HOME> ニュース> ゲームはもっと感情豊かになれる――『ヘビーレイン』開発者からの提案【GDC 2011】

ゲームはもっと感情豊かになれる――『ヘビーレイン』開発者からの提案【GDC 2011】

ゲーム プレイステーション3
『ヘビーレイン』の独創性はどのようにして生まれたのか? 開発者が本作に込めた狙いを解説した。

●大人のエンターテインメント足りうるには豊かな感情表現が不可欠

epic 082 (Large)

 2011年2月28日〜3月4日、アメリカ、サンフランシスコのモスコーニセンターにて、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2011が開催。世界中のゲームクリエイターによる、世界最大規模の技術交流カンファレンスの模様を、ファミ通.comでは総力リポートでお届けする。

 Quantic Dreamの創設者であり、プレイステーション3用タイトル『ヘビーレイン』で、ディレクター、リードゲームデザイナー、そして脚本を担当したデビッド・ケイジ氏が、『ヘビーレイン』でいかに感情をゲームに盛り込んだかを解説した。冒頭でケイジ氏は、『ヘビーレイン』はリスキーなプロジェクトだったと切り出した。新規IPで、インタラクティブドラマという新たなスタイルというのはどちらも不安定な要素だ。しかしながら、批評的にも成功して、合計で200万本以上を売り上げた。「これはヒーローが銃を持っていないゲームとしては悪くない」とケイジ氏は語り、予測の4倍も売れた理由を、統合されたゲームデザインにあるとした。

ヘビーレイン』のスタイルは、現行のゲームで主流となっている、カットシーン、ゲーム、カットシーン、ゲームのくり返しとはかなり異なる。本作のようなストーリー主体で進むタイトルにとって、カットシーン(ドラマ)とゲーム部分の融合は、語りの勢いを殺さずに活力を与えるものになる。ちなみに、彼によると、72パーセントのプレイヤーが本作をクリアーしており、これは驚異的な数字だ。業界の平均は25パーセントで、『マスエフェクト 2』のようなトップゲームでも50パーセントだというのだから。

 ケイジ氏は、多くのゲームはいまだ10代を想定して設計(レーティングとは異なる)されており、ほぼいつも暴力と肉体アクションによって成り立っていると主張する。「これではリアルな意味や(成年であるあなたが)語るに足る話は生まれない。ゲームが描いていない感情はまだまだある」。確かに『ヘビーレイン』には、愛や救済、贖罪といった成熟した大人向けのテーマが描かれている。「私はプレイヤーに観てもらうようにストーリーを語るよりも、プレイヤーがカットシーンなしにゲームプレイからストーリーを語って欲しいんだ」。

 ケイジ氏は、映画風の直線的な語りではない、ストーリーが可変していく新たなライティングテクニックが必要だと語り、さらに開発チームは“感情のローラーコースター”をプレイヤーに体験させることを狙ったと明かした。本作にはさまざまな類の微妙な感情や居心地の悪い感情が描かれているが、これはゲーマーがあまり体験したことのないものだ。キーとなるのはプレイヤーにストーリーへの結びつきを感じさせるシーンを作り出すことだ。これは、多くの大人向けゲームでほかのキャラクターを殺そうとも一切の感情への帰結なしに進行するのとは異なる。

epic 093 (Large)

 本作の語りの可能性は、ある特定のステージでキャラクターが歩き回れるスペース以上のものがある。それぞれのシーンは異なる構造を持ち、多くの選択肢が用意されている。ケイジ氏が例示したあるシーンでは60もの可能性があった。インターフェースについても普通のゲームとは異なる。シーンや行動に応じて用意され、必要でないときはほとんど現れない。「インターフェースは我々にとって物語のペンだ」とケイジ氏。

