2010年、国内のインターネット検索市場に大きな動きがあった。7月27日に、ヤフーが「Yahoo!Japan」の検索サービスにおいて、米Googleの検索エンジンと検索連動型広告配信システムを採用すると発表した(関連記事)。2社の提携について、12月2日に公正取引委員会が独占禁止法上の問題はないとの結論を出している(関連記事)。しかし、ハーバード・ビジネス・スクールの経済学助教授でインターネット広告に関する研究を行っているベンジャミン・エデルマン氏は、単一の検索エンジンのマーケットシェアが大きくなることは、ユーザー、インターネット広告のスポンサーにとって不利益だと考える。
Yahoo!JapanとGoogleが提携することについてどう考えているか。
日本の公取委は、今回の提携を許可するべきではなかった。インターネット検索市場におけるGoogleのシェアは、米国は70%以上、EU諸国では90%以上と寡占状態だが、日本では40%未満である。これは、日本にはGoogle以外にYahoo!Japanという選択肢があるためだ。しかし今回、Yahoo!JapanがGoogleと提携したことで、日本市場でもGoogle検索エンジンのシェアがEUと並ぶほど高くなってしまった。
単一の検索エンジンのシェアが大きくなると、ユーザーや広告主にとって好ましくない問題が発生する。例えば、Googleで「Calendar」を検索すると、「Google Calendar」が検索結果の最上位に表示される(画面1)。また、特定の会社名を検索すると、「Google Finance」が上位表示される。実質的にGoogle Calendar やGoogle Financeが世界一のサイトならば問題がないが、実際には、これらのサイトはそれほど人気がない。
さらに、「Acne」という用語をGoogleで検索すると、「Google Health」のリンクが検索結果の上位にヒットする。ところが、「Acne,」とカンマを付けて検索してみると、Google Healthのサイトはヒットしない(同氏検証当時)。検索キーワードにカンマを付けるだけで結果が変化するのはおかしな現象で、おそらく、Googleはある特定の用語が検索されたときにGoogle Healthのリンクを表示するように、ハードコーディングを行っているのだろう。Googleは検索結果に主観的な判断を入れたり調整したりしないと約束しているが、Googleのある幹部は、ハードコーディングを行った事実を認めている。
このように、単一の検索エンジンが高シェアになると、インターネット検索の結果にバイアスがかかってくるという問題がある。せっかく、日本にはGoogle以外にYahoo!Japanという検索エンジンがあったのに、この恵まれた検索環境を失ってしまうのは実にもったいない。
インターネット広告のスポンサーにはどのような影響があるか。
例えば、livedoorのサイトにアクセスすると広告が表示されるが、この広告枠を実際にスポンサーに販売しているのはYahoo!Japanである。GoogleとYahoo!Japanの提携は、Yahoo!Japanに広告事業をアウトソースしているlivedoorのようなWebサイトを運営する企業(パブリッシャー)や、livedoorに広告を出したいスポンサーにとってデメリットだ。
Yahoo!JapanがGoogleの広告配信システムを使うようになると、Yahoo!Japanからパブリッシャーに支払われる料金は、Yahoo!JapanがGoogleに支払うシステム利用料によって変動する。つまり、パブリッシャーが受け取る広告収入を、Googleがコントロールできるようになってしまうということだ。スポンサーにとっては、広告料の値上げにつながる。