キルギスの作家、アイトマートフの出世作です。この小説を読んだフランスの詩人ルイ・アラゴンは、「断言しよう。これは世界でいちばん美しい愛の物語である」と、自身の訳したフランス語版の本書に書き記したそうです。
「美しい愛」の物語というこのアラゴンの表現がどれほど的確なものであったかということが、実際に読み終えた今、つくづくと思われます。
私にとっても、最近読んだ小説の中で最高の作品かもしれません。
愛の物語。男女の愛だけではなく、芸術に対する愛、生命に対する愛、世界に対する愛も、この作品の中に美しくたちこめています。読む人の立場によって、また読む年齢によって、如何様にも味わいの変わる作品ですし、人生の節目節目で読み返すに値する物語だと思います。
この物語は、僅か150ページ程の短い物語です。しかし、なんという豊穣な「時」がこの作品の中に書き込められているのでしょうか。私は主人公の少年セイット、彼の義姉ジャミーリア、そして寡黙な詩人ダニヤールと共に、彼らの眩い「時」を生きました。炎のような夕陽を眺め、大地と草原の匂いを嗅ぎ、木々や波が歌うのを聴き、純粋に、奇跡のように愛し合う二人の若者が寄り添う姿を見ました。
本当に美しい光景でした。
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この星でいちばん美しい愛の物語 改訂 単行本 – 2001/6/1
- 本の長さ158ページ
- 言語日本語
- 出版社花風社
- 発売日2001/6/1
- ISBN-104907725264
- ISBN-13978-4907725266
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
愛をつらぬくため、二人は草原の彼方に消えた…伝説だけを残して。命を賭した愛、伝統との摩擦、心の熱い叫び、勇気と決断、自立への目覚め、人生の選択、若者の目覚めと大人の愛、ふたつの生きる勇気の物語。99年刊の改訂。
登録情報
- 出版社 : 花風社 (2001/6/1)
- 発売日 : 2001/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 158ページ
- ISBN-10 : 4907725264
- ISBN-13 : 978-4907725266
- Amazon 売れ筋ランキング: - 948,013位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 604位ロシア・ソビエト文学 (本)
- - 1,566位ロシア・東欧文学研究
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上位レビュー、対象国: 日本
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2010年11月18日に日本でレビュー済み
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2024年1月15日に日本でレビュー済み
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大学院時代、バイトでソ連科学アカデミー編『社会科学』(英文)の翻訳を一年ほどやった。その時、チンギス・アイトマートフの書評記事だけが妙に生彩があった。草原と雲とイヌワシの話だったか。本作は独露戦、いわゆる大祖国戦争の時代、次々に徴兵されてゆく中央アジアのモスレム遊牧民の草原の大地を歌う吟遊詩人と美しい人妻の「駆け落ち」の物語。ジンギスカン以来、遊牧民にとっての吟遊詩人の重要性が根強く残っていることに驚嘆した。
2012年6月20日に日本でレビュー済み
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フランス語版の訳者で詩人のルイ・アラゴンが作品を評して語った言葉を、この新装版ではタイトルに持ってきている。原題「ジャミーリヤ」からタイトルを変えたわけだが、アラゴンが「この星でいちばん美しい愛の物語」と語った理由について、読了後の余韻の中で考えてみた。
自分はキルギスに足掛け5年ほど住んだことがある。そしてカザフスタンやタジキスタンなどの中央アジアの国々を繰り返し回った。何よりも強く残っている印象は、これらの国の広大な大地を、険しい山々を背景に細々とした一本の道がつながり、その光景の中を通って行く時の何とも言い難い感覚ーー自然の雄大さとその悠久の時の流れの中で生きる自分を含めた人というものの小さな営みと、その限りない繰り返しを肌で受け止める感覚とでも言えようか。かつてシルクロードを行き交った人々もまた、このような光景を目にし、自らが行く道筋と時の流れの中の自分を重ね合わせていたのかもしれない、と思う。
アイトマートフの視線もそこにあると彼の作品を通じて感じている。そして、彼の語る人々の営みとしての愛や、戦争の傷跡、厳しい労働生活、自然の脅威との対峙、そうした人々の作り出す社会といった全てが、大自然の光景と重ねられる。そこでは、一人の個人の感情ーー愛や苦しみ、悲しみ、喜びのどのように些細で小さい心の動きでさえーーがそのまま直接自然の雄大さと対置されている。人と自然の関わり、動物達との共生、その他諸々の全てが、個の小ささを強調するのではなく自然全体と対等に存在するありようとして描かれることによって、一つの小さな物語でありながら普遍的な叙事詩に昇華していくように思えるのだ。そうした普遍性を持ち得る一つの愛の物語として、またそれを見つめる雄大な「自然の愛」をそこに認めて、アラゴンはこの小説を「この星でいちばん美しい愛の物語」と評したのではないだろうか。