 しめくくりとして、開発者はゲームのメカニクスやマップ、ボス、ポイント、弾丸といった“ルール”を忘れ、リスクを持って足を踏み出すべきだと説いた。「これらはすべて過去のものだ。新たな体験を作ろう。まだやったことがないものを生み出そう」。「『ヘビーレイン』はビデオゲームか?」と問いかけ、「私は気にしない。本当に」と答える。そしてその真意を語った。「ゲームは感情のバリエーションの乏しさという点において、映画と比べるとまだまだニッチだ。私は、我々は最高の映画に匹敵するものを生み出す存在になったほうがいいと思うんだよ」と。(取材・文: ジェイソン・ブルックス 翻訳: 編集部)

epic 101 (Large)
epic 095 (Large)
epic 105 (Large)
epic 111 (Large)

▲主人公のイーサンを演じたパスカル・ラングデール氏が登場し「ジェイソーン!」と、プレイした人ならおなじみの演技を披露する一幕も。

ソーシャルブックマーク

  • Yahoo!ブックマークに登録

評価の高いゲームソフト(みんなのクロスレビュー

※ ブログ・レビューの投稿はこちら!ブログの使い方

この記事の個別URL

その他のニュース

『戦場のフーガ2』オリジナルサウンドトラック発売記念。ぜひ聞いてもらいたい渾身の楽曲を作曲者・福田考代氏がご紹介

サイバーコネクトツーのコンポーザーである福田考代氏にゲーム『戦場のフーガ2』のゲーム音楽についてお聞きしてきました。

『エルデンリング』のプレイヤー視点で描かれた小説『この先、絆があるぞ』のプロローグ&第一章が先行連載開始!

『エルデンリング』のプレイヤー視点で描かれたノベライズ作品『この先、絆があるぞ』のプロローグ&第一章が、発売に先駆けて2024年5月27日に連載開始となった。

【松山洋、死の真相】『チェイサーゲーム』シーズン2 第29話 浮沈要塞(8)

アニメ業界の闇に切り込む内容となったシーズン2の『チェイサーゲーム』は、実在のゲーム制作会社サイバーコネクトツーを舞台にしたゲーム業界お仕事マンガ。シーズン2の第29話を掲載。

【ゲームソフト販売本数ランキング TOP30】集計期間:2024年05月13日〜2024年05月19日

『Stellar Blade(ステラーブレイド)』が2週連続、3度目の首位獲得

【『戦場のフーガ』開発記録】『インターミッション』第46.5回

サイバーコネクトツー松山社長が『戦場のフーガ』の開発秘話を赤裸々に解説する『インターミッション』。第46.5回をお届け。

【漫画の裏側を語る!】『チェイサーゲーム』原作コラム 『デバッグルーム』シーズン2 第28回

サイバーコネクトツー松山社長が『チェイサーゲーム』の短期連載期間中、ゲーム業界のウラ秘話を赤裸々に解説する『デバッグルーム』のシーズン2の第28回をお届け。

ギャグ漫画『ELDEN RING 黄金樹への道』第44話前編公開。デクタスの割符の在り処を求めて褪夫は再び円卓へ……

アクションRPG『エルデンリング』をもとにしたギャグ漫画作品『ELDEN RING 黄金樹への道』が、“COMIC Hu(コミックヒュー)”にて2024年5月19日に更新され、新たに第44話の前編が公開となった。

パワー!『デジボク地球防衛軍2』筋肉は地球を救う。なかやまきんに君がテレビCMに出演。侵略者への対処法を伝授。ヤー!

『四角い地球に再びシカク現る!? デジボク地球防衛軍2 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS』のテレビCMに出演する、お笑いタレントのなかやまきんに君にインタビューを実施!

【ゲームソフト販売本数ランキング TOP30】集計期間:2024年05月06日〜2024年05月12日

2週ぶりに『Stellar Blade(ステラーブレイド)』が首位復帰

【日記に憎しみをこめて “戦争×復讐×ケモノ”マンガ】『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』第46.5話

ファミ通.comで連載されている“戦争×復讐×ケモノ”をテーマにしたドラマティックシミュレーションRPG『戦場のフーガ』の公式コミカライズ、『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』の第46.5話を掲載。