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2010.12.22UPDATE

津田大介がワセジョ好きな理由 彼女らが世の不条理と闘うから

携帯電話で光回線並みの通信速度を実現する、次世代通信規格「LTE(Long Term Evolution)」。このサービスで、社会は、コミュニケーションは、どう変わっていくのか?などを、メディアジャーナリストの津田大介氏に伺ってきた。では、そんな津田氏が好きだと公言する「ワセジョ(早稲田大学に在学・卒業した女性)」の魅力を、この機会に伺ってみた。津田氏も早稲田大学出身である。

【人はワセジョに生まれるのではない。ワセジョになるのだ】

僕がワセジョ好きな理由? それ、記事になるんですか? ハハハ。まあ、僕は頑張っている系の女子が好きなのでね…。これまで「ワセジョ」というのはネガティブワードだったんですよ。

僕の経験、持論から言うと、早稲田っていう特殊な環境において、早稲田の女子は、すごく迫害されるわけです。早稲田というのは、たぶん日本で一番サークル数が多くて、ありとあらゆる種類のサークルがある。にもかかわらず、大学に入って、サークル情報誌を見ると、「ワセジョお断り」というところがけっこうあったりしてるんです。

大学に入ったら、いきなり迫害される。早稲田という空間において、第三の性別「ワセジョ」という称号が与えられるんです。サークルに入ってからも、ポン女(日本女子大)や学習院とかと比べられて、当時の早稲田の男子はワセジョに見向きもしなかったりするわけですよ。飲み会なんかでも、「男子5000円、女子2000円、ワセジョ4000円」とか。下手すると男子よりワセジョの方が高い場合もあったりして。

すごく特殊な空間ですよね。それでワセジョは、独特の屈託を抱えざるところがある。僕は「人はワセジョに生まれるのではない。ワセジョになるのだ」という言葉もつくったんです。ま、ボーヴォワールの名言「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」のパロディなんですけど。でも本当にそうで、早稲田に入ることで、ワセジョという存在にならざるを得ないということなんですよね。

相当な不条理だと思いますよ。早稲田の中でのワセジョの扱いは。でも社会に出ても、そういう不条理はたくさんあるわけで。ワセジョは高学歴でもあるので、一般OLになるというよりは、総合職をめざす人も多いんですけど、それでも、就職難で大変だったりもする。そんな苦難のなか、社会で高潔さを失わず、世の中の不条理と真っ正面から戦って、自分らしさを追求しているというところが、魅力的なんじゃないかと思うんです。

最近の現役の子はどうかというと、多少傾向は変わってきていますね。少し前から、付属校にも女子が入れるようになり、付属から上がってくるワセジョというのが出てきた。それが転換点かなと。

いま実際に早稲田に行って現役の子と話したりすると、明らかに男子より女子の方が元気です。社会全体がそうかもしれないですけど、かつての迫害されていたワセジョとはまた違っていて、すごく伸び伸びイキイキしているんですよ。むしろ彼女らは、今後、社会に出てから不条理にぶつかっていくかなあ、と思いますが。そういういまのワセジョも魅力的だと思いますけど。だから、これからワセジョの時代が来ると思いますよ。本当にイキイキしていますからね。

津田大介
1973年東京生まれ。早稲田大学社会科学部卒業、現在早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師。コンテンツビジネス周辺や著作権、IT、ネットサービスなどをフィールドにするメディアジャーナリスト。著書に「ツイッター社会論」(洋泉社)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書)など。

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