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大人向けのジュブナイル『キャサリン』プレイインプレッション

ゲーム プレイステーション3 Xbox 360 インプレッション
アトラスより2011年2月17日発売のPS3/Xbox 360用ホラーアドベンチャーゲーム『キャサリン』。そのプレインプレッションをいち早くお届け。

●ペルソナチームの最新作が満を持して登場

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 32歳のダメ男が“浮気”をしてしまった日を境に、自業自得の“悪夢”にうなされるアクションアドベンチャーゲーム『キャサリン』。編集部にサンプルROMが届き、喜び勇んでプレイしていると、何人もの同僚から「おもしろいんだよね?」という期待と不安が入り混じったような質問をされた。自分はいつしか「おもしろいっての!」と条件反射的に返事するようになったが、みんなの心境もわからなくはない。実際にプレイするまでは、自分も「(週刊ファミ通読者が選ぶ)期待の新作ランキングで『キャサリン』が1位を獲っちゃうって、どういうことなの!?」と思っていたからだ……。

 今回のプレイインプレッションでは、週刊ファミ通編集部の川島ケイジが、週刊ファミ通(2011年2月17日発売号、2011年2月24日発売号で2回に分けて掲載)の開発者インタビューでは収まりきらなかった“ココだけの話”を交えながら、本作の味わいどころをガイドしていく。

●“恋愛ホラー”を際立たせるストーリーパート

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 本作は、人気RPG『ペルソナ』シリーズを手掛けたチームによる最新作だが、遊んでみれば、すぐに『ペルソナ』シリーズとはまったく異質の作品であることがわかる。第一、登場人物がみんな“大人”なのだ。主人公である32歳の男、ヴィンセントは、定職に就いてはいるものの貯金がほとんどなく、恋人に苦言を呈されながらも面倒を見てもらっているという、ダメな“アラサー”。そんな彼が、ある夜に出会ったばかりの若い女性から積極的に迫られて、そのままベッドインしてしまったことから、どう取り繕っても避けられない“修羅場”への道を進むことになる。

 本作を構成する3つのパートのうち、ヴィンセントたちの人間模様をアニメやイベントムービーで描くのがストーリーパートだ。アニメとイベントムービーのボリューム&見た目のクオリティーの高さにも感心してしまうが、それ以上に特筆すべきは、修羅場にいたるまでの生々しいドラマである。ヴィンセントには、成り行きで犯してしまった浮気という過ちを、すぐに清算できるほどの決断力がない。彼にとって、浮気相手のキャサリンはあまりにも“タイプ”だから……なんて言いわけがあるにしても、優柔不断な彼を責める友人たちにプレイヤーは同調せずにはいられないだろう。しかも彼は、浮気相手に翻弄され、惹かれてしまう一方で、恋人との関係も崩すまいと、ふたりに対して曖昧な態度や嘘を重ねてしまうのだ。そんな危うい“その場しのぎ”が破綻したら、彼はいったいどうなってしまうのか? とんでもない修羅場を招いてしまうのではないか? ストーリーパートでプレイヤーができることは、大人の三角関係をただ見守るだけ。ムービーのスキップもできるが、初回プレイでそうする気にはならないだろう。プレイヤーが助け舟を出してやれないもどかしさも、ストーリーパートの醍醐味と言えるかもしれない。

●大人の付き合いを楽しむアドベンチャーパート

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 ストーリーパートが終わると、アドベンチャーパートに移行。ヴィンセントは行きつけのバーを訪れて、仲間やほかの客たちと語らう。プレイヤーの怖いもの見たさを刺激するストーリーで手に汗握った後、ほっとひと息つける場だ。浮気を打ち明けられるほど気心の知れた仲間たちとの語らいは、いい意味でゲーム的ではない。一般的なRPGなどでは、セリフがしばしば説明的になるものだが、本作では、ヴィンセントたちの長い付き合いを背景として、“昨日のアレ”とか“アイツ”とか言うだけで仲間内の会話が成立する。『ペルソナ』シリーズにおいても、たとえば「〜わよ」という、アニメやゲームではよく聞く女の子らしい語尾が、現実ではほとんど使われていないとして極力排除されるなど、リアリティーのある会話がくり広げられた。橋野桂ディレクターいわく、「音声収録した膨大なセリフのうち、3分の1はカットした」とのこと。これはストーリーパートにも当てはまることだが、こうしてブラッシュアップされたセリフ回しが、テレビや映画を観ているような気楽さ、心地よさをもたらしてくれる。修羅場のシーンではそうも言っていられないかもしれないが、ゲームのオープニングがまさにテレビで放映される映画のノリだったように、本作は“プレイヤー=主人公”という構図ではないので、むしろ修羅場を楽しむくらいの余裕をもって臨むといい。それにしても、修羅場はけっこうキツいが……。

