今回、MIT Media Labの新しい所長に選んでもらったことを光栄に思う。

去年の11月僕は、シリコンバレーを拠点に活動するたくさんの人々がオックスフォードを訪れ、起業家や大学生などと交流する魅力的なイベント「シリコンバレー・フォーラム(Silicon Valley comes to Oxford)」に出席した。こうしたカンファレンスは旧友と再会をするまたとない機会となることが多い。

今回のカンファレンスには僕が知る中でも最も魅力的な人物の一人であるMegan Smithが出席していた。
Meganと会うと、よくこうなるのだが、僕達はとにかくいろいろな事について語り合った。
その中でMeganが、「Joi, MIT Media Labの所長になるのに興味ない? 実は今、ちょうどNicholas Negroponteとその話をメールでしていたの」と突然僕に言った。僕は、「うーん...よし、もちろんだよ!」と答えた。Meganは、微笑みながらすぐさま携帯を手に取り、タップし始めた。

数週間後、僕はロサンゼルスからカタリナ島に入り、海草の森の中のひどい視野の中で、調査とリカバリートレーニングをしていた。ダイビングをしている中、ドライスーツを着ている状態で、僕はNicholasからの電話を受け取り、今回のポジションについて話をした。電波が本当にひどくて、何とか相手が何を言っているかが分かる状態だったが(こんなことを言っては今のテクノロジーに対する皮肉になってしまうかもしれないけれど)、とにかく僕がこの話に興味があることを伝えることができ、近いうちに会って話をすることになった。

それから数カ月後、僕はMITのビルのE14の入り口にいた。そのビルは、Maki and Associatesがデザインをしたとても素敵な建物だ。これとEiesnerビル (MITの卒業生 I.M. Peiがデザインした)と合わせた2つのビルがMIT Media Labなのだ。

ビルに入ると、僕は中世の大聖堂に迷い込んだ旅人のような気分になった。そして、自分がMedia Lab そしてMITのような「施設」にいて良いのか、と恐れ多い気持ちを覚え、少しショックを覚えた。

教授や生徒達とノンストップにミーティングを一日中続けた結果、僕は、自分の仲間を見つけたのだと気付いた。皆、とんでもなく頭脳明晰で、積極的で、本当にクールな事に取り組んでいる。彼らは、挑戦することを恐れていなかった。それは、本当に多種多様な内容ではあったが、共通のDNAも存在していた。僕は、このスペースが作り出している物理的な密接感やブランドに与える力、そしてMedia Labのレガシーによる使命感を覚えた。それは、僕が今まで見たことがないような機敏かつ長期的に考える力を作り出していた。

皆、当たり前のように、「このラボからセンサーを持って来て」、「表皮組織の専門家も必要かも知れない」、「そしてロボットをあのラボから持って来て」、「映像化技術はこの研究室から」、といった具合に会話をしながら、一つの研究をまた違う方向に進めているのだ。

まるで消防署のような賑やかさでつながり合い、創造して行く。僕は完全にチャージされて、細胞が活性化されたように感じた。

僕はリスクをいとわず機敏なシリコンバレーベンチャーのスタートアップの熱心な信者だが、その一方でベンチャーキャピタルと公開マーケットの性質によって起こってしまう長期的なトレードオフには本当に失望していた。

政府や大企業の研究機関は長期的だが、僕たちが今直面している素早い解決が求められる問題や複雑な問題にすぐに柔軟な対応をするということが難しくなってきている。

僕は自分自身の人生を、非営利、ベンチャースタートアップ、大きな研究機関との良好な関係、そして長期にわたるアジャイルソリューションについての研究によって育んだ世界中の人々とのネットワークの中に存在させてきた。

John Seely Brownはよく、"引き出す力 (The Power of Pull)"について話をする。
資産やリソースを貯め込むのではなく、僕たちは必要に応じて、それらをどのように引き出すべきか。知識を押し込んで、中心から物事を指し示すのではなく、僕たちのネットワークの中から、コンテクストを生み出してくれる人を引き出していく。細かいことを全て計画するのではなく、偶然の機会を快く受け入れ、そして一般的な曲線に当てはめて未来を予想し、全てを一緒に高度なコンテクスチュアルでアジャイルな方法で引き出していくのだ。