自分はキルギスに足掛け5年ほど住んだことがある。そしてカザフスタンやタジキスタンなどの中央アジアの国々を繰り返し回った。何よりも強く残っている印象は、これらの国の広大な大地を、険しい山々を背景に細々とした一本の道がつながり、その光景の中を通って行く時の何とも言い難い感覚ーー自然の雄大さとその悠久の時の流れの中で生きる自分を含めた人というものの小さな営みと、その限りない繰り返しを肌で受け止める感覚とでも言えようか。かつてシルクロードを行き交った人々もまた、このような光景を目にし、自らが行く道筋と時の流れの中の自分を重ね合わせていたのかもしれない、と思う。
アイトマートフの視線もそこにあると彼の作品を通じて感じている。そして、彼の語る人々の営みとしての愛や、戦争の傷跡、厳しい労働生活、自然の脅威との対峙、そうした人々の作り出す社会といった全てが、大自然の光景と重ねられる。そこでは、一人の個人の感情ーー愛や苦しみ、悲しみ、喜びのどのように些細で小さい心の動きでさえーーがそのまま直接自然の雄大さと対置されている。人と自然の関わり、動物達との共生、その他諸々の全てが、個の小ささを強調するのではなく自然全体と対等に存在するありようとして描かれることによって、一つの小さな物語でありながら普遍的な叙事詩に昇華していくように思えるのだ。そうした普遍性を持ち得る一つの愛の物語として、またそれを見つめる雄大な「自然の愛」をそこに認めて、アラゴンはこの小説を「この星でいちばん美しい愛の物語」と評したのではないだろうか。
2010年11月17日に日本でレビュー済み
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兄嫁に恋する少年のものがたりです。初々しく瑞々しい「初恋」です。ときに世界は、無造作にその入り口を開くことがある。幸運というか不運というか、抗う暇もなく少年は無防備のまますいこまれる。《そしてふたりは末永く幸せにくらしました》で終わる完結した世界ではなく、いつか訪れる避けようのないかなしみを予期するような世界へ。おそらく「恋」とよべるものは初恋だけだろう。あとの「恋もどき」はアナロジーでさえない。その「恋」のためにひとは人生を棒に振るのです。けれども、「棒に振らない人生」なんてありうるのでしょうか。あったとして、それが生きるに値するもの、といえるでしょうか。風来坊のダニヤールと兄嫁との恋は「不倫」です。駆け落ちです。「不純」であり「不道徳」です。社会の秩序を乱すケシカラヌ行為です。だから「恋」というのは、「倫」だの「徳」だの「純」だのとは、一切関係のないことなのでしょう。むしろ、そんな「愚にもつかない」ものから自由になることこそ「恋」といえるのではないでしょうか。
つまらぬ蛇足を加えます。この物語は原題は「ジャミリャー」あるいは「ジャミーリャ」だったと思います。自信はありませんが「ジャミリャー」ではなかったか。浅見昇吾さんの訳がロシア語(キルギス語?)からのものか、独訳、仏訳からの重訳なのかは分かりませんが、「この星でいちばん美しい愛の物語」はないでしょう。訳者ご自身の名づけなのか、編集者の命名なのかは分かりませんが、物欲しそうなカンジが否めません。「朗読者」を映画では「愛を読む人」としたような、さもしいカンジがします。
つまらぬ蛇足を加えます。この物語は原題は「ジャミリャー」あるいは「ジャミーリャ」だったと思います。自信はありませんが「ジャミリャー」ではなかったか。浅見昇吾さんの訳がロシア語(キルギス語?)からのものか、独訳、仏訳からの重訳なのかは分かりませんが、「この星でいちばん美しい愛の物語」はないでしょう。訳者ご自身の名づけなのか、編集者の命名なのかは分かりませんが、物欲しそうなカンジが否めません。「朗読者」を映画では「愛を読む人」としたような、さもしいカンジがします。
2014年2月5日に日本でレビュー済み
中央アジア、キルギスタンが舞台。語り手の少年時代の記憶が、彼の描いた一枚の絵を前に語られる。少年の兄ふたりは兵役に取られ、兄の新妻は結婚4ヶ月で夫を戦地に送った。少年は母を助けて麦を作る。兄の妻、ジャミーリアは美しく快活で生気に溢れていたが、夫からの家族に当てた手紙には、末尾に妻によろしく、とあるだけだった。少年は、ジャミーリアが大好きで、男たちが近づくと割って入り邪魔をした。が、その感情が初恋であったとは、彼女が去ってから気づくのだ。ある日、傷を負った戦士、村の男がひとり戻ってくる。ダニヤールだ。この先を書くのは控えよう。美しい、しかし過酷な物語だ。3人で馬車を走らせる荒野の描写は息を呑む現実感に溢れ、それは貧しい生活、想像を超える広さも読者に思い知らせる。
著者は、キルギス共和国で生まれ育った。ほとんどの作品をドイツ語で書いている。本書は彼の出世作で、世界各国で翻訳され、数十年にわたって増刷を続けている。
原題はジャミーリア。日本語のタイトルは説明が過ぎた。このようなタイトルをつけた理由は、フランスの詩人・評論家、ルイ・アラゴンが本書をフランス語版で「断言しよう。ここにあるのはまぎれもなく、世界でいちばん美しい愛の物語である」と書いた故であろう。
少年が見上げる視線をもって、ふたりの若者、ジャミーリアとダニヤールを捉える、という世界。麦わらの匂い、土埃の舞う空、果てしない広原を背景に、命を賭けた愛が大きな花火のように広がる。無垢の少年が、愛も人生も、嘘もしきたりも、なにも知らないが故に混じりけのない愛を見つめる。愛が、美しさと悲しみを背負い、昇華してゆく姿がある。
著者は、キルギス共和国で生まれ育った。ほとんどの作品をドイツ語で書いている。本書は彼の出世作で、世界各国で翻訳され、数十年にわたって増刷を続けている。
原題はジャミーリア。日本語のタイトルは説明が過ぎた。このようなタイトルをつけた理由は、フランスの詩人・評論家、ルイ・アラゴンが本書をフランス語版で「断言しよう。ここにあるのはまぎれもなく、世界でいちばん美しい愛の物語である」と書いた故であろう。
少年が見上げる視線をもって、ふたりの若者、ジャミーリアとダニヤールを捉える、という世界。麦わらの匂い、土埃の舞う空、果てしない広原を背景に、命を賭けた愛が大きな花火のように広がる。無垢の少年が、愛も人生も、嘘もしきたりも、なにも知らないが故に混じりけのない愛を見つめる。愛が、美しさと悲しみを背負い、昇華してゆく姿がある。