"決着する三角関係。そして彼らは伝説になった……"『劇場版マクロスF サヨナラノツバサ』
人気シリーズついに完結!
移民船団マクロス・フロンティアを襲う、謎の生物ヴァジュラ。フォールド波によって呼び寄せられるヴァジュラたちは、希少な鉱石フォールド・クォーツによってフロンティアに集まってきていたのだ。そして、クォーツを持ち込んだシェリルは犯罪者として捕らえられてしまう……。シェリルを信じようとしながらも揺れるアルトとランカ。だが、その裏ではさらなる陰謀が、権力者たちによって進行しようとしていた……。
前作の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20091204/1259918434
クライマックスに取ってつけたような見せ場を入れて、「途中で終わった」感を出さないようにしたのが前作ラストであった。ファンに優しいシリーズだよな〜。一本の物語としてのすわりはそれで悪くなっているのだが、サービスに徹した感あり。
今作の途中で「偽りの歌姫」っていう前作サブタイトルである台詞が出てくるシーンがある。前作ラストをここにしておけば、かなり鬼畜な引っ張り効果があったと思う。もちろん非難轟々になったろうが、最初から前後篇と喧伝してるのだから当然ありだろう。まあオレはそこまでのファンじゃないので、それで「ぎょえ〜!?」となってるファンを横目に見て楽しみたかった、というのが本音であるが……(笑)。
テレビ版とどう変えてきてるのか?が色々と気になり、なかなか入り込めなかったが、描写不足かなというところも、クライマックスで一気に見せ切って片付けてしまう豪腕ぶりは健在。
さらに、観客がテレビ版を観て「知っている」内容を、テレビの展開より必ず一歩一歩先に解き明かし、次の展開を予測させないところも上手い。裏を返せば、「テレビ版の内容を裏切る」ことがサプライズ要素の根幹であるということなのだが……。
「出会い」のシーンや悲劇的な設定、ラストも含めて、「ヒロイン」としてはシェリルが一歩先に出た展開に。ランカはまあ正直、これぐらいの立ち位置が丁度いいかな……。
しかし、様々なキャラクターがテレビ版であった見せ場を失ったり、影が薄くなったりしているが、一番割を食ったのは誰だろう……大統領か? ついでにキャシーも。
当然、尺の問題でストーリーの描き込みなどはテレビ版の方が上なのだが、映像やライブシーンだけでなくスケールアップし悲劇性を高めたラストなど、随所に映画版が優越している部分も多い。「役者」としての主人公のキャラクター性も、ここまでやってやっと、ステレオタイプながら格好がついた感じだ。しかしながら、やっぱり「伝説」となるには「役不足」なキャラだなあ……。
そして、最大のテーマとなるはずのヴァジュラと分かり合えるか否かも、台詞での説明が先行しすぎたきらいあり。これは上記の作劇における、テレビ版の展開の先取りが悪い方向に働いた印象。「理屈ではわかりあえるのかもしらんけど、人を大勢殺した虫じゃないか」という感情的反発があっさり解消されてしまうのは苦しい。テレビ版は、そこをラストまで引っ張り、あの一斉に楯になるシーン一発で逆転させることに成功していたのだが、今作はその段取りが狂ってしまった。それでも、そのシーンを民間人が見上げるカットをきっちり入れるあたり、最低限のフォローはなされているのだが、惜しいね。
しかし旧シリーズのどれとも差異を出し、受ける要素をがっちり盛り込んで完成させたパワーはすごいし、個人的には好みではなかったが、総じて面白い作品だったと思う。音楽も良かった。
ところで声だけゲスト出演のあの人、もうかなりいい年なんじゃないの……? それなのにあんなこと言って、まだバリバリの現役なんだ……(笑)。
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