そのような問題に真正面から取り組むために必要な要素が、Media Labと、そこで交わした会話の中に、あったように思う。普通の人々は嫌がるであろう混沌とした複雑さを楽しんでしまう、僕らのような人種をひきつけるものがあるように思った。

また、Media Labは、そういう人たちや、創造という命題に加えて、外部との広い結びつきと、そこで成果を上げる実力を持っていた。学会、公的機関、ベンチャー企業、大企業、アート、ジャーナリズム、社会的活動、非営利団体、などと手を結び、実際にそれらで実用化される反響や成果を上げている。

Media Labの共同創始者で会長のNicholas Negroponteは、今回のプレスリリースでこう言っている。「これまでの25年間はMITカルチャーが、デジタル革命の実現に貢献してきた。しかし革命は終わった。今や我々がデジタル・カルチャーなのだ。Media Labにとっての"メディア"は、今では脳科学からアートまで、より幅広いイノベーションを含むことになる。これらは、国際、社会、経済そして政治的な面でインパクトを与えることになる。これこそまさにJoiの世界だ。」

僕はいろいろな意味で初めてくつろいだ気分になった。

物事に全神経を集中できる場所のようだと思った。と同時に、強大な力が湧き出て、チームと協力し、僕の大きく広がるネットワークも使い、意味のある有益な結果を皆さんにもたらせる気がしている。

僕の使命の一つは、僕のネットワークをMedia Labと結びつけることだ。友人達皆にラボを知ってもらうこと。LabCastビデオ( http://labcast.media.mit.edu/)や、ウェブサイトで研究を見てもらうことはもちろん ( http://www.media.mit.edu/research )、何より、実際にラボに来てもらいたい。既に多くの企業がラボのスポンサーだが、実際に時間を一緒にここで過ごすことで、僕らのビジョンが一つになり、魔法が生まれるということを確かめたい。

まだラボのスポンサーでない方は、是非実際に来てみて、体験し、チームに参加することを考えてもらいたい。Media Labは未来のためのコンテクストとイノベーションを生み出す重要な役割を担っていると、僕は心から思っている。まずは、同じテーブルについて、この会話に参加して欲しい。


何にせよ、今後、Media Labで僕がしていきたいこと、ラボと一緒にして行くことはすべて、書き、話して行くつもりだ。いろいろなところで、いろいろな人たちと交流することを楽しみにしている。

僕がブログに書く前に、John MarkoffがNew York Timesの記事にしてくれた!素晴らしい記事をありがとう!

Media Labの公式リリースはこちらから。

4 Comments

おめでとうございます!
このような刺激的な場で活動できる事を羨ましく思います。
ブログを楽しみにしています!

NHKの番組を、拝見しました。
私は、ジェットエンジンで、宇宙に行けるようになると、思います。アフターバーナー等で、スクラムジェットエンジンの噴流の呼び水とし、マッハ20程度ほど加速できれば、次世代シャトル計画は、安価になるのではないでしょうか?新しい未来は、以外と古い物だと思います。

人が『意外と良かった』と感じる時間の使い方について研究しています。その前提条件は3つ。体験を通じて、①質の高いことに②Only1の感覚を持ち、③あまり期待しないでトライしてみることです。『意外と良かった』時間を体験すると人とシェアしたくなるものです。目に見えないが社会を楽しくできる構造について、どんな所と繋がることで創造力が新たに見出せるかを是非、一緒に考えられたらと思います。

JOEさん、テレビ拝見しました。この硬直した閉塞社会で、発想も貧相になり生きておりましたが、まだやることがある!とイギリスまで行って、心を洗って来ました。
JOEさんの力はすごいですよ。
私は獣医さんが広い視野で診療をしていくために、勉強会をオーガナイズしています。年4回面白い話を聞いているのですG、JOEさん今度日本に帰った時1時間でもいいです。1時間でもいいです、時間がとれませんか?
大体品川のストリングスホテルで3,7,10,12月に開催していますが、いくらぐらいで、お話聞けますか?我々は15名くらいです。
ぜひご検討ください。

下川 裕美子 モバイル090-4607-9587