顔の傷の補償、男女差は違憲 京都地裁
国の給付処分を取り消し
労災で顔や首に大やけどをした京都府の男性(35)が、女性よりも障害等級が低いのは男女平等を定めた憲法に反するとして、国の補償給付処分取り消しを求めた訴訟の判決で、京都地裁は27日「不合理な差別的取り扱いで、違憲」と判断し、処分を取り消した。原告側の代理人弁護士によると、性差別を理由に障害等級を違憲とした判決は初めて。
労災保険法に基づく厚生労働省令では「外貌(外見)に著しい醜状を残すもの」として顔などにけがが残った場合、女性の障害等級を7級、男性を12級と規定。
7級は平均賃金の131日分が年金として生涯にわたり給付されるが、12級は156日分を「一時金」として1回支払われるだけで、給付金額に大きな格差がある。
滝華聡之裁判長は、顔などに傷が残った場合の影響について検討し、(1)就労機会の制約(2)本人の精神的苦痛――などの損失について「男女の差異は顕著でない」と判断。「男女によって5級もの差が設けられ、給付金にも大きな違いがあるのは著しく不合理だ」と結論付けた。
国側は国勢調査の結果を根拠に「女性は男性より接客業などに就く割合が高く、化粧品の売り上げなどから外見により高い関心を持っている」として等級の差が合理的だと主張していたが、滝華裁判長は「具体的な根拠が示されておらず、性別と精神的苦痛の程度に強い相関関係も認められない」と退けた。
判決によると、原告の男性は1995年11月、勤務先で金属の溶解作業中に大やけどを負い、顔や首、腹部にあとが残った。園部労働基準監督署は2004年4月、ほかの症状を併合して11級と認定した。
原告の男性は「けがで自分の人生が負った被害は計り知れない。男性というだけで差別されたのはおかしい、との主張が認められたのはうれしい」とのコメントを公表した。
原告代理人の糸瀬美保弁護士は判決後の記者会見で、「けがで苦しむのは男女同じ。差があるのがおかしく、極めてまともな判決だ。同様の差別で苦しむ男性は多く、平等給付のため法改正を求めたい」と話した。
厚生労働省補償課の話 判決内容を確認しているところで、今後の対応については、関係省庁と協議して決定する。〔共同〕