新任検事「私たちが変えていく」=66人に辞令交付―法務省

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101220-00000052-jij-soci

新任検事の平均年齢は27.8歳で、女性は22人。交付式では、「検察への国民の視線が厳しい中、意欲を持って検察の道を選ばれたことは喜ばしく、心強い。心から歓迎する」とした法務大臣を兼務する仙谷由人官房長官のあいさつが代読された。 

このブログを書いているおじさんも、今では、左膝の痛みにあえぐ、しがない日々を細々と送る中年弁護士になっていますが、20年あまり前には、まだ若く、夢と希望を抱き、辞令交付式に臨んでいたものでした。一緒に辞令交付を受けた50名あまりの中で、ゼネコン汚職の際の暴行事件で1名、最近の大阪地検特捜部における犯人隠避事件で1名の、合計2名の懲戒免職、逮捕者も出してしまい、今となっては、人生、はかないものだという無常感のようなものを感じずにはいられません。
新任検事の皆さんには、こういったおじさん達や、挨拶が代読された法務大臣のおじさんなどを反面教師にして、充実した法曹生活を歩んでほしいものです。

2010年12月19日のツイート

家系図作成、観賞用は適法 最高裁、無資格者に無罪

http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010122001000437.html

家系図作成は行政書士の間でビジネスとして浸透。無資格でも場合によっては違法にならないことが無罪判決で明確になり、業界に影響を与えそうだ。

最高裁のサイトで判決がアップされていたので読んでみたのですが、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101220161539.pdf

本件の具体的な事実関係を踏まえた上で、

本件家系図は,自らの家系図を体裁の良い形式で残しておきたいという依頼者の希望に沿って,個人の観賞ないしは記念のための品として作成されたと認められるものであり,それ以上の対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていたことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。そうすると,このような事実関係の下では,本件家系図は,依頼者に係る身分関係を表示した書類であることは否定できないとしても,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たるとみることはできないというべきである。

とされ、宮川裁判官の補足意見でも、

行政書士法1条の2第1項では「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類」とあり,文理上,「事実証明に関する書類」の内容については「官公署に提出する書類」との類推が考慮されなければならない。このように考えると,「事実証明に関する書類」とは,「官公署に提出する書類」に匹敵する程度に社会生活の中で意味を有するものに限定されるべきものである。

とされていて、このような最高裁の判断は、法律解釈としても、社会通念に照らしても、違和感はなく、妥当なものではないかと考えられます。
こうした行為が立件の対象になった背景には、上記の記事で指摘されているような、有資格者である行政書士にとっての貴重な収入源であり無資格者を排除して業務を独占したいという思惑が存在した可能性もありますが、立件、起訴を検討する時点で、より慎重、謙抑的な解釈が必要であったというべきでしょう。こういったものが、果たして「事実証明に関する書類」と評価するに値するものなのかという考慮が、1審、2審の裁判官には働かなかったのでしょうか。
最高裁によって救済されるべき事件が、厳然としてあるということを、改めて認識させる事件でもあります。

追記(平成23年4月18日):

判例時報2103号155頁(最高裁第一小法廷平成22年12月20日判決)