【第151回】 直感、ひらめきを大切に

合気道は技を通して道を求めるが、技が出来る程度に道を進むことができると言えよう。従って、技が少しでも上手くなるようにしなければならない。

技が上手くなるには、基本技を繰り返し繰り返し稽古しなければならない。技の型だけを覚えるなら、誰でも容易に覚えられるが、合気の道を教えてくれる技の本質に触れ、遣えるようになるには時間がかかる。

ましてや技を完全にマスターすることはできない。完全には決して出来ないことを知りながら、少しずつ上達するよう精進するだけである。悲劇でもあり、ロマンともいえよう。このロマンと悲劇は、若いうちはなかなか分からないだろうが、歳をとってくればわかってくるだろう。

技を上達する方法はいろいろあるだろうが、要は上達するように一所懸命に稽古をすればいい。稽古をしなければ、上手くはならない。しかし、稽古するにしてもだらだらやっていたのでは、何年やっても進歩はない。やれば上手くなるというものでもないのである。

一所懸命に稽古をするということは、世俗のこと、顕界でのことを忘れ、合気の別世界に入り込んで稽古をすることであろう。世俗のことを引きずっていては、体も心も別世界で十分働かすことができない。意識を合気道に集中し、どんどん深い意識の世界に入らなければならない。深層の世界である。正確に言えば、深層世界との接点であろう。何故ならば、技を遣う場合には、意識も遣うはずであり、無意識だけでやるわけではないからである。

体をつかって技の稽古をするとき、意識を集中して深いところまでいくと、直感とかひらめきを感じることができるようになる。これはよかったとか、ここはもう少しこうしたほうがいいとか、これは駄目だとかいうメッセージを感じるのである。これを、人は神の声とも云うのかも知れない。この声は嘘は言わないようである。この声に従って稽古をしていくと上達、進歩があるように思う。

相対性理論を発表したアインシュタイン(1879-1955)の理論は、当時は誰もその理論が正しいということを証明することが出来なかった。アインシュタインさえもその証明は出来なかった。しかし、アインシュタインは自分の直感とひらめきから出来た相対性理論を信じた。そして没後、彼の理論の正しさが証明されたのである。

アインシュタインは生前、「私は直感とひらめきを信じます。自分が正しいと感じますが、それを知っているわけではありません。」と語っている。

長年生きてきて、先も見えてきたのだから、世俗のことからすこしずつ離れ、俗世のことに惑わされず、一所懸命稽古をし、稽古に集中し、そこで直感とひらめきが出るように意識を深いところに置き、その直感とひらめきに従って精進していくのがいいだろう。