているページを探せるように索引を作成
実現させた技術: 検索技術(アルゴリズム)の進化・コモディティ化したPCを多数台使ったサービス・ハードディスクの低価格化・割り切り(⇔過剰品質)
勝者: グーグル
- 12番目(諸説あり)のロボット検索エンジン (1996 会社化は1998)
- 技術はすごいがどうやって儲けるの? と言われ続けた
- Yahoo!の検索機能を提供
- 検索結果に広告を出すというすごいアイデアを他社から真似て大ブレイク
実現させた技術: 検索技術(アルゴリズム)の進化・コモディティ化したPCを多数台使ったサービス・ハードディスクの低価格化・割り切り(⇔過剰品質)
6番目という説(当時既に5大検索エンジンがあったことから)、19,20番目ぐらいという説(Wikipediaに出ている記録の残っているエンジンを数えると)
グーグル時代のウェブ・ビジネス
SEO
- 検索エンジン最適化(Search Engine Optimization)
- 上位表示でないと客が来ない
- 順序を決める仕組みを推測・実験して、自社サイトを上位に出す
- SEOスパム
SEOスパム
- キーワード詰め込み
- アービトラージで儲けた人の話
- スパムコピーブログ
- Googleジャパンがリンクを買った失敗
- 役所の広告(日本)
いたちごっこ
(3) ソーシャルネットワークサービス
- 始祖不明
- 「Facebook/Mixiのような」だとFriendster (1999)
- サイト上に自分を表すページを置き、(主に)実社会の友人との間にリンクを構築し、辿らせることができる
- ソーシャルグラフ - 誰と誰がどのような関係か、という情報
実現させた技術: ブラウザからの情報編集(ユーザー・サービス開発者共の習熟度)・ウェブ利用者の増加・データベースとキャッシュ技術の進化
SNSは和製英語(略語)
Dating Statusと広告の話
勝者: フェイスブック
- Friendsterの5年後 (2004)
- Friendsterの技術トラブルやMySpaceの停滞を横目に、安定した運用で逆転
- 世界で5億人のユーザー
- 他社にアプリを作らせる戦略
- ウェブの中にもう一つ別のウェブを作ろうとする勢い
Tim Berners LeeのFacebook(Social Network)批判。2,3日前の話
ツイッターについても触れるか。ツイッターがここまで強いのは日本独特の現象
フェイスブック時代のウェブ・ビジネス
広告・アプリケーション
- ユーザーが提供した(実名をはじめ)個人情報を活用した、確度の高い広告
- ソーシャルグラフを活用したアプリ提供
- →友人関係を広告に活用
- まだ試行錯誤中なので、いろんな人がいろんな違う事を言っている状況
(4) ソーシャルゲーミングサービス
- ハンゲーム(1999)
- シンプルゲーム → ソーシャル化
- 友人関係はむしろゲームを通して構築される。多くはより浅い関係
実現させた技術: 少額課金システム・モバイルデバイス・データベースとキャッシュ技術の進化
(勝者): ディーエヌエー, グリー, Zynga or 未知のプレイヤー
まだ先が見えていないし国内のみなので(勝者)と括弧つき
- ハンゲームの7年後(日本では5年後) (2006)
- 日本の携帯電話という世界に5年以上先んじた環境に適応
- Facebookの数十倍のマネタイズ力
- 他社にアプリを作らせる戦略
- 海外で通用するか? 通用させるのは日本企業か海外の新興企業か?
ソーシャルゲーム時代のウェブ・ビジネス
仮想アイテム販売
- 時間をお金で買えるシステム - 早く先に進みたければお金を使う
- 巨利を得るのはプラットフォーマーだけ?
旧世代からの批判
- 「現実の人間関係を持ち込まないのは遊びにすぎない」
- 「熱中している人もいずれ飽きるからそこまでのビジネス」
- 「単純すぎる」
- 「なにも生産しない」
自分の世代に無かったからと軽視していると大きなチャンスを逃すかも
こういう批判だけなら、小説や映画も当てはまってしまうので
技術と経営
これまでの多数のウェブサービス企業で起こった問題
- 「ギーク」と「スーツ」
- この業界、永遠の課題
- ここにいる皆さんの近未来は?