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 さて、アドベンチャーパートで注目すべきは会話だけではない。会話中にしばしば現れる選択肢や、携帯電話に届くメールへの返信内容によって、画面上の謎のメーターが左右のどちらかに傾いていく。その意味は、天使と悪魔のような2色のカラーリングを見れば何となくわかるだろう。左右のどちらに、どれだけ傾いているかによって、ストーリーパートにおけるヴィンセントの心の声や対応、ゲームのエンディングにまで影響していく仕組みだ。そう聞くと、会話やメールの返事に悩んでしまうプレイヤーもいるかもしれないが、それほど深く考えなくてもいい。なぜなら、どんなヴィンセントを演じても、いずれ何らかの形で修羅場は訪れるから。プレイヤーは、自分が共感できる返答を選ぶもよし、相手が望んでいそうな言葉を返してあげるもよし。そんな“大人”の付き合いを、気ままに重ねていけばいいのだ。

●乗り越え甲斐があるアクションパート

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 バーで飲み終え、家で眠りにつくとアクションパートが始まる。すなわち悪夢だ。これを生き抜けば、翌日のストーリーパートに進むことができるのだが……。数多の石が積み重なったステージでは、時間とともに崩れゆく足場から落ちたり、あちこちにあるエグい罠に引っかかったり、殺意を剥き出しにした敵に捕まって“死”を味わったり……。ヴィンセントはせっせと石を動かして、階段を作りながら頂上のゴールにたどり着かねばならないのだ。スクリーンショットを一見するとパズルゲームのようだが、この手のジャンルが苦手という方にも『キャサリン』はオススメできる。その理由は、石を動かす手順に絶対的な正解はなく、「行き当たりばったりで石を動かしていたら道が開けた!」なんてことも頻繁に起こりうるくらい、システムそのものはシンプルだから。難度はけっして低くないが、それゆえにクリアーしたときの達成感もまた格別。ゲームを進めるうちに自然とテクニックが身に付いていくので、次第に手強くなるステージの難度に比例して、自身の腕も上達していくはずだ。

 ただし、それでも「自分には難しい……」と感じたら、ゲームの途中で難易度設定をEasyにするといい。ゴールへの道を“発見”するおもしろさ自体はそのままに、ステージがやや短くなったり、リトライしやすくなったりするのだ。難易度がストーリーに影響することはないので、自分に合った難度で遊ぶのがベストというわけ。

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 ところで、アクションパートのナレーションに聞き覚えがある人も多いのでは。そう、テレビ東京系列の人気番組“モヤモヤさまぁ〜ず2”のナレーションなどでおなじみの音声合成ソフト“ショウ君”が、本作に採用されているのだ。橋野ディレクターは、「ゲームの仕様やバランスを開発終盤まで調整していたので、変更があったときにナレーションをすぐ録り直せる“ショウ君”が大活躍してくれました。殺伐としがちなアクションパートに添えたユーモアでもあります」と明かす。ナレーションと動画付きの丁寧なチュートリアルも、アクションパートの敷居を下げることにひと役買っている。

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 最後に、地味なお楽しみがあるロード画面について触れたい。ロード中は、恋愛や結婚にまつわるさまざまな“格言”が画面に表示されるのだが、自分がとりわけ共鳴してしまったのがコレ。「結婚とは、男の権利を半分にし、義務を2倍にすることだ」(ショーペンハウエル)。このほかにも、皮肉の利いた格言がたくさん用意されているが、橋野ディレクターは「僕たちがわざと皮肉めいた格言ばかりをピックアップしたわけではないんです。専門書などで調べを進めるうちに気付いたのですが、恋愛や結婚を賛美するような格言がもともとゼロに等しいんですよ(笑)」と教えてくれた。

 本作をプレイすることで、恋愛や結婚に対するあなたの価値観まで変わってしまうかもしれない。それだけのインパクトとおもしろさが、『キャサリン』にはある!

■筆者紹介 川島ケイジ

週刊ファミ通編集者。RPGを担当することが多いが、バイオレンスなアクションゲームやFPSなども大好き。ただし下手の横好き気味。

キャサリン
メーカー アトラス
対応機種 プレイステーション3 / Xbox 360
発売日 2011年2月17日発売
価格 各7329円[税込]
ジャンル アクション・アドベンチャー / ホラー
備考 プレイステーション3版はPlayStation Network対応、Xbox 360版はXbox LIVE対応
プロデューサー/ゲームディレクター:橋野桂、キャラクターデザイン:副島成記、サウンドコンポーザー:目黒将司、アニメ制作:STUDIO 4℃
(C)ATLUS CO.,LTD. 2010 ※画面はプレイステーション3版のものです。

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