2011年3月22日0時31分
津波による壊滅的な被害を受け、立ち入りが困難になっていた宮城県名取市の沿岸部・閖上(ゆりあげ)地区に、避難した住民らが21日、バスで入った。住民らは窓の外の変わり果てた街並みを沈痛な表情で見つめていた。
地区はほとんどの家が津波で流されて、がれきが山積みになっており、立ち入りが制限されている。住民から、自宅の様子を見に行きたいという要望を受け、名取市はこの日、閖上地区の人たちがいる避難所8カ所から、地区までを往復するバスを準備した。
この日朝、同市文化会館の避難者約130人がバス3台に乗り込み、閖上地区を中心に約1時間かけて巡回。地区内をゆっくり走るバスが、土台を残すだけとなった家の跡や廃虚と化した閖上中学校の前などを通ると、住民たちは席から立ち上がって窓の外をのぞいたり、写真をとったりしていた。
震災後、初めて自宅のあった場所を見た同市閖上2丁目の伊東与治さん(65)は「堤防沿いの家だったが、柱は1本も残っておらず、屋根が遠くに流されていた。写真1枚でも残っていれば、と思っていたけど、何もない。壊滅だ。津波の恐怖感があるので、もうあの場所には住みたくないが、今後どうするかの見込みもない」とため息をついた。(合田禄)