聴講者の多くが「スーツ」になるという前提で
技術者との付き合い方
ビジネスを動かす人間が技術の詳細に精通する必要はないが、できないとまず成功しないことはある
- 判断のための情報を正しくエンジニアに出させることと
- 正しい判断をすること - 正しいは技術的にじゃなくビジネス的に
技術者のマインド
- (技術的に)正しいことを追求する
- コスト・納期は…
正しいことを追求する姿勢は良いエンジニアとなるのに重要ではあるけどね
アテンションを捌くのが技術
同じことを数千万人に提供できるということがウェブ技術であり、競争力
- 1000人/日に提供つもりで作ったウェブサービス
- ある日ニュースで取り上げられて10000人が殺到
photo © 2007 Chris Watson | more info (via: Wylio)
(続き)アテンションを捌くのが技術
物理的に捌けない → サービス停止 → 機会損失
- その場を凌ぐための技術力
- 短時間で10000人対応に変化させるための技術力
- 突然のアクセス増加に「いち早く気づく」技術も重要
- 長期的には同じ失敗を二度しないこと
アテンションをビジネス化した例
- 大成功したサービスの過去はわかった。
- でも、この先何か始めたい人のヒントにはちょっと…
- もう少し実現可能性のありそうなレベルでの事例は?
アテンションをビジネス化した例
Icanhascheezburger
- LOLcatsというネットの流行(Meme=ミーム)
- LOL = Laugh Out Loud
- 猫の写真に、セリフをつける。セリフは間違った英語にする
- このセリフのついた猫の写真を、毎日数枚公開しているのがこのブログ
どこがすごいのか?
- 注目 - 1億ページビュー/月
- 横展開 - テーマを変えて50個近いブログを運用。合計10億pv/月
- 縦展開 - Tシャツ等のグッズ販売や写真集(ベストセラーランク入り)
ビジネス化した人は別の人
- はじめたのは日系ハワイ人の二人組
- 数ヵ月後に買ったのは中華系アメリカ人Ben Huhさん(一説によれば200万ドルで)
- サイトの人気を永続的にするビジョンと、マネタイズのアイデアがあったのだろう
運営にみる工夫
- ユーザー投稿の奨励(User Generated Contents/UGC)
- 写真からLOLCatsを作るオンラインツール
- 監視体制。コンテンツの頻度調整
- 同じシステムを使いまわし多数の類似ブログを開始
サイト
まとめ
- アテンション重要
- インスパイア重要
- オペレーション重要
まとめ: アテンション重要
- 成功するウェブサービスはアテンションを集めた
- アテンションこそが成功
- それがマネタイズにつながるから
世の中の問題を解決する、ことに注力しすぎると外れるかも。解決した結果アテンションが高まることはあっても。
まとめ: 成功者もcopycat
copycat
n. One that closely imitates or mimics another.
カテゴリ | 世界初 | 登場 | | 勝者 | 登場 |
ディレクトリ | WWW Virtual Lib | 1992 | ⇒ | Yahoo! | 1994 |
ロボット検索 | Wanderer | 1993 | ⇒ | Google | 1996 |
ソーシャルネット | Friendster | 1999 | ⇒ | Facebook | 2004 |
? | ? | 2010 | ⇒ | ? | 2013 |
最初に発明することは成功の要件ではない。ただ、世に出て数年の先行者がやっていることが有望かどうかはわかってないと真似られない。
次の大きなサービスが真似るような発明は、既に世の中に出ているのかも?
まとめ: 失敗の原因の多くは運用
- サービスが止まったり、不安定になったり
- 一度得たアテンションを失う
- 主には技術の問題
おわり・質疑応答
連絡先
- Asiajin
- 後日質問あればツイッター @akky か、
- メール akimoto [at] gmail.com