ポスト菅の最右翼と見られていた前原誠司外相が昨日6日、政治資金規正法が禁止する外国人からの政治献金を受け取っていた責任を取り、引責辞任した。発覚直後は菅首相からの慰留を受けていったん翻意したものの、留任すれば予算審議への深刻な影響は避けられないとして辞任に至った。今朝の報道では、枝野官房長官が当面、外相を兼務するらしい。菅政権はもう末期症状だ。
前原という人は、政治家としては非常に危うい。恐ろしく時代遅れな国粋主義的世界観がそもそも論外だが、それに加えて「ええカッコしい」の子どもじみた性癖が致命傷。まあ、こうした言葉の軽さは菅首相ともさらには鳩山元首相にも共通するのだけれど、相手の立場への慎重な目配りと影響への熟慮が必要な外交問題で俗耳に受けそうな「格好いい」マッチョ発言を繰り返し、中国もロシアも硬化させてしまった。まあヒーロー気取りのご自分は気分がいいかもしれないが、周囲の国々との関係を当面修復不能なまでに深刻に損ない、在任するだけで確実に国益を毀損している。
だから、こんな外相に最も向かない人が辞めるのは、とりあえずまあ日本のためには良かったと思うのだが、コジローとしてはその理由に納得がいかない。政治資金規正法が外国人や外国法人からの献金を禁止しているのは、日本の政治が外国に買収されたら具合が悪いからで、それはまあそれで当然のことではあるのだが、翻って、じゃあそれに代わる外国人の権利が、この国できちんと保障されているのかが疑問だからだ。
外国人からの政治献金といっても、前原氏の選挙区である京都で焼肉店を経営する在日韓国人のおばちゃんが5万円を数回カンパした程度だ。前原氏とは以前からかなり親しかったらしい。おばちゃん、韓国風に親しみを込めて言えばそのオモニに、国政を自分の都合良く動かしてやろうなんて野心があったとは到底思えない。とはいえ法律は法律だ。違法には違いないのだろうけれど、しっかしなあ・・・ これを鬼の首を取ったように責め立てる側にも相当違和感を覚えるのだ。
よその国ではどうなっているのか、実のところよく知らないので、知っている方がいればご教示願いたいのだが、この国では、在日の外国人は税金はきっちり取られるが、政治的な権利はまったく認められていない。これは著しく公平を欠く状態ではないのか。
「代表無くして課税なし」は米国の独立戦争のスローガンだ。コロンブスが新大陸を「発見」し植民地として以来、植民地の住人は課税されない代わりに英国政府からのサービスも受けられない、従って選挙権も被選挙権もなかったのだが、経済成長を続ける北アメリカ大陸に本国政府が課税しようと手始めに印紙税の徴収を画策、これが猛反対で失敗に終わると次に当時の必需品であった紅茶に課税することを決めて独立戦争に火がついた。
その発火点に位置するエピソードが、ボストン港に入港した東インド会社の輸送船の積み荷である紅茶を、怒れる植民地の人々がこぞって海に放り込んだボストン茶会事件だ。ついでながらいま、米国の政治に右翼的な影響を与えているティーパーティなる政治グループは、この事件に名を取っているわけだが、その保守反動の思想傾向は独立戦争を導いた人々の進取の気風や勇気とは正反対であり、まあありていに言えばできの悪いパロディに過ぎない。
ともあれ、課税だけして政治的権利を認めないというのは、どう考えてもバランスを欠いている。前原氏に献金したオモニは、氏のためにと思って一灯を献じたことが、このような結果になって泣いているという。まあ、前原氏の評価はさておき、ハッキリ言わせてもらえばこの程度のことを、政局に利用してやろうとことさらに騒ぐのは、オトナの態度としていかがなモノかと思うのだ。
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